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「温度変化で照準が狂う」米特殊作戦軍、EOTech ホロサイトの精度問題を指摘。大手代理店の出荷が停止

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「温度変化で照準が狂う」米特殊作戦軍、EOTech ホロサイトの精度問題を指摘。大手代理店の出荷が停止
Photo By: Lance Cpl. Stephen C. Benson
Image is for illustration purposes only.
米海軍海上戦センター (NSWC: Naval Surface Warfare Center)で特殊作戦部隊の武器計画管理を務めるSOF-WPMO (Special Operations Forces - Weapons Program Management Office) は、L-3 EOTech社の HWS(ホログラフィック・ウェポン・サイト)ECOS シリーズの対象機種が、周囲温度 摂氏約22.8度(華氏73度)の環境下で、ゼロイン調整を行っても、メーカーが定めていた動作温度:摂氏-40度~50度(華氏40度~122度)の範囲内で、約4MOAの照準点変動が生じるとした検証結果を SOUM(Safety of Use Messages)にまとめ、2015年9月14日付で発表した。

照準点変動の原因は、周囲温度の変化によって、機器内部でサーマルドリフト(温度ドリフト)が発生し、精度が狂うためだとしている。また、パララックスフリーを謳いながらも、周囲温度状況によって4~6MOAの視差がある点も指摘している。

対象機種:L3 EOTech ECOS (Enhanced Combat Optical Sights)
Model SU-231 / PEQ (553)NSN:1240-01-533-0941
Model SU-231A / PEQ (EXPS3-0)NSN:1240-01-587-9345
Model SU-231D / PEQ NSN:1240-01-591-7601
Model SU-253 / PEQ NSN:1240-01-566-2844
Model SU-264 / PEQ NSN:1240-01-590-7763
SOF-WPMO は、2015年3月にL-3 EOTech社に対しこの問題ついての注意を行ったが、同社からの正式な回答が無いまま、6月に EOTech 公式サイトの仕様マニュアルから“動作温度”の項目が削除された。

また、公式サイトのFAQページには“温度変化”と“視差”についての注意項目が追加されたようだ。これにより、指摘された問題を同社が認める形となったが、未だ具体的な改善策は提示されてはいない。

親会社である L3 Communications は、8月上旬の四半期報告書でこの問題に言及しており、和解金 2,600万米ドル(約31億円)の準備についても触れられている。訴訟問題へと発展する前に、米政府や各取引機関と和解へ持ち込もうという狙いのようだが、マニュアルなどの改訂を行ったとはいえ全ユーザーに対して公式なアナウンスを行っておらず、HWS の問題点を広く認知させる必要があるとして SOF-WPMO は SOUM を発表する流れとなったようだ。

今後の展開が気になるところであるが、問題点を指摘されるまで隠蔽していたのか?いつ頃から問題点を把握していたのか?虚偽の仕様で売り込んでいたのか?などの疑念は残る。また、問題がある機種を使い続けることは各機関にとっては死活問題であり、アップデートなど具体的な解決策が望まれている。

さらに続報として、戦術装備ニュースサイト Soldier Systems Daily (SSD) の11月5日付記事によると、L-3 EOTech社は米国の大手卸売業者 Elite Defense 社への製品供給を、2015年4月から停止していたことが判明した。 Elite Defense 社は、L-3 EOTech社にとって最大の販売代理店である。

4月以降、L-3 EOTech社から何ら事情説明が無い状態であったが、Elite Defense 社が世界中の顧客へ取扱い停止の要旨を書状で送った翌日(11月4日)に突如連絡があり、現在2社間で今後について策定を開始したとのこと。

Soldier Systems Daily 2015/09/30, 11/05
Text: 弓削島一樹 - FM201511

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