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グリーンベレーの英雄の名誉勲章を見送った陸軍。いったい何があったのか?

海外軍事
2013 年夏、タリバンは、アフガニスタンの連合軍基地に大規模攻勢をかけた。400ポンドの自動車爆弾が爆発し、多くのタリバンが自爆用ベストを着用して突撃してきた。この攻撃に応戦した兵士の中に、陸軍第1特殊作戦群のアーム・プラムリー軍曹がいた。

ガズニの前線基地を防衛したプラムリー軍曹と仲間は、タリバンと激しい銃撃戦を行った。軍の記録によると、8月28 日の戦闘では、タリバンは5-6 メートルの位置まで接近してきたそうである。


Photo Credit: U.S. Army Capt. Thomas Cieslak
Image is for illustration purposes only.
プラムリー軍曹は、タリバンの攻撃が始まると、真っ先にピックアップトラックで駆けつけ反撃を開始した。タリバンの攻撃地点に接近すると猛烈な射撃を受けた。炸裂こそしなかったものの、30mm グレネード弾が助手席のフロントガラスを打ち破ったほどであった。

現地に到着すると、プラムリーはすぐにトラックを盾にSCARを連射した。SCARの弾が切れると、すぐにハンドガンに持ち替えて、迫り来るタリバンを何人も倒した。その間、何度も自爆攻撃を仕掛けてくるタリバン兵の自爆ベストが炸裂した。生きているのが不思議なくらいだった。プラムリーが独りで応戦し前線を支えていると、ようやく味方が集まってきて、組織的な反撃体制が取れるようになった。

連合軍の組織的反撃が効果を上げ、タリバンの攻勢が次第に衰えてきた。しかし、タリバンも最後の攻撃とばかりに、3名の自爆ベストを着た兵士が突撃して来た。プラムリーは、そのうち2名を射殺したが、残りの1名が自爆ベストを点火してしまった。

大爆発を起こし、プラムリー軍曹は負傷した。しかし軽傷であったため、すぐに応戦した。タリバンの攻撃が止んだことを確認すると、自爆攻撃で重傷を負った兵士の手当てをした。攻撃で負傷した兵士・民間人を基地内の医療施設へ送り出すように指示を出すと、プラムリーは、自身も負傷しているにもかかわらず、すぐに基地外へ繰り出し、あたりのクリアリングを実施した。

この戦闘の結果は、連合軍がタリバンを撃退することで終了した。数ヶ月たって、この戦闘に参加し、勇敢な行動をした兵士たちには「名誉勲章」が与えられた。しかし、この「名誉勲章」を受賞した兵士の中にプラムリー軍曹は入っていなかったのである。

「戦場での勇気ある行動」と「勲章の受賞資格」とは?
この戦闘における名誉勲章授与に関し、アフガン特殊作戦軍指揮官のパトリック・ロバーソン大佐は、プラムリー軍曹が名誉勲章を受けることを推薦していたし、この推薦を上層部の将官も認めていた。次期統合参謀本部に指名されたジョセフ・ダンフォールド海兵少将は、プラムリー軍曹の扱いについて「全く奇妙な」と発言しているほどである。

この事件は、国会や国防省監察長官なども不審に思い、国防総省に、この英雄的な戦闘を調査させたのだが、その報告書は予想だにしないものだった。なぜプラムリー軍曹は名誉勲章を受章できなかったのだろうか?実際に、授与式典の直前まで、プラムリー軍曹には名誉勲章が与えられることになっていたのである。
ここで今回のキーポイントとなる組織、陸軍犯罪調査司令部(Criminal Investigation Command・・・CID)が登場する。この組織は、陸軍内の犯罪・不正行為を調査・告発する組織である。

実は、陸軍犯罪調査司令部は、プラムリー軍曹の受賞が内定した段階から、プラムリーの素行調査を実施し、その結果、彼が軍の備品であるライフルスコープをネット上で違法に販売したことを突き止めたのである。くわしい調査の結果、プラムリーの嫌疑は晴れたものの、「名誉勲章を受章する兵士は清廉潔白でなければならない」という陸軍の感情を刺激し、名誉勲章授与を見合わせることとなった。(最終的に2段階下の銀星章となった)

ベトナム帰還兵で軍事ライターであるダグ・スターナー氏は、以下のように発言している。
「陸軍犯罪調査司令部がプラムリー軍曹の名誉勲章受賞に圧力をかけたのであれば、重大な問題である」、「勲章は、戦場での武勇についてのみ判断されるべきであり、本国での生活を検討材料にするべきではない」、「陸軍が、そのような視点で名誉勲章を与える兵士を選定しているのであれば、それは間違っているし、勲章の価値を貶めていると思う」。

