ミリタリー映画作品を裏で支える、スタントコーディネート会社の元・米海軍特殊部隊 SEAL 隊員

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ミリタリー映画作品を裏で支える、スタントコーディネート会社の元・米海軍特殊部隊 SEAL 隊員
Vance (Left) on the set of “Sabotage” with Joe Manganiello and Arnold Schwarzenegger.
© 2013 DEA Productions, LLC All Rights Reserved.
軍事、警察、ギャング、スリラー、SF、ホラーなどジャンルを問わず銃火器類が登場する映画を裏から支える”スタントコーディネーター”へのインタビュー記事が、アメリカの軍事系情報サイト:We Are The Mighty に掲載されている。
インタビューに応じたのは、1994年から2003年まで Navy SEALs 隊員 だったケビン・ヴァンス(Kevin Vance)氏。スタントコーディネート会社:Vance & Brown Consultingの代表であり、同じく元 Navy SEALs 隊員のネイト・ブラウン(Nate Brown)氏と共に映画製作の裏方“スタントコーディネーター”を務めている。ヴァンス氏らは銃器・軍事系に特化したスタントコーディネーターと言え、カーアクションやスカイアクション等などアクション応じた専門のスタントコーディネーターも映画業界には存在する。

ヴァンス氏らの仕事は、俳優への銃器技術指導(ガントレーニング)が主であるが、銃器監修、脚本や場面設定の考証、ロケーション考証、プロップガンなどの銃火器類や専用特殊車両の準備と手配、出演、エキストラの手配と指導、など多岐に渡りガンアクションに関連する全ての事柄を受け持っている。裏方である為に一般的にはあまり馴染みがない職種であるが、一例を挙げるとマイケル・マン(Michael Mann)監督作品の「ヒート」「コラテラル」「マイアミ・バイス」「パブリック・エネミーズ」「ブラックハット」などに参加している元 SAS 隊員のミック・グールド(Mick Gould)氏が、スタントコーディネーターとして有名である。グールド氏のオフィシャルサイトには、ガントレーニングを行った著名俳優の名が掲載されている。

ヴァンス氏らがスタントコーディネーターとして初めて映画作品に参加したのが、デヴィッド・エアー(David Ayer)監督がメガフォンを執った「エンド・オブ・ウォッチ」であった。ロス市警全面協力のもとで撮影された同作は、ダブル主演のジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)とマイケル・ペーニャ(Michael Peña)がロサンゼルス市警察の警察官を演じ、全編通して POV(Point of View Shot)映像で構成されたファウンド・フッテージ形式のポリスアクション作品である。同作では、銃器監修、ガントレーニング、脚本考証、殺陣などを受け持っている。

「エンド・オブ・ウォッチ」以降もデヴィッド・エアー監督とのタッグは続き、2014年に公開されたアーノルド・アロイス・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)主演の DEA 特殊部隊を描いた「サボタージュ」では、DEA 特殊部隊員のトライポッド役をヴァンス氏が演じている。同作では、ガントレーニングを主に受け持ったようだ。

同じく、2014年に公開されたブラッド・ピット(Brad Pitt)主演の第二次大戦末期のヨーロッパ戦線を舞台とした戦車アクション映画「フューリー」では、M4戦車フューリー号の搭乗員である主要キャスト陣のブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ(Shia LaBeouf)、ローガン・ラーマン(Logan Lerman)、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル(Jon Bernthal)らに、ヨーロッパ戦線の激戦を潜り抜けてきた兵士らしい風格を出すために、軍隊の基礎訓練から戦車の操縦方法に至るまでのブート・キャンプを行ったとのこと。映画のディテールに深みをもたせるために、当時の戦場を想定して厳しい寒さや空腹、それに伴う悲惨な感情などをキャストに体現させたようだ。過酷なブート・キャンプが終わる頃には、キャストとスタッフの苦労の甲斐があり戦車クルーのチームワークは良いものになったと、ヴァンス氏は当時を振り返っている。

そして、日本でも9月10日から公開が始まるウィル・スミス( Will Smith )主演の悪の特殊部隊の活躍を描くアクション映画「スーサイド・スクワッド」でも、引き続きデヴィッド・エアー監督とタッグを組んでいる。同作では、登場キャラクターが個性豊かな“獣”揃いだったため、それぞれに応じてトレーニングを行ったようだ。また、本編に多く登場する特殊部隊のエキストラのトレーニングに2週間の期間と、空砲代として5万ドルの予算を要したと語っている。ヴァンス氏は、ガントレーニングだけではキャラクターに深みを出せないと考えている。例えば、戦闘指揮官であればリーダーらしい考え方や振る舞いが出来るものであり、そういった精神面や心理面にも着目し役者の役作りに貢献できるように努めているようだ。

映画『スーサイド・スクワッド』サントラ入り特別映像

ヴァンス氏は、19歳の頃に手にした第二次世界大戦の本を切っ掛けに多くの軍事書籍を読み漁り、最終的には Navy SEALs の本に辿り着いた。そして、丁度その頃に出会ったベトナム帰還兵に触発され海軍へ入隊したが、本には記されていない様々なことを経験することとなる。“軍隊生活を通して学んだことは、自分自身に挑戦することだ。誰もが挑戦することを望んでいると思う。私は、元軍人ならでは経験とスキルを活かして、この業界でそういった人たちの手助けをしたい”とヴァンス氏は語っている。

尚、2017年公開予定で現在製作中のブラッド・ピットが主演する戦争コメディー映画「War Machine」(Netflix 製作作品)にも参加している。

Text: 弓削島一樹 - FM201609

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