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「SEAL Team 6」秘匿の歴史とその全貌をニューヨークタイムズ紙が特集

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9.11 の首謀 Osama bin Laden 容疑者に対する襲撃作戦を成功裏に収めたことから、広く一般的にも知られる存在となった SEAL Team 6 (ST6) 。オフィシャルな中であまり語られることの無かったこの最精鋭部隊について、ニューヨークタイムズ紙が特集記事を掲載した。

「ペンタゴンが公に確認していない」とされる ST6 については、その多くが機密扱いとなっており、秘密のベールに包まれている。同紙の記事では、Britt Slabinski 氏や Ryan Zinke 氏、Matt Bissonnette (Mark Owen) 氏など十数名におよぶ現役・退役問わない ST6 のメンバーへ聞き取りをおこなった他、ネブラスカ州選出の民主党議員でベトナム戦当時に自身も SEAL 隊員だった Bob Kerrey 氏や、NATO で連合軍司令官を務めたこともある James G. Stavridis 氏の他、Osama bin Laden 急襲作戦実行時に SOCOM のトップだった William H. McRaven 氏などの軍関係者や、政府が保管する文書などから、その実態について紐解いている。
2002 年 3 月、アフガニスタンの山岳地帯に陣取るアルカイダ部隊への大規模攻勢を仕掛けるべく「アナコンダ作戦」がおこなわれており、記事では作戦中に起きたタクール・ハーの戦い (Battle of Takur Ghar) についても言及。この戦いの中でアルカイダの攻撃により、ST6 隊員の Neil C. Roberts 一等兵曹が、乗っていたヘリコプターから落下し、援軍の到着が間に合わない中で殺害されている。アフガニスタンでの主要な戦闘における ST6 隊員の死亡は、彼が初めてと記録されている。

(タクール・ハーの戦いについては、ミリブロ公式ブロガーで軍事書籍の翻訳を数多く手掛ける友清仁氏のブログ、「Special Forces in Afghanistan War against Terrorism」に詳細が掲載されている)
タクール・ハーの戦い

そして記事では、ベトナム戦争時代の特殊部隊でおこなわれていたフェニックス計画 (Phoenix Program) を参考にした「オメガ計画 (Omega Program) 」についても言及している。ST6 メンバーが CIA と手を組むことで、他の部隊より作戦上での制約が取り払われた中で、タリバン戦闘員らの捕縛に集中したとのこと。

また、聞き取りの中で「襲撃作戦の多くは発砲する機会が無かった」とする軍関係筋の話を紹介する一方で、「2006 年と 2008 年に襲撃作戦の集中する期間があり、夜間襲撃作戦を中心に一度で 10 名や 15 名、また時には最大で 25 名の敵を殺害することもあった」とする ST6 隊員のコメントが添えら、作戦の中で敵の殺害がいつしかルーチン化している実態についても紹介している。

作戦の遂行をより迅速で確実に推し進めた ST6 は、予算を確保し先進装備の数々を手に入れることになる。このことは ST6 のブランドカバー名「海軍特殊戦開発グループ (Naval Special Warfare Development Group, 通称「DevGru (デブグル) 」) にもある通りで、9 チームを含めた SEAL 組織に向けて、新たに開発された装備や戦術を広める公式な役割を持っていることにも表れている。

また記事では、ドイツ製のライフルや、殆ど (と言っていい) 小火器に装着されているサプレッサーの他、赤外線レーザー装置などの装備についても言及しているが、中でも大きく取り上げているのがノースカロライナ州に拠点を置くナイフメーカー、Daniel Winkler (ダニエル・ウィンクラー) 製のトマホーク (インディアンが使う斧) について。このトマホークについては、ST6 メンバーによれば、ネイティブ・アメリカ戦士のロゴが印象的なレッドチームの隊員が、チームで最初の 1 年を終えた時に受け取るものとして紹介されている。

もちろん、トマホークは単なる「壁飾り」ではなく、退役した ST6 メンバーによれば、「何人かは実際にこのトマホークを作戦で使用しており、少なくとも 1 名の敵を殺害している」とのこと。

また、TV などのメディアでも頻繁に露出している元 ST6 隊員の Dom Raso 氏 (2012 年に海軍を退役) によれば、「斧はブリーチングやドアを破壊して侵入する際の他、取っ組み合って敵と戦わなければならないシーンで利用した」とのこと。

しかしながら、多くの SEAL 隊員は戦闘シーンにおいて、あまりにも嵩張り、銃器ほどの効果が見出せないという理由から、トマホークの類を使用しなかったようだ。

そして最後の章では、ST6 のブラック・スコードロンに関する記述がある。ブラック・スコードロンはアフガニスタンやパキスタンと言った地域限定での活動を超えて、広く世界中の諜報活動に展開しているとのこと。同スコードロンは、元はスナイパー専門のチームだったが、9.11 以降に再構築されている。スタンリー・マクリスタル (Stanley A. McChrystal) 司令官が ST6 でのその役割について示しており、ブラック・スコードロンの隊員は、サハラ砂漠以南のアフリカからラテンアメリカ、中東に掛けての米大使館に展開している。現在は 100 名以上いるとのこと。

また、元 ST6 メンバーによれば、「ブラック・スコードロンのメンバーは、夜間襲撃が実行される数日・数週間前から現地偵察のために活動をおこなっている。そこで隊員らは、現地の民族衣装を着用し、集落の内部に人知れず侵入。偵察用のカメラや盗聴器を仕込んだり、住人への聞き込みなどをおこなっている」とのこと。

そして、興味深いところではこうしたスパイ活動の中で、ブラック・スコードロンと行動を共にする女性の存在についても記述が及んでいる。女性は普段、カウンターパートの男性と共に大使館の中に居るとのこと。諜報機関に対して疑心を抱く現地民や、敵武装勢力による監視の目を和らげる効果もあるとのこと。

原文は、全 43,000 文字超の大作に仕上がっており、過去に報じられた ST6 (DevGru) 関連のトピックスをほぼ全て網羅している。ST6 は、ファン層の厚い特殊部隊の中でも最も人気が高い部隊なので、貴重な資料となりそうだ。

NewYork Times 2015/06/07

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