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戦場で求められる弾とは?軽量化に力を入れて取り組む米陸軍

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戦場で求められる弾とは?軽量化に力を入れて取り組む米陸軍
Photo Credit: U.S. Army photo by Visual Information Specialist Davide Dalla Massara
陸軍が小口径弾を購入する会社といえば、膨大な量の弾を生産できる大企業を思い浮かべるだろう。実際に、アメリカ軍に提供される7.62mm弾は毎年6,000万発強も製造されている。

軍隊というものは、最新鋭で最先端技術を用いた兵器の開発には、優先的に資金や人材を投入するものであるが、小口径弾という、戦闘において最も基本的なものの性能向上については、あまり重要視されてこなかった。これはアメリカ軍も例外ではなかった。実際に、性能向上弾(Enhanced Performance Round ・・・EPR)の開発計画があったものの、その開発努力は非常に限定的なものであった。その証拠に、陸軍は小口径弾の能力向上の必要性を能力開発文書(capability development documents・・・CDDs)に記載しておらず、具体的な要求(つまり、現場からの要望など)がなければ、予算すらつかないことを意味している。

しかしながら近年、テロとの戦いにおいて、必要なものは、最新鋭のミサイルや戦闘機の開発ではなく、一般の兵士が使用する小口径弾の性能向上であることが、陸軍で認識されつつあり、2015年初頭の統合能力開発システム(Joint Capabilities Integration and Development System)を通して、EPRの研究・開発が承認された。
戦場で求められる弾とは?軽量化に力を入れて取り組む米陸軍
Photo Credit: U.S. Army photo
目下、アメリカ軍が最優先で取り組んでいる課題は、兵士の戦闘装備の軽量化である。これは、現在、アメリカ軍が戦っている地域はアフガンの山岳地帯であり、これらの地域への物資の輸送手段は非常に限られている。最悪の場合、兵士たちが担いで運搬しなければならない。これは、兵士にとって大変な負担であり、過去に行われた戦闘調査によると、装備の重量に関する回答は常に上位にランクインしている。

兵士の運搬する装備の重量を軽減することは、つまり、兵士の行動範囲を広げることなり、戦闘能力の向上につながる。すでに迫撃砲や防弾パネルなどは軽量化が図られているが、それだけでは兵士の負担を軽減することにはつながっていない。そのような背景で、陸軍はついに小口径弾の軽量化に取り組むことになったのである。軽量弾が開発されれば、戦闘装備の軽量化が実現する。例えば、現行の真鍮ケースを軽量材質に交換することで、弾の重量は、20-30パーセントも減少するのだ。

2013年以来、演習弾システム(Maneuver Ammunition Systems)の責任者は、7.62mm軽量小型弾を開発に取り組んできた。7.62mm弾の重量を減らす努力は、国防省弾薬技術コンソーシアム(DOD Ordnance Technology Consortium・・・DOTC)主導で行われている。DOTC、演習弾システム、および陸軍兵器開発研究センターは、7.62mm弾を使う機関重要の軽量ポリマー製カードリッジの開発を行っている。

戦場で求められる弾とは?軽量化に力を入れて取り組む米陸軍
Photo Credit: Photo by Clayton Cassidy, Close Quarters Media Group

One of the small companies working with PM MAS to develop lighter ammunition is PCP Ammunition. Its polymer case components are shown at incremental steps of manufacturing. PCP manufactures the cases in two parts and then assembles them using laser welding to produce a complete polymer case.
この研究開発では、小口径弾機能ギャップ(small caliber ammunition capability gaps)を含む、他の分野で使用されていたポリマー技術を軽量弾の開発に応用した。現在、7.62mm弾の重量を、従来の真鍮製のケースと比べて、約20から25%軽減することが可能となっている。

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新型のポリマーケースは、従来の真鍮製ケースと比べて30%も軽量であるが、最大の難点は、金属のように、一定の形状のものを大量に製造できない点である。さらに使用環境により、膨張や亀裂などを起こすため、暴発の危険性もある。

現在、アメリカ軍ではさまざまな研究を行っているが、未だにポリマー製カードリッジの実用化には時間がかかるようである。

U.S. Army 2016/03/30
Text: 友清仁 - FM201604

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