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元CIA職員が語る「サダム・フセイン」……尋問を担当した分析官の回想録が出版

海外軍事

Photo: U.S. Army
アメリカ軍による2003年のイラク侵攻とその後の長い駐留について、アメリカは「悪の枢軸」の一角であったサダム・フセインをこらしめたのだ……という構図で語られることが多い。しかし、フセインの尋問を担当したCIAのベテランアナリスト、ジョン・ニクソンがこの度出版する回想録「Debriefing The President: The Interrogation Of Saddam Hussein(訳:大統領への報告:サダム・フセインへの尋問について)」には「問題児」とは程遠いフセインの姿が描かれている。

Photo: Bantam Press
アフガニスタンでタリバン勢力を相手とする「テロとの戦い」が続く中、アメリカは、イラクが大量破壊兵器(WMD)を保有しテロリストを支援していると批判、国際機関による査察を受け入れるべきと主張した。

フセイン大統領がこれを拒否すると、すぐさまアメリカを中心とする連合軍はイラクに侵攻、2003年春には首都バグダッドを掌握する。


フセインやその他の指名手配犯の顔をプリントしたトランプ。駐留軍の兵士たちに配布された。

フセイン大統領は逃亡するが2003年12月、特殊部隊と一般部隊が共同して行われた捜索作戦「Operation Red Dawn(赤い夜明け作戦)」において、故郷ティクリート近くの隠れ家にいるところを捕縛された。

CIAでフセインの尋問を担当していたジョン・ニクソンが最初にフセインに会ったのは、彼が本物を確かめるためにバグダット空港に赴いた時だったという。そこにいたのは背の高い、カリスマをたたえた男で、情報通り右手に入れ墨、そして左足には弾傷があった。

「あなたが生きている息子と最後に会ったのはいつですか」2人の息子、ウダイとクサイは既に戦死していた。フセインは「お前は誰だ。軍人か、それとも文民の情報部員か。自分の身分を名乗れ」と答えた。その時のフセインの目は、手錠をされていても恐ろしいものだった。


捕獲直後のフセイン
フセインとの会話は不思議なものだった。王者の威厳をたたえながら、自分の答えたい質問にしか答えず、捕縛の際につけられた傷についていつまでも文句を言っていた。護衛の兵士に結婚についてアドバイスをしたこともあったという。個人としての彼は妻と折り合いが悪く「ママっ子」であった息子ウダイの悪行に悩み、亡命した2人の娘のことが心配で涙を浮かべることもある、ごく普通の父親だった

尋問が進み、彼とイラクについて、アメリカは本当に無知であったことが次第に明らかになる。例えば多くの心理学者が、彼の残酷性について「義理の父親に殴られて育ったからだ」と分析してきた。フセインは一度も殴られたことなどないと言う。また背中の痛みで好物の肉と葉巻を辞めた、という情報も間違っていた。実際彼は毎日肉を食い、葉巻を4本吸い、健康状態は極めて良好だった。

2010年に出版されたブッシュ大統領の回想録では「CIAの情報は間違いだらけであったが、それでも腹を立てたりはしなかった」という一節があるが、真逆だったとジョン・ニクソンは言う。政権は「独裁者フセインとその暴政」というイメージに合致する情報しか耳に入れることはなかった。

実際のフセインは政府内部や国際社会で一体なにが起こっているのか、ほとんど理解していなかったという。

イラン・イラク戦争末期の88年3月16日、イラク軍が「イランに協力した」としてマスタード、サリンなどの混合ガスでハラブジャを攻撃した「ハラブジャの悲劇」について質問されると激昂し、関与を問われると「私がその判断を下したのではない」と答えたという。もちろん9/11同時多発テロへの関与も否定。実のところフセインは隠居に近い状態で、小説の執筆に夢中になっていた。圧政と言われるものの多くは、彼のコントロールの外で行われていたのである。

もし、こうした情報をブッシュ大統領や政権中枢が重視していたらどうだったろうか。ジョン・ニクソンは、イラクに侵攻するのではなく、老いゆくサダムと彼の権力を背景とした強硬派を政治的に孤立させ、イラク政権の穏健派との共闘をはかれたのではないかという。

フセインはイラクの司法機関によって処刑され、その様子は動画で公開された。ジョン・ニクソンは言う「まるで野蛮なリンチだ。こんなひどいことをさせるために、我々の兵士は血を流したのではない。ブッシュ大統領が約束した『新しいイラク』はこのようなものではないはずだ」

Source:
CIA analyst wore down Saddam Hussein with tough family questions - NY Daily News

The Capture of Saddam Hussein | Center of Military History

Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201612
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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