ベトナムで戦死から34年後に名誉勲章。米空軍パラレスキュー隊員を描いた『The Last Full Measure』

ミリタリーブログサポートチーム

2019年11月28日 14:34

ベトナム戦争での戦死から34年後に名誉勲章を受勲した米空軍第38救助隊(38th Rescue Squadron)所属のパラレスキュー隊員ウィリアム・H・ピッツェンバーガー氏(William H. Pitsenbarger)を描いた映画『The Last Full Measure』の海外版トレーラーが、映画配給会社ロードサイド・アトラクションズ(Roadside Attractions)のYoutubeチャンネルで公開された。

ハスキーヘリコプターの前でM16を手にしたピッツェンバーガー上等兵(1965年頃)
Photo from National Museum of the U.S. Air Force
ピッツェンバーガー氏は、高校時代に陸軍特殊部隊:グリーンベレーを目指していたが両親に反対され、高校卒業後に空軍へ入隊した。基礎訓練終了後、パラレスキュー隊員の資格を取得し、カリフォルニア州ハミルトン空軍基地の救難隊に所属となった。

1965年にベトナムのビエンホア空軍基地へ派遣され、カマンH-43「ハスキー」ヘリコプターに搭乗し救難活動を行った。1966年4月11日、サイゴン近郊で交戦中の第1歩兵師団の部隊から「6名以上の負傷者あり」との救助要請を受け、2機のヘリで現場へと向かった。ベトナムに派遣されてから300以上の救難活動を経験していたピッツェンバーガー氏は、戦闘中の現場へ上空からホイスト降下し、負傷者の引き上げを行った。被弾しながらも飛行を続けた2機のヘリは、負傷者を乗せて一旦基地へと帰還した。ヘリが戻るまで現場に残ることにしたピッツェンバーガー氏は、救護を行いながら戦闘にも参加していたが、敵スナイパーの弾丸によって帰らぬ人となった。

ピッツェンバーガー氏の勇気ある一連の行動によって9名の負傷者が救助された。戦死から34年後の2000年12月8日にオハイオ州の国立アメリカ空軍博物館で、ピッツェンバーガー氏に代わって父親が名誉勲章を受け取った。それまでには、空軍十字章、エアマンズメダル、パープルハート章、エア・メダルを受勲している。

本作は、戦死から数十年経過している名誉勲章候補の「ベトナム戦争の英雄ピッツェンバーガー」について調査する国防総省職員スコット・ハフマンを主人公にして物語が描かれるようだ。監督・脚本を務めるのは、トッド・ロビンソン(Todd Robinson)。エド・ハリス主演の軍事スリラー映画「ファントム/開戦前夜」を手掛けたほか、リドリー・スコット監督作品「白い嵐」の脚本を担当している。

出演は、映画「キャプテン・アメリカ」シリーズのバッキー・バーンズ / ウィンター・ソルジャー役で知られるセバスチャン・スタン(Sebastian Stan)、サミュエル・L・ジャクソン(Samuel Leroy Jackson)、オスカー俳優のクリストファー・プラマー(Christopher Plummer)、「トップガン マーヴェリック」にも出演する名優エド・ハリス(Ed Harris)、オスカー俳優のウィリアム・ハート(William Hurt)、映画「戦火の馬」などに出演している英国若手俳優ジェレミー・アーヴァイン(Jeremy Irvine)、映画「イージー・ライダー」のピーター・フォンダ(Peter Fonda)、シンガーソングライターとしても活躍中のアリソン・スドル(Alison Sudol)など豪華な顔ぶれ。

2020年1月17日に全米公開予定。日本での公開は現在未定である。

参考動画;U.S. Air Force: Portraits in Courage - William Pitsenbarger

Text: 弓削島一樹 - FM201912
関連記事