「銃」と「ナイフ」はどちらが強いのか
英語に「銃撃戦にナイフを持ってくる(Bring a knife to a gunfight)」という言い回しがある。きちんと準備をせずに物事にあたる、という、否定的な意味をもつ慣用句であるが、実際のところ銃とナイフはどちらが「強い」のであろうか。
よく言われるのは「ナイフのほうがモーションが少ないので近距離で有利」というものである。典型的な例はこちらの動画である。スタートの合図で銃は相手を撃とうとし、ナイフは相手を斬ろうとする……というコントロールされたテスト環境であれば、ナイフの「速さ」は有利である。
では、これを現実世界で行うとするとどうなるだろうか。銃側は1秒弱も「かかってしまう」ホルスタードロウをやらずにスウェイやサイドステップといった技術で距離を取ったり、自分の腕で相手をコントロールする選択肢がある。一方、銃側が警察官とするなら、発砲の法的正当性の判断や相手の使用武器の確認などのプロセスを経る必要があり、反応がもっと遅くなるかもしれない。
その他にも、以下のような要素を考慮する必要がある。逆に言えば、攻撃者/防御者が確実を期そうとする場合、以下の要素をコントロールする必要がある。
例えば2者の間に車やテーブルといった障害物を挟み、一方的な射撃を行えれば銃のほうが強い。これに対して相手に察知されず十分に近づければ、ナイフ側は武器を抜かせずに無力化できる。いずれが勝つかは以上の要素の組み合わせによる。
よく言われる「刃物を持った相手とは21フィート離れて対処すべし」という「21フィートルール」は、上記のうち「距離」をコントロールして安全を確保するというものであるが、発案者のデニス・テューラー氏自身が「不完全なコンセプト」であるとしている。21フィートルールはあくまで「発砲が正当化される距離はどれほどか」を示すもので、実際は総合的な環境を考慮する必要があるとインタビューで述べている。
距離を変化させながら銃vsナイフの戦闘を比較検討する動画。距離の長短は一つの目安に過ぎないことが分かる。
「ディフェンシブシューティング」「護身術」として、相手と格闘しつつコンシール状態からドロウを行ったり、銃を持った手首の関節を極めたりするなどの手技をよく目にする。見た目も派手で多くの「いいね!」を稼いでいるものもある。
しかし、互いに相手を認識・近接して、しかも武器を抜いている状況が非常に稀なことは、犯罪シーンを撮影した監視カメラ動画を見れば明らかであるし、そもそもこうした技術は使い所が限られる。これを間違えればそれこそ「銃撃戦にナイフを持ってくる」「ナイフファイトに銃を持ち出す」ということになりかねない。
結局のところ、いかに有利な状況を作って戦うか、そのチェスゲームの巧みさが「強さ」を決定するのである。
Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201906
ナイフ VS ガン
— カギッキ (@kagikki) 2018年6月4日
この距離で対処せざるを得ないのであれば、まずナイフの攻撃をさばかなければいけない。という「ときめきタクティコーナイト」での1コマ。
講師:C-Toursねたろうさん(@CTours_info) pic.twitter.com/bJHmZ7kWLQ
では、これを現実世界で行うとするとどうなるだろうか。銃側は1秒弱も「かかってしまう」ホルスタードロウをやらずにスウェイやサイドステップといった技術で距離を取ったり、自分の腕で相手をコントロールする選択肢がある。一方、銃側が警察官とするなら、発砲の法的正当性の判断や相手の使用武器の確認などのプロセスを経る必要があり、反応がもっと遅くなるかもしれない。
その他にも、以下のような要素を考慮する必要がある。逆に言えば、攻撃者/防御者が確実を期そうとする場合、以下の要素をコントロールする必要がある。
・距離
・2者間の障害物の有無
・武器の種類
・武器を既に手に持っているかどうか
・攻撃側か防御側か……タイミングの主導権を持っているかどうか
・双方の練度
例えば2者の間に車やテーブルといった障害物を挟み、一方的な射撃を行えれば銃のほうが強い。これに対して相手に察知されず十分に近づければ、ナイフ側は武器を抜かせずに無力化できる。いずれが勝つかは以上の要素の組み合わせによる。
よく言われる「刃物を持った相手とは21フィート離れて対処すべし」という「21フィートルール」は、上記のうち「距離」をコントロールして安全を確保するというものであるが、発案者のデニス・テューラー氏自身が「不完全なコンセプト」であるとしている。21フィートルールはあくまで「発砲が正当化される距離はどれほどか」を示すもので、実際は総合的な環境を考慮する必要があるとインタビューで述べている。
21-Foot Principle Clarified by Dennis Tueller and Ken Wallentine - YouTube
距離を変化させながら銃vsナイフの戦闘を比較検討する動画。距離の長短は一つの目安に過ぎないことが分かる。
Tueller drill video scale - YouTube
「ディフェンシブシューティング」「護身術」として、相手と格闘しつつコンシール状態からドロウを行ったり、銃を持った手首の関節を極めたりするなどの手技をよく目にする。見た目も派手で多くの「いいね!」を稼いでいるものもある。
しかし、互いに相手を認識・近接して、しかも武器を抜いている状況が非常に稀なことは、犯罪シーンを撮影した監視カメラ動画を見れば明らかであるし、そもそもこうした技術は使い所が限られる。これを間違えればそれこそ「銃撃戦にナイフを持ってくる」「ナイフファイトに銃を持ち出す」ということになりかねない。
結局のところ、いかに有利な状況を作って戦うか、そのチェスゲームの巧みさが「強さ」を決定するのである。
Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201906
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。
タグ :ナイフ
★この記事へのコメント
バイオハザード4のレオンも「近距離では銃よりナイフのほうが早い」て言ってた。
Posted by
レニー
|
at 2019年06月15日 17:55
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