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なぜ米空軍は中国の核兵器使用をより現実的に考えているのか?

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なぜ米空軍は中国の核兵器使用をより現実的に考えているのか?
B-21 bomber (For Illustration Purpose Only)

 2020年末、米空軍は中国の台湾侵攻を想定した戦争シミュレーションを秘密裏に行っていた。

 当想定では、敵の進行を鈍らせるために米空軍は多数の有人および無人航空機を投入した。2030年頃を想定していたため、投入された航空機の中には現在開発中の高性能ステルス爆撃機であるB-21も含まれていた。

 今回の中国の仮想侵攻において、核兵器は使われることがないまま紛争が停止した。これは良い情報であるが、実際の戦争においてはこの限りではない。米国は中国が核兵器を先に使用する可能性があると考えられている。

 この可能性は作戦の大部分が敵に気付かれないまま遂行されるとしている米空軍の計画の問題を強調している。

 もし台湾を間においた戦闘が始まった場合、米空軍は中国に対して従来の戦争形態によって対抗することを計画している。この従来の戦争形態としては、核兵器を搭載した航空機を中国側の空域に侵入させることや、空域外から巡航ミサイルを撃ち込むことが挙げられる。

 このどちらの場合であっても、中国側は接近する米国の爆撃機が搭載している兵器が核弾頭なのか通常弾頭なのかを直ちに判断するのは困難である。新しく導入されようとしている戦略警戒システムであっても、核弾頭かそうでないかは実際に領域内で弾頭が爆発するまでは判別不可能である。このため、核兵器を統制する中国の中央指揮所は弾頭の爆発まで待っているとは考えにくい。

 核兵器の保有数が米国に匹敵するロシアとは異なり、中国は抑止力としての最低限の核兵器しか持ち合わせてない。米国国防総省は中国の核弾頭保有数を200発程度だと推測する一方で、米国本土に到達可能な弾道ミサイルに搭載可能な数は130程度であるとの調査結果もある。

 どちらの推測を信じようとも、米国側は中国側の核弾頭による米国の核攻撃に対する抑止力が数的な観点から米国に劣っていると考えているため、米政府が台湾をめぐる戦いの中で中国の戦略兵器の無力化に乗り出す可能性は無視できない。

 また、米国にとって脅威となるミサイルの大半は移動式の地上発射台から放たれるため、中国側の指揮官が米国のステルス機が大陸間弾道ミサイルの発射台を追跡するとともに、米国を直接攻撃できる他の戦略兵器(核兵器を搭載できる潜水艦や爆撃機)を破壊しに来ると考えるのは合理的である。

 米空軍はB-21が多くの脅威に晒される激戦区域を打破し、リスクの高い目標を制圧できる性能をもつことを見込んでいる。この目標には、中国が保有する核兵器だけでなく、早期警戒レーダーや戦略指揮ネットワークも含まれる。

 この攻撃に対し、予想される中国側の対策としては、それらの兵器を地上で破壊される前に発射してしまうことである。中国は公的には二次大戦以降で最初の核兵器使用国になることは決してないという姿勢を貫いているが、米国国防総省は公式声明で中国が「使うか破壊されるか」の状況に陥った時、警告と共に即座に発射する体制に移行するだろうとして警戒している。

 このようなシナリオでは、台湾本土の利害関係の重要性は米国本土の核弾頭の爆心地と比べて薄れてしまう。

 それでもなお、米空軍の作戦立案者は将来的な重爆撃機隊が敵からは弾頭の区別がしにくい兵器で構成される事実に対して深く考えていないように思われる。これはセルビアやイラクでの戦いでは問題とならなかったが、長距離戦略兵器と核弾頭を保有する国家との戦いでは大いに問題がある。

 冷戦時のロシアとは違い、中国はどの軍縮協定にも加盟していない上に、米軍のB-21爆撃機は核兵器を搭載する準備が整っている。このため、危機的な状況に陥った中国の指揮官が敵の核攻撃の恐怖にとらわれてしまったとき、核兵器を先んじて使用する可能性を無視できないのである。

 当然ながら、中国が軍備拡張によって報復攻撃に使用するこれらの兵器の脆弱さを改善する可能性もある。また、米軍の例にならってほぼ全ての核兵器を潜水艦に搭載し、追跡できない水中に隠すことも考えられる。この動きは各国の首脳が抗議を続けてきたが、B-21の出現により、中国はこれら以外に対策のしようがないのである。

 実績のあるB-52戦略爆撃機でさえB-21の脅威には劣るとされ、2030年以降は長距離かつスタンドオフな核兵器が中国軍のあらゆる防御を突破するとされている。

 我々が言えることとしては、ステルス性をもつB-21とB-52がステルス巡航ミサイルを搭載したことで中国の台湾侵攻に対する効果的な抑止力となったということである。

 しかし、それでも国家間の対立が核兵器の打ち合いに発展するのを防ぐための戦いが起こってしまったとき、米国国防総省はこのような航空戦力をどのように使用するかをよく考える必要がある。

 米軍の高官は、「核兵器使用に踏み込むような恐怖を与えないようにしつつ、中国を抑止していく必要がある。」とコメントしている。
松井の所見:
 核兵器の脅威は今に始まったことではないが、兵器の長射程化および小型化、自律化に伴い、核兵器は陸海空のどの領域からも発射できるようになってしまった。抑止力としての利点と、核兵器の打ち合いという凄惨な結果を招きうる欠点が共存するのは明白な事実であるが、それと同時に、国際的な取り決め(条約等)の制限を受ける国(加盟)と受けない国(非加盟)の非対称性が浮き彫りになったのではないかと松井は考える。侵攻する可能性のある国家とそれに対処する国家の両方が核武装をしている場合、本記事で取り上げたような複雑な問題が生じることとなる。国際社会では核兵器廃絶を訴えても、現実には核兵器によってある種の均衡が保たれていることは無視するべきではないと松井は思う。核廃絶を目標にするとしても、その国家が置かれた立場によっては、手放したくても手放せないような状況にある場合もあるのではないだろうか。もしそうならば、一方的な核兵器の放棄および軍縮を迫るだけではなく、経済・資源・民族問題などのあらゆる角度から現状を慎重に考えるべきではないだろうか。

Source: Why The Air Force’s Plan For Fighting China Could Make Nuclear War More Likely - Forbes

Matsu (@mattsannENG)
原子核工学を専攻し、量子光学まで専門性を発展させる。その後、航空系防衛製品の輸入関連に従事。現在は田村装備開発(株)のミリブロ担当としてNews記事を執筆している。
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