元 Navy SEALs 隊員のモーガン・ラトレル（Morgan Luttrell）氏が神経科学者に転身したと、米テキサス州ダラス地区の新聞 Dallas Morning News が報じている。

モーガン氏は、映画「ローン・サバイバー (Lone Survivor) 」の原作となった回顧録「アフガン、たった一人の生還」を執筆した元 Navy SEALs 隊員：マーカス・ラトレル（Marcus Luttrell）氏の双子の弟であり、兄と同様に元 Navy SEALs 隊員である。

米サム・ヒューストン州立大学で心理学と哲学の学位を取得し、卒業後に米海軍へ入隊。2014年に除隊するまでの約14年間の内、 SEAL チームの一員としてイラクやアフガニスタンへ9回派遣されている。最終階級は中尉であった。

モーガン氏が医療研究を志す切っ掛けになったともいえる事故が、SEAL チーム在籍期間中に起きている。

2009年10月、モーガン氏が所属する SEAL チームは、米バージニアビーチ沖で海賊対策訓練を実施していた。陸軍第160特殊作戦航空連隊（通称ナイトストーカー）のブラックホークヘリから戦闘支援船へのファストロープ降下を行った際、ヘリが戦闘支援船に衝突。船上に落下したヘリは爆発炎上、ヘリコプター整備士1名が死亡しモーガン氏を含む8名が負傷する事故となった。

爆発で吹き飛ばされたモーガン氏は、脊髄損傷と重度の外傷性脳損傷を負い、約6ヶ月間の入院となった。退院後も現役を続行したモーガン氏であったが、特に脳へのダメージは深刻で鋭い頭痛とめまいに悩まされることとなる。

軍を除隊し、自身の治療の為に米テキサス大学ダラス校ブレインヘルスセンター（the Center for BrainHealth）へ通い始めた頃、PTSD（Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害）や外傷性脳損傷に苦しむ退役軍人を助けたいという思いに駆られ、それらの治療法を見つけるために認知科学の高度な学位を追求することを決意し、同センターに入所することとなった。

そしてこのほど、応用認知と神経科学の修士号を完了し、次のステップとなる認知神経科学の博士課程へ進み始めた。モーガン氏は“脳科学の知識は日々変化するものであり、博士号を取得することは SEAL になるより遥かに難しいが、最善の治療法を見つけるために挑み続ける。”と意欲を見せている。

また、モーガン氏は退役軍人を支援する慈善団体と共に「 ReBOOT 」と銘打ったキャンペーンを行っている。“Boot Campaign”のプリントもしくはタグが付けられた衣類やブーツを販売し、それらの売上金の一部を支援金とし、脳損傷 / うつ病 / PTSD などで苦しむ退役軍人の精神的・物理的支持を提供するシステムとなっている。

What is Boot Campaign?

Text: 弓削島一樹 - FM201609