SEALs1人に対し1,000人の「なんちゃって」がいる

海外軍事レポート

Photo from Office of the Secretary of Defense Public Affairs
凄まじい訓練に耐えることでしかなれない特殊部隊の隊員たち。その名誉を手っ取り早く利用するため、彼らに「なりすます」ニセモノ達が問題となっている。

例えばアメリカ海軍特殊部隊SEALs隊員のうち、現在生存しているのは現役・退役含めて9,000人ほど。FBIの統計によれば彼ら1人に対し、ニセモノが1,000人いるという。
例えばこういう人だ。彼は元SEALsのマーク・ジョストン准将で、CIAのSOGにいたとのことである。

Stolen Valor, Fake Navy SEAL at Liberty University - YouTube

しかし彼が着用している海軍十字章は受勲者がすべて公開されており、その中に彼の名前はない。その後の調査で彼はマーク・ジョストン准将ではなく「ジョージ・ハンレー」であることが明らかになった。彼は警官を欺こうとした罪で逮捕された。

こうしたニセモノを取り締まるのは難しい。もちろん現役軍人以外の軍服の着用は一部の例外を除いて禁じられているし、軍人を装って便益を得るのは単純な詐欺だ。しかし「自分は元軍人であった」「○○という勲章を受けた」と吹聴することまでを取り締まるとどうなるだろうか。

例えばベトナム戦争中、元兵士の反戦運動家が「私は子どもを殺してパープルハート(名誉負傷章)を得た」というプラカードを掲げた。パープルハートは戦闘中に負傷すると得られる勲章で、つまりこのプラカードは「命令で一般市民を殺すことになり、私の心は傷ついた」という意味である。この場合、この元兵士は受けてもいないパープルハートを受けたと言っているが、実際にそうだったかどうかは問題にならない。こうしたケースを含めてしまうと憲法が定める言論の自由を侵害する危険がある。

受勲を詐称する行為を取り締まる「Stolen Valor Act of 2005」は、2012年に最高裁に無効とされたが、上記はその際に裁判官の1人から出された質問である。この法律はその後「Stolen Valor Act of 2013」として再制定されたが、制限の多い内容となっている。

法律で裁けない彼らニセモノに対し社会的な制裁を加える人たちはいる。SEALsを目指す人達の予備校であるExtreme Seals Experience社のドン・シプリーは20ドルで調査を請け負っている。NPOの「Guardian of Valor」はさらに手広くこうしたニセ軍人の調査を行い、時にはその写真などを含めた情報を公開している。ドン・シプリーによれば問い合わせは1日20~30件、大きな作戦が行われた報道などの後には倍になることもある。

現存しない部隊の元メンバーを名乗るニセモノもいるが、それで監視の目をくぐれるわけではない。東ドイツ空挺部隊やローデシアSASなどにはOB会が存在するし、そもそも特殊部隊というのは同期の数がとても少なく、ニセモノが紛れ込む余地はない。書類に残らないような傭兵部隊にも「同期」はいる。なのであっという間に回状がまわり、正体がバレる。

軍歴を詐称するということは彼らすべてを敵に回すということだ。イギリスのタブロイド紙には時々「酒場で元SASを名乗るホラ吹き男が、たまたまそこに居合わせた現役SASに叩き出された」という記事が掲載される。これくらいなら笑い話だがこんな不気味な話もある。

作家のフィリップ・セサリーゴはイギリス陸軍の砲兵部隊に所属していた。しかし「SASとしてアフガニスタンに赴き現地でソ連軍と戦った」と偽って小説「Jihad!」を出版した。この小説は5万部ほど売れ、次作として「ユーゴスラビアでクロアチア人勢力・ムスリム勢力に武器を提供すべく暗躍した英国政府」に関する作品の準備をしていたらしい。

しかし何者かが彼の正体をマスコミに暴露、彼は住処を転々とした後ベルギーのとある家屋のガレージで一酸化中毒で死亡しているところを発見された。状況などから「自殺である」として捜査が打ち切られたが、周辺住民の証言によれば「彼は誰かに追われているようだった」という。

Source: Military Impostors Reach 'Epidemic' Level | WFMYNEWS2.com
Lonely death of fantastist obsessed with SAS | UK news | The Guardian

Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201704
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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