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重いボディーアーマーは兵士のパフォーマンス低下に影響。携行物の適正な最大重量は50ポンド

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Photo from Army Public Health Center (APHC)
敵の攻撃から身を守るための「ボディーアーマー」は、有史以来絶え間なく改良が重ねられてきたアイテムの1つ。かつてシベリアの遺跡では少なくとも3,500年前からその存在が確認され、鈍器や刃物といった直接攻撃への対策としてはじまるも、それらはやがて弓矢や火器といったより長射程から狙い撃てる武器への対抗装備へと進化を重ねている。

現代戦争に目を移すと、ボディーアーマーは人類がこれまでに獲得してきた英知を結集させ、あらゆる分野の最先端テクノロジーにより造り上げられるも、兵士の損耗を低下させることを追求した結果、その負荷重量が超過し大きな支障をきたし始めている。

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要点:
・米軍兵士の携行重量は現在90~140ポンド(=約41~64キログラム)
・ボディーアーマーだけでも32ポンド(=約14.5キログラム)ある
・重過ぎる負荷は兵士のパフォーマンスを十分に発揮できない
・ヒトの肉体的進化には限度がある
・パフォーマンスを維持できる最大重量は50ポンド(=約23キログラム)
・陸軍はアーマーとヘルメットで27ポンド(=約12キログラム)に抑える計画



Photo from U.S. Army Acquisition Support Center (USAASC)
ワシントンのシンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS: Center for a New American Security)」が発表した報告書、『兵士の重過ぎる荷物』および「スーパーソルジャー シリーズ~兵士の防具の現在~」によると、「現在の歩兵は、戦闘中ともなれば戦うための武器(ライフルや弾薬)をはじめ、飲料水、バッテリー、その他アイテムなどを含め、実に90~140ポンド(=約41~64キログラム)もの荷物を持ち運ばねばならず、ボディーアーマーとヘルメットはその中で最も重量物に位置付けられている」と言及。その上で「確かに現在のボディーアーマーによって米軍兵士は比類なき優位性の下で、高い生存率という恩恵を受け、これまで犠牲者を減らすことができたが、一方で歩兵1人当たりボディーアーマーだけでも32ポンド(=約14.5キログラム)という重量を犠牲にしたことで、機動性を損ない、疲労を招き、強いては任務のパフォーマンス低下に至っている」と警鐘を鳴らしている。

また、イラク・アフガニスタンでの戦闘で兵士は日常的に119ポンド(=約54キログラム)もの重量負荷を経験しており、その結果戦場で医療救助を受けた兵士の1/3が、脊髄や結合部位、筋骨格障害を受けている。これは戦闘による負傷の2倍に匹敵するという本末転倒の結果になっていた。


Photo: Interceptor Body Armor
from U.S. DoD Defense Technical Information Center (DTIC)
そこで報告書では「重いボディーアーマーを着用することは、アフガニスタンなど山岳地帯で何日にも渡る長距離パトロール任務には実用的ではないのかもしれない」としている。ボディーアーマーやヘルメットをはじめ、夜間任務に欠かせないアドバンテージとなるナイトビジョンゴーグルなどの先端装備は技術革新の末に数多く世に出てきた一方で、ヒトの身体能力は近代になっても大きな変化はなく、持ち運べる重量の限界値は決まっている。


Figure: U.S. Army Center for Army Lessons Learned, 2003


Figure: Recommended Maximum Loaded (50lbs), via CNAS
報告書では推奨する最大重量として50ポンド(=約23キログラム)を提唱している。これはこれまでの戦訓を紐解き算出したものであり、この重量であれば、兵士の敏捷性や認知能力、戦場でのスタミナを引き出せ、怪我に繋がるリスクも抑えられるとしている。しかし、現在のボディーアーマーでは32ポンド(=約14.5キログラム)を占めてしまうため、残る18ポンド(=約8キログラム)でその他全ての持ち物を含まねばならないことになる。
ちなみにオプティクス付きM4カービンが弾薬なしの状態で約7ポンド(=約3キログラム)、100オンス(=約2.8キログラム)の水を入れた背嚢(キャメルバック)も同じく約7ポンド(=約3キログラム)、これに夜間暗視装置や、手榴弾、糧食(MRE)を加えると3.5ポンド(=約1.6キログラム)以上となる。これら必要最低限の物量だけでも既に18ポンド(=約8キログラム)を超えてしまい、任務遂行に必要不可欠な予備弾倉(B/L: Basic Load)やヘルメットを持つことさえ出来なくなってしまう。

なお今回ご紹介した報告書内で使われた統計データについては、「IOTV(Improved Outer Tactical Vest)」や旧型アーマー&ヘルメットを対象におこなわれたものとなっているが、陸軍ではこのIOTVより軽量なアーマーシステムへリプレイスを図る過程にあり、胴体部分のアーマーとヘルメットで重量を27ポンド(=約12キログラム)に抑える計画となっている。

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Source: The Soldier’s Heavy Load - CNAS

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