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メキシコ国内の犯罪で押収された銃火器の 70% は米国が出所。大半は麻薬カルテル絡みで利用か

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メキシコ国内の犯罪で押収された銃火器の 70% は米国が出所。大半は麻薬カルテル絡みで利用か
Photo: via ATF
Image is for illustration purposes only.
今週、米連邦政府監査院 (GAO: Government Accountability Office) は、メキシコ国内の犯罪などで使われ、当局により押収された 104,850 挺の内、そのおよそ 70% に当たる 73,684 挺が、米国から持ち込まれたものだとする追跡レポートを発表した。

Note: These figures reflect firearms seized by Mexican authorities and traced by ATF, not all firearms seized in Mexico.
米アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局 (ATF, or BATF, BATFE) がおこなった 2009 年から 2014 年の統計資料に基づいたもので、2007 年以降だけでも 10 万人以上とも言われるメキシコ国内の麻薬カルテルの犠牲者との因果関係についても取り沙汰されている。

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Note: Percentages in the pie chart do not add up 100 because of rounding. Actual number of firearms purchased in selected states represented in parenthesis.
45 ページに及ぶレポートの中で興味深いところでは、これらの銃は、全米 50 州 (つまり全ての州・・・) から集まっており、テキサス、カリフォルニア、アリゾナの順に上げられている。その多くは米国内で「合法」に購入されたものである点も指摘されており、筆頭に上げられたテキサス州は、全体の 41% を占め、飛び抜けた状態にある他、カリフォルニア州 19%、アリゾナ州 15% と続いている。

また ATF では、これら銃の内の半数ほどは、ライフルやショットガンなどの「ロングガン」であるとしている。一方のメキシコ政府の発表によると、押収された銃の半数は、麻薬カルテルのヒットマンが好んで使う高口径のロングガンであることからも一致している。

この他にも、銃のパーツ単位で米国から持ち出し、メキシコ国内で組み立てて利用する実態を浮き彫りにしており、現実問題としてその追跡・検出が難しいことにも言及している。

メキシコ麻薬戦争:
2006 年 12 月、当時大統領に就任したフェリペ・カルデロンの下、それまで麻薬密売組織に対して受動的だった政策が一変。同大統領は麻薬密売組織に対する強硬な一掃政策を推し進めた。政策の実行から 8 年が過ぎ、これまでに麻薬戦争関連での死者は 10 万人以上にもなると推計されている。

「戦争」の火種となった、麻薬原料のケシがメキシコへ持ち込まれたのは 1860 年代。当時英国によってアヘン漬けにされた中国の移民が南米へ持ち込んだのが起源とされている。その後、近隣の米国へ不法に持ち込み、売りさばく「密輸」が一大ビジネスとなっている。

そうした中で「カルテル」と呼ばれる麻薬関連の不法組織が蔓延り、組織間での縄張り争いや抗争が激化。巻き込まれる犠牲者も急増することになる。そしてその潤沢な資金を背景に、公権力の買収、残忍な手口と暴力を使うことによって社会を封じ込めするなど、その影響力は隅々に渡ることになる。

いずれのカルテルも、近隣で武器大国である米国から大量の武器を密輸している他、カルテルの武装要員にはメキシコ軍で特殊部隊を経験したメンバーが多数含まれていると言われている。

数年前に勢力を誇っていた 7 つの麻薬カルテルは、その後の統合や分裂、衰退などの淘汰が進み、現在は「シナロア・カルテル (Sinaloa Cartel) 」と「ハリスコ新世代カルテル (CJNG: Jalisco New Generation Drug Cartel (略称はスペイン語の頭文字に由来) 」の 2 大勢力に集約されている。

関連記事:
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GAO 2016/01/11

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