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「軍用5.56mm弾の違法化騒動」はなんだったのか

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アメリカ軍の自動小銃・M16/M4シリーズ、AR-15とそのクローンの弾薬である5.56mm弾は、民間でも非常にメジャーな弾であるが、先日軍用5.56mm弾「M855」「SS109」と同設定の弾丸の違法化と一般販売禁止がBATFE(ATFとも:アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)から提案され、ファンの間ではパニックに近い騒ぎとなった。
アメリカの法律では徹甲弾(Armor Piercing Ammunition)の所持が禁止されている。禁止されているのは「ハンドガン用」「22口径以上」「タングステン、鋼鉄等の弾芯」の弾薬の他に、ライフル用でもAK-47などに用いる鋼鉄弾芯の7.62x39mm弾や、7.62mmNATOのAP弾などが規制されている。

今回話題となった「M855」「SS109」も貫通力が非常に高い弾薬であるが、これらは「ライフルでしか撃てないこと」「ハンティング、競技などのスポーツ用であること」などを理由に、1986年のレーガン政権下で「例外」として規制対象から外されていた。

しかし、近年、カービンからストックを外し、保持部分を一箇所とすることで「ハンドガン」として登録するケースが増加している。中には銃を腕に固定する「ブレース」と称するストック状の部品を備えたものなどもあり、ほぼライフルと見た目が変わらないものもある。

「ブレース」を装着した「片手用ハンドガン」の例。

そうすると「M855」「SS109」はこれら「ハンドガン」から射撃できる徹甲弾、ということになってしまう。法律との整合性を鑑みれば、例外指定を撤廃し規制すべきではないか、というのがBATFEの主張だった。

しかし2015年2月13日、BATFEが例外指定の撤廃についてパブリックコメントを募集したところ、銃器コミュニティはまさに蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。市中の「M855」「SS109」の相場は上昇し、各メディアや銃器規制反対派もこぞってこの話題を取り上げた。

「ブレース」自体の規制も話題となっているなどデリケートな時期だったうえに、BATFEの「ミス」も重なった。実は2015年1月15日に発行されていたオンライン版の銃器規制リファレンスガイドでは、ミスによって「M855」「SS109」の例外指定が削除されてしまっていた。

このため「なし崩し的に規制強化しようとしている」と銃器コミュニティはヒートアップし、結果として8万件以上のパブリックコメントが集中した。BATFEは3月10日に「コメントを精査し今後の政策決定に役立てる。規制改訂をする時はオープンで透明性の高い手続きで進める」として募集を終了するが、騒ぎはそこで収まらず当時のBATFE長官であったトッド・ジョーンズ氏の辞任にまで発展した。さらには現在Modernize Law Enforcement Protection Act(訳:近代的法執行官保護法)として2人の議員が国会に法案を提出し、引き続き「M855」「SS109」規制が試みられている。

AR-15と5.56mm弾薬は長年軍や法執行機関で使用されてきたということで、銃器ファンのみならず軍人や警察官のコミュニティでも強力に支持されている。乱射事件など凄惨な事件が起こる一方、規制の強化はこうしたコミュニティや軍需関係企業の支持を失うということでもあり、政治的に難しいというのが現状である。

Image:File:Ammunition Belt 5.56 mm.jpg - Wikipedia, the free encyclopedia
Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201504
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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