世界各地の非戦闘地域で展開する兵士を、マラリアやウェストナイル ウィルス、ライム病などといった生物媒介による病気 (vector-borne diseases) の元となる、蚊やハエ、ダニ (tick)、ツツガムシの幼虫 (chigger) の脅威から守る為、殺虫成分を染み込ませたユニフォームの普及が進められている。米陸軍では、殺虫農薬「ペルメトリン」処理済の戦闘服 (ACU : Army Combat Uniform)、「ACU Permethrin」が 2012 年 10 月より陸軍の戦闘服販売ストア (AMCS : Army Military Clothing Stores) での取り扱いがおこなわれ、翌年 5 月には陸軍州兵、陸軍予備役らの間でも使用できるようになっている。ペルメトリン は、分子式「C21H20Cl2O3」であらわされるピレスロイド系殺虫剤の物質。その構造から示される名称は「3-フェノキシベンジル=3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート) 」となる。
こちらの映像は、ペルメトリン処理済ファブリックの有効性を示すものとなっており、被服の開口部を探すため、移動するダニが僅かの時間で転がり落ちる様子を捉えており、非常に高い効果を持っていることが分かる。その高い殺虫効果、阻害効果から、健康リスクや環境リスクが懸念されるが、環境保護庁 (EPA : Environmental Protection Agency) が 1970 年代より実施してきた安全性確認の検証試験によると、ACU Permethrin はそれらいずれのリスクをも伴わないことが明らかとなり、2009 年にはその評価試験を終えている。
病原媒介生物の代表格でもある「蚊」は、人々の生活に密接な存在ながらも、地球上のあらゆる生物を対象とした「殺人生物」ランキング (The Gates Notes LLC / 2014 年 4 月発表) で、ダントツの 1 位を獲得。その被害は年間で 72 万 5,000 人の命を奪っている。また 5 位にランクインしたツェツェバエ (tsetse) も媒介種として知られる。

U.S. Army Public Health Command 2014/07/01
U.S. Army Medical Department 2014/07
About Permethrin / Japan Ministry of Environment 2010/04/20
The Gates Notes LLC 2014/04/25
Ref : NPO SUPA 2008/09/14
Photo Credit: Photo illustration courtesy U.S. Army Public Health Command