ピンは歯で抜ける?覆いかぶさったら周りは無傷?手榴弾に関する不都合な真実

ミリタリーブログサポートチーム

2019年12月02日 17:33


Photo by USMC for Illustration Purpose Only
自動小銃を片手で乱射しながらもう片方の手は手榴弾を掴み、歯でピンを抜きつつ「1001……1002……」と数えてから投げる……ヒーローアクションではよく見かける大立ち回りであるが、果たしてこれは可能なのだろうか?

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■不都合な真実その1:遅延信管は秒単位でばらつきがある
一般的な手榴弾はピンを抜き、セイフティを兼ねたハンドルが外れると信管が叩かれ、その数秒後に爆発する。問題はこの「数秒」が3秒なのかあるいは5秒なのかは製造条件やその他の要因によってかなりバラつき、運次第のところがあるのだ。

専門家によれば「どれだけ長くても確実に爆発しないのは3秒が限界」であるという。だから敵が拾って投げ返せないよう「1001……1002……」とちょっと待ってから投げつける、というのは自殺行為に等しい。一昔前は軍のマニュアルにもそうしたテクニックが紹介されていたが、現在は推奨されていない。

そもそも撃発から爆発まではこの動画の通り、頭で考えるよりもずっと短い。拾われたくなければ思いっきり投げ込むのが正解だろう。

Chinese Army Hand Grenade Fail High Quality - YouTube

なお「空中で爆発させてバリケードの向こうにいる敵を倒したい」という向きには、スウェーデンのラインメタル社が「自分で飛び上がって空中で爆発する」という手榴弾を作っている。いつ爆発するか分からない手榴弾で根性だめしをするよりは、科学の力に頼るほうがいいだろう。
Шведская прыгающая граната AB HGr Swedish Jumping Hand Grenade AB HGr - YouTube


■不都合な真実その2:歯で抜けるレベルのピンは味方を殺してしまう
モデルにもよるが手榴弾のピンを抜くには3kgから8kgの力で思いっきり引っ張らなければならない。大型ペットボトル2本分の重さを歯で支えられる人はそう多くないだろう。

歯で抜ける程度にピンを緩めておくのは言うまでもなく危険である。ちょっと濃いブッシュの中を移動中に、リングを枝にひっかけた仲間が突然爆発するという事故が発生するのは想像に難くない。

なお、手榴弾のピンがうっかり抜けてしまったら、覆いかぶさって周囲の被害を防げばセーフ、となるかどうか。周りが無傷で済んだケースもあればそうでないこともあるし、本人が生き残ることもあれば死亡することもある。アメリカ軍の議会名誉勲章受章者の中には、激戦のさなか手榴弾の上に身を投げて味方を救ったことが受章の理由となった人が何人もいる。

手榴弾から逃げる確実な方法は丈夫な遮蔽物の後ろに隠れることだ。穴や溝に投げ込んで爆風を上にそらすのも有効で、近代的な塹壕作りでは必ずそれ用の溝を掘ることになっている。こちらの動画を見れば、溝の有効性が分かる。なお数学的には4.5メートル離れて伏せれば、爆風を避けるだけの角度を稼ぐことができるという。
Soldiers narrowly escape grenade blast while training - YouTube

兵士たちのスラングに「Bullet Magnet」というのがある。「弾をひきつける磁石」くらいの意味で、遠くからでも目立って、敵の標的になりやすいタイプの人のことを悪口半分でこう呼ぶそうだ。派手な立ち回りをする人がヒーローになるとすれば、攻撃力が高いからではなく盾になってくれるから……ということは、ひょっとしたら考えられるかもしれない。

Source: Can you actually pull a grenade pin with your teeth? - We Are The Mighty - Americas Tactical Military Entertainment Brand

Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201911
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。

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