Photo by Sgt. Paul Sale/ Army

たしかに、以前にもレンジャー課程に挑む女性兵士はいた。しかしほとんどの者が、レンジャー課程第1段階の「レンジャー適正評価試験」で脱落し、原隊に戻されていた。レンジャー課程に来たかと思ったら、すぐに原隊に戻される女性兵士を揶揄して、「1日だけのレンジャー課程」などと言われていた。

このような歴史にもかかわらず、今回、19名の女性兵士がレンジャー課程に挑戦した。しかし、2015年4月20日に行われたレンジャー適正評価試験を突破できたのは、わずか3名だけであった。しかし、3名が残ったことにより、4月20日は、女性兵士が初めて本当のレンジャー課程に進んだ、記念すべき日となった。

Photo Credit: Spc. Nikayla Shodeen

Soldiers participate in combatives training during the first gender-integrated Ranger Course on Fort Benning, Ga., April 20, 2015.

今回、レンジャー課程に挑んだ女性兵士が多かった理由は、陸軍が推進する「ソルジャー2020」というキャンペーンによるものである。このキャンペーンは、優れた兵士には、男女･年齢に関わらず、能力に見合ったポジションにつけ、その兵士の能力をそのポジジョンの基準とし、軍全体の能力を向上させることが狙いである。

Photo: Gen. Raymond T. Odierno, U.S. Army chief of staff / Timothy Hale

防衛関係メディアの座談会の中で、レイ・オーディアノ陸軍参謀長(Ray Odierno)は、レンジャー課程に志願する女性兵士が増えたとしても、｢女性用｣のレンジャー課程を創設するつもりはないと発言した。「レンジャーの称号を守ることが何よりも重要であり、それ以上でもそれ以下でもない」、「レンジャーとは、単に戦闘能力が高い兵士というだけでなく、部隊や軍を先導する、リーダー的な兵士である」、「もちろん、肉体的な強さは必要であるが、それよりも精神的な成熟が求められ、それには男女の区別はない」。オーディアノ陸軍参謀長は語る。

U.S. Army /Sgt. Paul Sale/Released

適正評価を通過した女性レンジャー訓練生は、ジョージア州フォートベニングに移り、4日間の体力づくりから始まる。その後、パトロール、攻撃、野戦陣地構築、待ち伏せ攻撃に対する基礎戦闘訓練、偵察訓練などの部隊指揮の訓練を受ける。基礎訓練を修了すると、山岳地帯で訓練を行い、山岳軍事行動を学ぶ。最集段階は、フロリダ州エリン空軍基地で熱帯雨林地帯のサバイバル技術を学ぶ。

「私は彼女たちを誇りに思う。だからこそ何度でもチャレンジして、いつか女性のレンジャーが誕生して欲しい」。オーディアノ陸軍参謀長は語る。はたして、2015年に女性のレンジャー隊員は誕生するのであろうか。今後の進展が楽しみである。

US Army News Service 2015/06/01
Text: 友清仁 - FM201506