NEWS

米陸軍のチヌーク&ブラックホークヘリコプターに悪天候対応のセンサーが初装備へ

海外軍事 Comments(0)
アメリカ軍で最強の航空部隊といえば、第160特殊航空連隊(SOAR)であろう。SOARは、ブラックホークダウンで有名なソマリアから、ビンラディン襲撃のネプチューン・スピアー作戦まで数多くの特殊作戦に参加している。もやは特殊作戦には欠かせない部隊である。

しかしながら、この最強の航空部隊でも克服できない敵がある。それは着陸時の悪天候である。陸軍のデータによると、2002年から今年までの大規模なヘリコプター事故で152名が犠牲となり、陸軍の損害額の14億ドルのうち10億ドルがヘリコプター事故に関するものなのである。実際に、2001年のアフガン戦争では、グリーン・ベレーの降下地点が悪天候のため、作戦開始が数日間延期された。兵士や機体の損害はなかったが、それよりも戦機を逸するという重大な損害が発生したかもしれなかったのだ。

このような事態を受けて、アメリカ陸軍司令部は、劣悪な気象環境でもヘリコプターを誘導できる新型センサーの導入を決定した。2019年半ばまでに、厚い雲や砂塵、吹雪などの中でもヘリを誘導するシステムは、フォートベニングを基地とする第160特殊航空連隊のMH47GチヌークやMH60Kブラックホーク専用に装備される予定である。

敵弾が飛び交う銃撃戦の中での着陸ならいざ知らず、悪天候でのヘリコプターの着地がそんなに難しいのかと疑問に思う人もいるだろう。疑問に思う方は、ちょっと想像してみて欲しい。猛吹雪や濃霧の、視界ゼロの中で自動車を運転すると、なんだか体が宙に浮いたような感覚に襲われるはずである。これは、道路わきの木々や道幅といった距離や大きさを認識できる物体がなくなってしまうことで、体の平衡感覚が失われてしまうのである。これが三次元移動をするヘリコプターならなおのことで、ホバリングや着地体勢あるパイロットは、厳しい灯火管制や吹雪や砂嵐、濃霧や豪雨の中では、方向感覚を失ったり、「視覚的な基準を失っ」てしまうことがある。

「ヘリコプターが地上に近づくと、そこは厚い砂嵐が発生しているかもしれません」。「離陸時には、砂嵐の影響を受けることは少ないですが、降下、ホバリング、着陸時には非常に影響を受けます」。元SOAR隊員であり、開発責任者であるディーン・ヘイトカンプは語る。
シエラネバダ社 (Sierra Nevada Corporation) は、ボーイング社やロックウェル・コリンズ社との入札に勝ち、第3期特殊作戦司令部が主催する、「劣悪な視界環境を透過する野戦システムを開発プロジェクトの2,260万ドルの受注を獲得した。

「このシステムは、地上までの距離をリアルタイムの基準点を表示する、オンボードセンサーから情報を融合しており、着地地点の障害物やその他の情報をパイロットに伝えるのです」。特殊作戦司令部スポークスマンのマット・アレン海軍少佐は語る。「安全性が飛躍的に向上し、生存性が向上します」。

パイロットは、この新型システムを使い、センサーから30度の視界を得ることができる。この映像の中には、電線、塔など、その高度にある障害物が映し出される。「他社製品は、1つか2つのセンサーからデータを得ようとしていますが、当社の製品は、3つのセンサーからデータを得て融合しています」。(マット・アレン少佐)

特殊作戦コマンドは、来年度から2027年までの間に、このシステムを予備も含めて169セット購入する予定である。陸軍司令部はシエラネバダ・システムを購入・開発するために、2020年から1億4,900万ドルの予算案を立てた。

直近の購入は、2017年にUH60およびCH47に搭載されるものである。陸軍は、2019年後半に実戦配備を望んでおり、2024年までに全機に配備する予定である。さらに陸軍は、機体に取り付けるセンサーではなく、現行の暗視ゴーグルのように使えるようなものを希望している。

Bloomberg Business 2015/11/04
Text: 友清仁 - FM201511

同じカテゴリー(海外軍事)の記事画像
DJI Mavic3カタログスペック解説 Cineモデルとの違いとは?
【ミリタリー雑学】Tan499とかCoyote Brown498って結局ナニ?
ドローンがウクライナ侵攻で果たす役割とは
アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か
ドイツ企業が新型の空挺装甲車の開発を開始
ロシアの2つの艦艇向け新型対空防御システム
同じカテゴリー(海外軍事)の記事
 DJI Mavic3カタログスペック解説 Cineモデルとの違いとは? (2022-06-07 14:29)
 【ミリタリー雑学】Tan499とかCoyote Brown498って結局ナニ? (2022-05-05 19:21)
 ドローンがウクライナ侵攻で果たす役割とは (2022-04-08 16:46)
 アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か (2022-03-26 13:10)
 ドイツ企業が新型の空挺装甲車の開発を開始 (2021-08-08 11:54)
 ロシアの2つの艦艇向け新型対空防御システム (2021-08-06 16:57)
この記事へのコメント
コメントを投稿する

この記事をブックマーク/共有する

この記事をはてなブックマークに追加

新着情報をメールでチェック!

ミリブロNewsの新着エントリーをメールでお届け!メールアドレスを入力するだけで簡単にご登録を頂けます!

[入力例] example@militaryblog.jp
登録の解除は →こちら

PageTop