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台湾占領を目的とした中国の多方面攻撃の可能性

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台湾占領を目的とした中国の多方面攻撃の可能性
A Type 075 assault ship (For Illustration Purpose Only)

 台湾の防衛計画策定者は何年もの間、中国が台湾の民主主義を脅かすとき、中華人民解放軍(以下、中国軍)の主力部隊は160 kmある台湾海峡を横断して台湾の南西側の浜辺から侵攻してくると主張してきた。

 しかし、その考えは中国軍が強大になるにつれて変化してきている。台北(台湾の首都)にある国際安全保障と防衛に関する研究機関に所属する研究員は、「多方面からの水陸両用作戦」について警告している。

 現在の中国軍はこれまでになかった方法での侵攻が可能となっており、侵攻が難しいとされていた経路から接近し、上陸困難とされる地点からも上陸してくる可能性がある。これにより、台湾軍は有効な防衛体制を築くことが従来よりも難しくなっている。

 これまでの「南西側の浜辺が狙われる」という考えには明確な理由があった。該当する浜辺は最も上陸しやすかったのである。また、中国軍水陸両用部隊は最近まで初歩的な軍備しかなかったことも要因として考えられていた。台湾海峡を横断して強襲部隊を輸送するためには、中国軍は商用船と同じ方法での海上輸送に頼るしかなかった。一回の輸送で運べる人員も1万人と少なく、台湾軍の攻撃に晒されながら素早く上陸するのは困難であった。

 そして現在、状況は変わった。071式ドック型揚陸艦8隻と大型甲板を持つ075式強襲揚陸艦3隻が建造され、中国軍の水陸両用部隊は世界最大級のものとなった。

 合計11隻の揚陸艦は2万5千人もの海兵を輸送でき、ヘリコプターやホバークラフトからの上陸も可能である。貿易事業から得られた実用的な輸送方法も加わったことで、中国軍は水陸両用部隊を複数のグループに分け、それぞれに数千人規模の海兵を運ばせることも可能となった。

 現在の中国軍は台湾侵攻に関して幅広い選択肢を持っている。台湾の一部または全土を占領するために、空と海の交通遮断から大規模な水陸両用作戦までこなすことができるとされている。様々な兵科が連携した水陸両用の強襲戦術と複数経路からの侵攻は、台湾にとって大きな脅威となっている。

 言い換えれば、台湾は中国軍が多方面から攻撃してくることを想定するべきである。上陸に関して決して理想的とは言えない地形であっても、中国軍が侵攻できないとは限らないのが現状である。

 また、中国軍は台湾侵攻の際に船舶で島の周りを周回し、東側からの援軍(米軍および自衛隊など)に対して脅威を与えるのは明確である。フィリピン海は中国軍が新型空母を運用するのに丁度良い場所である。

 中国軍が本当に水陸両用部隊と空母を併用するのかはさておき、中国軍が台湾を東西の両方から支配下に置こうとするのは想像に難くない。何にせよ、台湾は防衛計画の再検討を余儀なくされている。

 再検討の代わりに、台湾軍が中国軍の艦隊にミサイル群を打ち込むという策もある。台湾は米国からボーイング社製の地上発射型対艦ミサイル400発を購入したばかりであり、これらは中国軍の多方面攻撃への対処に寄与すると考えられている。
松井の所見:
 中国軍は今や世界最大級の軍事力をもっている。中国軍は軍備拡大と最新技術の導入によってこれまで考えられなかった作戦での侵攻が可能となり、台湾だけでなく周辺諸国全体がこれまでの防衛計画を見直さなければならなくなったのではないだろうか。本記事では部隊を用いた物理的な侵攻が取り上げられたが、高度なサイバー攻撃や徹底的な情報統制など、無形分野にも注意しなければならないこともまた、確かであろう。中国の台湾侵攻が現実的な問題として取り上げられる中、日本も他人事として捉えてはならないと思う。現に、年1000回程度ものスクランブル発進(1回の発進につき1機あたり約200万円のコストが必要と仮定すると、複数機(例として3機)の発進でおよそ600万円となる)をしている日本は、安全保障上の緊張に晒されているだけでなく、経済的にも無視できない損失が発生している。現代の戦争形態は、軍事技術の革新によって大きく変わってしまったと思う。より柔軟な侵攻・より長距離からのステルス攻撃・電子攻撃およびサイバー攻撃による軍用設備およびインフラの即時無力化の他にも、政治・経済・情報分野などでも他国への攻撃が可能となった。平時と有事の境界が曖昧になってきていると考えられる現代において、日本の現状は安全・平和と言えるのだろうか。

Source:To Capture Taiwan, Chinese Forces Might Attack From Several Directions - Forbes


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Matsu (@mattsannENG)
原子核工学を専攻し、量子光学まで専門性を発展させる。その後、航空系防衛製品の輸入関連に従事。現在は田村装備開発(株)のミリブロ担当としてNews記事を執筆している。
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