田村装備開発の大阪出張「Protection& Intelligence」取材レポート

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田村装備開発による特別講習会『Protection& Intelligence』が、12月1日にミリタリーブログを運営するジェイ・ライン株式会社のセミナールームで行われた。

今回の講習会では、陸上自衛隊特殊作戦群に所属していた同社訓練教育部長の長田賢治氏が講師を担当し、Protection(警護)とIntelligence(情報)の関係性をテーマに、座学と室内/街頭での実技が実施された。また、6月に行われた前回の講習会『CQC(近接格闘) & フラッシュライトを使用した護身術』では、技を体感したり体を動かすといった身体・肉体面の内容であったが、今回は警護における心構えや考え方といった心理・精神面の講義も行われた。講習科目は、「警護概論」「警護実技」「InformationとIntelligence(情報サイクル)」「都市型スカウト」の4つ。

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警護概論
先ずは、警備業務の種類(第1~4号業務)についての説明から始まり、警護の三つの「S」=「セキュリティ(Security)・サービス(Service)・セーフティー(Safety)」についての講義が行われた。「警護」といえば「セキュリティ(保安/防犯)」や「セーフティー(安全/安全性)」を意識しがちであるが、警護対象者に対するケアなどの「サービス(奉仕/気遣い)」も重要な要素であり、それぞれのバランスを取りながら三つの要素を合わせて100%にすることが大切であるとのこと。他には、「警護対象者を知る」「警護する目的を知る」といった「情報」についての話や、民間警護におけるギャランティーについても講義が行われた。

警護実技 その1(室内編)
セミナールームをカフェに見立てての警護訓練。想定としては・・・依頼人の警護対象者サチコは、夫トシオからDV被害を受けていた。サチコは、トシオに離婚届けのサインさせるためカフェへ呼び出した。警護員はカフェ内でサチコを警護する。・・・というもので、サチコとトシオの行動はアドリブで展開され、警護員役の受講者は事前指導がない状態で訓練に挑み、他の受講者は客役となり状況を観察した。

訓練実施後に受講者全員で事後検証を行い、長田氏の問いかけに対して様々な意見を出し合いながら、最終的に長田氏の回答が示された。その大まかな内容としては・・・情報の精度(妻側の聞き取り調査だけでは当てにならない)、警護員の位置取り、サチコらの客席のレイアウト、動線のコントロール、店側の協力・・・などが挙げられ、危険を回避するための事前準備の重要性などが語られた。

さらに、ロープロファイル(Low-profile / 警護していないようにみえる警護)について講義が行われた。警護における「脅威」とは、警護対象者と襲撃者が同一空間・同一時間に存在することで発生し、一番怖いのは「待ち伏せ」であると実例を挙げながら解説が行われた。襲撃者は必ず情報収集をしており、警護員は警護対象者のルーティンを壊したりコントロールする必要があるとのこと。そして、「10回警護し1回の襲撃を防げたら、警護は成功したといえる。裏を返せば、残りの9回は襲撃を未然に防げている事になる。襲撃に備えて、予測と準備が必要。‟何も起きない”ということは警護が成功している証拠であるが、警護対象者は油断して任を解くことがある。セキュリティとセーフティだけでなく、サービスが行き届いた警護員は依頼人に長く使われる傾向にある。」といった話をされた。

InformationとIntelligence(情報サイクル)
警護における「情報」の重要性が講義された。情報サイクルとは、①情報の要求 → ②情報の収集 → ③情報の評価/分析 → ④情報の配布、という「情報の4段階」を表し、③の段階で実行か中止の判断を行う。「情報」が無ければ「警護」が出来ない。

都市型スカウト
過去の訓練実例などを紹介しながら、下記のような項目が講義された。
・「点検・カット」 追跡者/襲撃者/不審者の索敵など。
・「訓練をする目的」 失敗やトラブル時のパニックやショックなどの心理的ダメージを軽減したり、回復力を養うためのもの。
・「状況の波紋」 進行中のひとつの状況下で、異物(不審者など)が入ると波が乱れる。その波の乱れ(違和感)に対しての「気付き」が重要。
・「空間」 危険を回避するためルーティンをコントロール。日常の空間(家/仕事場/遊び場/道)に置き換えてイメージ。

警護実技 その2(街頭編)
講習会場をスタート/ゴールとし、ビル周辺のワンブロックを周回する警護訓練。想定としては・・・依頼人の警護対象者:ビルオーナーは、不審者から嫌がらせの被害を受けていた。ビル内とビル周辺を巡回するビルオーナーの警護を行う。・・・といったもので、受講者は4チーム(A~D)に分かれ時間差で定時にスタートし、決められたルートを通ってゴールする。チーム毎に役割分担(オーナー役、警護員役(2~3名))を決め、事前に警護方法などを話し合う。長田氏が不審者役でルート内の何処かに潜伏し、各チームを気づかれないように近くから携帯カメラで撮影する。警護員は不審者を捜しながらオーナーを警護する。

訓練実施後、受講者全員で事後検証が行われた。4チーム中、不審者を発見したのは最後に実施したDチームだった。不審者に気付かなかったチームには、長田氏が撮影した画像が提示され、潜伏場所が明かされた。

長田氏から幾つかの問題点が挙げられ、その内のひとつが「キョロキョロするなど不自然な挙動は、警戒されたり警護員の面が割れる」というものだった。また、街中で警護するうえで重要となるのが、警護員と警護対象者の距離を表す「アームズ・リーチ」。距離が近いほどダメとされ、距離と共に時間(行動するタイミングなど)をコントロールするスキルが求められるとのこと。

警護実技 その3(エレベーターフロア編)
先ほどの街頭編の流れから、エレベーターフロアでの実地検証と講義が行われた。実は、街中で不審者を発見することが出来たDチームだったが、ゴール目前のエレベーターフロアに潜伏する不審者を発見できなかったのだ。これは、Dチームのみにイレギュラーで設定された状況で、上記画像の左奥から不審者が携帯カメラで撮影していた。

潜伏時の状況を再現。画像奥(矢印)の壁角から襲撃者の携帯カメラが覗いている。

襲撃者側の視点に立って警護員や警護対象者の位置取りや動線を確認する。

警護員の位置取り、動線、フロアのクリアリング、エレベーターや階段での対処方法などが講義された。

不自然な動きをせず自然な流れの中で、ガラスや鏡などを利用して背後を確認するなど「点検・カット」の例が示された。

約4時間の講習会は、長田氏の軽妙な語り口でそれぞれの科目を掘り下げながら、終始和やかな雰囲気で進められた。随所で「警護」と「情報」の関係性が示され、警護における「情報」の重要性が認識できた。また、各要点ごとに長田氏から発せられた「普通のことが、普通に見えることが大切」「当たり前のことを、当たり前に考えることが必要」という言葉が、「警護」における心理・精神面の肝と言えるだろう。秘匿性が高い講習のため、このレポートでは大まかな内容しか記せてないが、実際に受講することで「警護」についての知識が深まり、専門職に限らず家庭でも応用できる内容と感じた。

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Photo & Text: 弓削島一樹

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