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中国版 PMC、現状と課題

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中国版 PMC、現状と課題
Capture screen: Financial Times's YouTube channel
Image is for illustration purposes only.
2016年8月7日、中国人の織物デザイナーがパリ郊外で強盗に襲われ死亡した。近年、中国の著しい経済成長にともない、世界のあちこちに中国企業が進出し、それに応じてそこで働く中国人が現地で犯罪に巻き込まれることが多くなってきた。中仏友好協会によると、2015年12月以来、100件以上もの強盗・略奪事件に中国人が巻き込まれているという。

中国人デザイナーの死は、海外に進出した中国企業が長年抱える問題を浮き彫りにした。海外駐在の中国人は、現地の法や治安体制があまりに無力であることを多大な犠牲をもって知っている。例えば、2004年、アフガニスタンで11名の中国人が殺害された事件は、中国の海外ビジネスの認識を一変させた。それ以後、中国人資本家は、莫大な利益が上がるものの、それに応じて危険もともなう場所でのビジネスでは、独自の警備・保安体制の確立こそが重要で、それに投資するようになった。
中国の民間警備会社(private security companies・・・PSC)は、2000年初期からの中国経済の発展とともに発生、成長してきた。現在は数十億人民元の市場規模となっている。今後、中国経済の発展ともに、中国企業の海外進出も増え、PSCの需要も高まってゆくと思われる。しかしながら、現在の中国では、PSCを巡る法整備がその需要に追いついていないのが現状である。現在の中国の法律では、中国企業の護衛はもちろん、海外需要への進出すらできない。

世界中で活動する欧米のPSC/PMCとは異なり、中国のPSCは規模の小さく、知名度も低い。中国国内に4000社以上、登録要員が430万人、ほとんどのPSCの操業年数が10年以上であるにもかかわらずである。原因は大きく2つある。

1つは、これらPSCの法的な定義が不十分であることがある。中国に限らず、これらの企業がその国で活動するには、その当局/警察/軍の権限に抵触してはならない。また、海外で活動するにも、当地の主権を侵害してはならない。中国では、その方面の法整備が追いついていない。

近年、中国当局も重い腰を上げ、法整備に着手し、保安企業を、「保安会社」と「武装した保安会社」の2つのカテゴリに分けた。いずれの企業体も、当局/警察/軍の指導と監視を受けたうえで、開業できるようになった。

「保安企業」を開業するには、資本金100万人民元、保安要員は過去に犯罪歴がないものを雇用し、明確な組織・管理、および説明責任体制を確立することが求められる。「武装した保安企業」は、資本金1000万人民元、当局の直接経営、あるいは51パーセント以上の国家資本、さらに、保安要員は銃器の取扱に習熟していることが条件となっている。

これら条件が制定された後に開業した保安企業のほとんどが「武装した保安会社」ではなく、「保安企業」であった。ここにもう1つの問題点がある。

中国当局の長年の銃規制により、中国国内で銃器に精通した者は非常に少ない。また中国軍も海外で活動したことがないため、欧米のPMCのように、戦闘経験者・特殊部隊出身者が絶無である。「武装した保安企業」のスタッフも、せいぜいスタンガンを装備している程度である。これが中国PSCの海外進出の最大の障害になっている。現在、海外から人材を集めているものの、企業の知名度の低さ、さらにスカウトマンが元キックボクシングのチャンピンを起用しているなど、まだまだ問題が多い。

これらの問題をクリアした上で、スタッフに対する交戦規定(Rules of Engagement・・・ROE)の指導・徹底や実際のオペレーションの習熟など、取り組むべき課題が多いのが現状である。

参考映像:
China's private security companies go overseas | FT World

Text: 友清仁 - FM201610

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