この事件は、戦闘における勇敢な行為と兵士の素行、また勲章を与える兵士の選定システムを国防省に再検討させるきっかけとなった。

国防総省の再検討は1年もの時間がかかった。その報告書は、「勇気ある行動を行ったさまざまな部隊・兵士に関して平等に適用されるべきである」という趣旨のもので、報告を受けたアシュトン・カーター国防長官は、すぐにプラムリー軍曹に名誉勲章が授与されるだろうと談話を発表したほどであった。

しかし、プラムリー軍曹に名誉勲章が与えられることはなかった。ダンフォールド准将、先ごろ次期参謀長に内定したマーク・ミレー将軍、スコット・ミラー機動中核研究所(Maneuver Center of Excellence)所長など、そうそうたるメンバーがプラムリーの受賞を推薦したにもかかわらずである。

最終的に、ジョン・マクハウ陸軍長官は、陸軍人的資源指令部の勧告に基づき、プラムリー軍曹の銀星章を承認した。陸軍スポークスマンによると、この勧告は、「プラムリー軍曹にはこれ以上の勲章を与えるべきではない」というものだったという。

「人的司令部の勧告は、陸軍首脳も承認しており、首脳陣の大多数がこの処置に賛成している」、「マクハウ陸軍長官は、その勧告に同意して、プラムリー軍曹に銀星章を与えることを承認したのである」。「この措置は、プラムリー軍曹の『嫌疑』を考慮したものである」。

この処置に、ダンカン・ハンター下院議員が怒った。「プラムリー軍曹は名誉勲章にノミネートされており、その推薦も十分に受けていた。にもかかわらず、陸軍犯罪調査司令部がその受賞を妨害し、格下の銀星章にしたのだ」。ダンカン議員は語っている。

陸軍の影の実力者 陸軍犯罪調査司令部
ダンカン下院議員は、プラムリーのケースを2つの事件と比べた。ジェイスン・アメリーン中佐は、グリーンベレーの士官であったが、議会の人質政策に反対を唱えたため、その後、陸軍の調査を受け、少佐に降格させられた。

マシュー・ゴルスチンは、2010 年アフガニスタンで、タリバンの爆弾製造技術者を違法に殺害したことを調査された。ゴルスチンに関しては、軍法会議にかけられることはなかったが、証人喚問に呼ばれ、その後、除隊処分となった。陸軍の捜査書類には、ゴルスチンは、CIAのポリグラフ(嘘発見器)にかけられ、非武装の者を殺害したことを認めたためである。「この3つのケースを中心に、さらに他の事件も加えると、陸軍犯罪調査司令部が陸軍のさまざまな決定事項に影響を与えていることが明白である」。ダンカンは語る。

ダンカン議員は、プラムリー軍曹の勇気ある行動を再調査する必要があると提議した。国防総省は、「下院議員の抗議は、現在、検討中である」と文書で解答しただけである。

それからしばらくして、国防総省のスポークスマンは、「プラムリー軍曹は、軍の装備品(ライフルスコープ)の横領の可能性があることで捜査されている。しかし、軍曹は、スコープは、海外の契約業者からプレゼントしてもらったものを転売しただけであると主張している」、「スコープは軍の備品ではないことが確認されたため、刑事上の起訴は行われない」、「プラムリー軍曹は、要注意人物の指定を受けたが、現在は、その指定も解除されている」と発表した。全く要領を得ない回答である。

ジョン・マクハウ陸軍長官の辞任
上記の国防総省の発表からしばらくして、プラムリー軍曹の銀星章を承認したジョン・マクハウ陸軍長官が退任することが発表された。退任の理由は、6年間の勤務の後の定期人事であるとしか説明されなかった。しかし、関係者の間では、プラムリー軍曹の事件の詰め腹を切らされたと噂され、同時に陸軍犯罪調査司令部の隠然たる力を証明することとなった。

その一方で、現役も予備役の兵士のいずれも、湾岸戦争など過去の紛争に比べて、イラク・アフガン戦争の名誉勲章受章者があまりに少ないことを不満を持っている。評論家は、受賞システムに問題がありすぎ、戦場での勇気ある行動の規定が適切に運用されていないと指摘している。

Washington Post 2015/06/09
U.S. Army 2015/06/08
Text: 友清仁 - FM201507

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