爆弾探知犬を題材にしたノンフィクション書籍が 9 月下旬発売

ミリタリーブログサポートチーム

2013年09月17日 18:50

イラク戦争で IED (Improvised Explosive Device : 簡易爆発物) による犠牲者が増える中、米海兵隊では、べトナム戦争以来 30 年ぶりに爆弾探知のために軍用犬を投入した。2013 年 9 月下旬に並木書房より発売される「レックス 戦場をかける犬」では、軍犬兵 マイク・ダウリング上等兵を中心にその活躍を描くノンフィクションとなっている。訳者は 1991 年からカリフォルニア州モントレーの米国防総省外国語学校 (DLI : Defense Language Institute) 日本語学部で准教授を務めている元米陸軍大尉の加藤喬 氏。四六判並製 280 ページ+口絵 16 ページ、定価 1,800 円 (税別) 。

レックスは、海兵隊の軍用犬で、犬種はジャーマンシェパード。実は軍用犬が戦場で活躍したのはべトナム戦争までで、その後、軍用犬の出番はありませんでした。ところが、イラク戦争で簡易爆弾(IED)の犠牲者が増えたことから、爆弾を探知するために軍用犬が30年ぶりに投入されました。レックスの任務は、武器の隠し場所や自爆テロ犯、そして兵士も市民も見境なく殺傷する簡易爆弾を嗅ぎ出すこと。そのレックスを危険のど真ん中に導き、信頼の絆を頼りに生還させるのがダウリング上等兵の役目です。本書は、イラク戦争を舞台に、訓練も装備もまったく手探り状態でスタートした軍用犬チームの活躍を描いたノンフィクションです。

少年時代から動物好きだったダウリングは盲導犬を育てたこともあり、この体験から入隊後は軍犬兵になる決意を固めます。最初のパトロールでレックスは、爆発や銃声におびえてすくんでしまいますが、リード(犬綱)の先にいつもダウリングがいることで徐々に任務をやり遂げる勇気を得ます。

50度を超える気温、息が詰まる土煙、そして昼夜を問わず敵の待ち伏せが潜む街角にレックスは嬉々として進んでいきます。そのレックスだけを頼りに簡易爆弾を捜索するダウリング。次の一歩で爆発が起こりバラバラに吹き飛ばされるかも知れない恐怖は、読者にも否応もなく伝わります。

大学を中退し、目標を見失ったダウリングが、レックスに出会うことで、自分の居場所を見つけ、自分を取り戻していく姿は、本書のもう一つの魅力です。

また「訳者あとがき」に詳しく紹介されていますが、退役したレックスが安楽死されるのを恐れた2人目の軍犬兵が2万人以上の嘆願書を集めて、引き取りを実現し、そのセレモニーは全米に放送され、犬好きの米国人を感動させました。

緊張に満ちた爆弾探知任務と銃撃戦の洗礼に彩られた「レックス 戦場をかける犬」は、ヒトと犬の絆がいかに任務遂行に貢献し、数知れぬ人命を救ったかを描いた胸躍る物語です。

「レックス 戦場をかける犬」
マイク・ダウリング[著]、加藤喬[訳]
http://www.namiki-shobo.co.jp/
2013 年 9 月下旬刊

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