戦車搭乗員の視界を支援する「シースルー」装甲車両システム「BattleView 360」
陸上戦闘の王様といえば、それは間違いなく戦車だろう。分厚い装甲と大口径の大砲の前では、誰一人として立ち向かえるものはいない。第2次世界大戦末期のバルジの戦いでは、ドイツ軍は、持てる戦車をすべて一斉に押し出す作戦を取り、対抗するアメリカ軍はその圧倒的なパワーに退却するほかなかった。まさに戦車は陸上において無敵の存在である。
しかし、そのような戦車にも、唯一の、まさに急所ともいえる弱点がある。それは「戦車の視界の狭さ」である。もちろん、現在の戦車には高性能なレーダーやセンサーが取り付けられているが、それは攻撃用のものであり、視界の狭さを解消するものではない。実際に、戦車は足元の地雷に気がつかず大破することは珍しいことではない。
BAEシステム社は、「バトル・ビュー360デジタル・マッピングシステム」を開発し、戦車にとって究極のテーマである「視界の狭さ」について解決法を提案した。このシステムを使うことで、戦車搭乗員は、戦車の非常に狭い視界から解放され、従来とは比べ物にならないほどの戦闘認識(combat awareness)を得ることができるようになった。
このシステムは、もともと戦闘機に搭載されていたヘルメット内蔵のインターフェースやタッチパネルディスプレイを戦車用に応用したものである。戦車の外部に取り付けられた、ビデオカメラ、赤外線レーダー、熱源走査デバイスから収集された情報を瞬時に統合し、搭乗員のヘルメットのバイザーに表示する。これにより搭乗員の負担が軽減され、より正確な状況・戦術的判断が可能となる。
さらに行動予知デバイスを経由して、敵の動きを予想することもでき、直接的な視界が確保されなくても、戦闘判断を下すことができるようになっている。随伴装甲車や無人偵察機ともリンクすることで、友軍との同士討ちの危険性も劇的に下げることが可能である。
BAEシステム社の技術マネージャー、ピダー・ショーランドによると、「戦車の生存性が向上することで、さらに陸の王者に近づくことになる」。このシステムは、戦車だけでなくさまざまな車両に搭載可能で、イギリスで行われる見本市でデモが体験できることになっている。
BAE Systems 2015/10/13
Text: 友清仁 - FM201511
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