第87回アカデミー賞視覚効果賞など数々の映画賞を受賞したSF映画「インターステラー」の監督：クリストファー・ノーラン（ Christopher Nolan ）がメガフォンを執る新作戦争映画『 Dunkirk（原題）』の撮影現場を捉えたスクープ写真が、英タブロイド紙：Daily Mail Online に掲載されている。超秘密主義で知られるノーラン監督の撮影現場がスクープされることは非常に珍しいことである。

現在撮影中の戦争映画『 Dunkirk（原題）』は、第二次世界大戦のヨーロッパ西部戦線における戦闘の一つ「ダンケルクの戦い（ Battle of Dunkirk ）」を描いた作品である。

© DR / Centre de la Mémoire Urbaine d’Agglomération –
Archives de Dunkerque / Infographie EV1 Paul Sénard

「ダンケルクの戦い」は、ドイツ軍のフランス侵攻（1940年5月24日～6月4日）によりフランスのダンケルクに孤立した約37万人のイギリス軍兵及びフランス軍などの同盟軍兵士を救出するよう英首相ウィンストン・チャーチルが命じ、イギリス船籍の軍艦・輸送船・遊覧船・ヨット・漁船・艀といったあらゆる船舶（860隻）を総動員して決行された撤退作戦（作戦名：ダイナモ作戦）であり、“史上最大の撤退作戦”として歴史に刻まれている。作戦中には、沖合いで待機する大型艦船へ小型の船で兵士をピストン輸送したなどのエピソードがある。

Photo: British troops retreat dunkerque / Wikimedia Commons

9日間で約33万人の兵士を救出したが、約1万人が戦死し約3万人のイギリス兵が捕虜となった。また、イギリス軍がフランスへ持ち込んでいた武器・兵器類は全て放棄され、200隻以上の連合国艦船が沈むなど、それらの損失は非常に大きいものであった。尚、この撤退作戦は“ダンケルクの奇跡（ Miracle of Dunkirk ）”と言われ、戦時中のイギリス国民の士気を高めたようだ。現在のイギリスでは、この作戦を語源とする“ Dunkirk spirit （意味：逆境に立ち向かう / 団結する）”という言葉が定着している。

スクープ写真には、砂浜に立つ兵士たちが人型シルエットのシートを持つ様子が収まっているが、これは砂浜で救助を待つ大勢の英兵を描写するための小道具と思われる。また、ロケ地に車両の絵を配置した写真もあり、大作とはいえ限られた予算の中で画的ボリュームを出す工夫がなされている。ノーラン監督は、フィルム撮影（ IMAX ）に拘りがありCG合成を極力使用しないことでも知られており、こういった工夫によって合成箇所を少なくする狙いがあると思われる。また、作品のディテールに深みを出すため、仏海軍のシュルクーフ級駆逐艦など幾つかの旧型艦船が使われているようだ。

映画プロデューサー・脚本家でもあるクリストファー・ノーラン監督は、2005年から公開された「バットマン」シリーズや「インセプション」などSF作品を主に手掛けているが、本作は初の歴史映画となり脚本も担当している。制作経緯は不明だが、イギリス出身ということもあり「ダンケルクの戦い」を題材にしたのではないだろうか。

出演は、アクション映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でマックスを演じたトム・ハーディ（ Tom Hardy ）、シェイクスピア俳優のケネス・ブラナー（ Kenneth Branagh ）、オスカー俳優のマーク・ライランス（ Mark Rylance ）、ゾンビ映画「28日後…」で主人公マーフィーを演じノーラン作品には過去4回出演のキリアン・マーフィー（ Cillian Murphy ）、英ボーイズ・アイドルグループ「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズ（ Harry Styles ）、など豪華な面々が顔を揃えている。尚、詳しい配役については明かされていない。

2017年7月21日にIMAXシアターなどで全米公開が決まっている。

Text: 弓削島一樹 - FM201606