ドイツ企業が新型の空挺装甲車の開発を開始

ミリタリーブログサポートチーム

2021年08月08日 11:54


GSD LuWa demonstrator (For Illustration Purpose Only)

 ドイツのエンジニアリング企業であるIABG社はドイツ陸軍空挺部隊向けの新型軽量装甲車の展示品を公開した。計画時の車名はGSD LuWaであり、IABG社がドイツ陸軍から開発を受注したとのことである。

 当計画では、ドイツ陸軍は空中輸送が可能なヴィーゼル空挺戦闘車(空挺部隊向けの小型装軌車両)の後継となる新しい空挺軽装甲車を要求しており、GSD LuWaの開発には様々な企業が各部品の製作に関わる予定である(下図参照)。


Vehicle components (For Illustration Purpose Only)

 これまで運用されてきたヴィーゼル空挺戦闘車シリーズは、米国レイセオン社製TOWミサイルや独国ラインメタル社製20mm砲などが搭載されていた。

 一方で、開発中のGSD LuWaの展示品(写真1枚目)は、スロベニア企業のヴァルハラ社製25mm砲または30mm砲を搭載しており、APFSDS-T弾頭(日本名:装弾筒付翼安定徹甲弾、装甲を貫くのに特化した翼付きの細長い砲弾)を含む様々な砲弾を発射できる。
 
 また、電子光学センサーも搭載しており、迅速に目標を捕捉・識別することができる。車体前部には2つの大きな防弾窓に加えて両横に小窓が設置されており、操縦者は前方180°まで視界を確保することができる。

 今回発表された展示品の写真は2021年6月22日に公開されたものであり、現状の開発状況や予定されている仕様および生産計画は不明である。
松井の所見:
 ハイテク兵器や電子戦・サイバー戦の話題が多くある現在、空挺戦車に関する話題は比較的少ないのではないだろうか。空挺戦車は輸送機に搭載され、空挺部隊(エアボーンフォース)とともに空中投下される軽量な戦闘車両である。本記事で言及されたヴィーゼル空挺戦闘車は1970年代に開発が開始され、1984年に量産が開始されて以降、30以上に渡って運用されてきた長い歴史をもつ車両である。今回の開発の背景には、世界中で歩兵戦闘車や軽装甲車などの機動力と火力を兼ね備えた車両の開発および導入が盛んになっていることと共に、輸送手段となる軍用航空機の技術発達や情報システムの革新も影響を与えているのではないだろうか。新技術を駆使した空挺戦闘車の新しい運用法が確立されてもおかしくはないと思う。
 また、従来のヴィーゼル空挺戦闘車は米国およびドイツの企業が中心となって構成部品を製造していたが、今回紹介されたGSD LuWaではスロベニア企業が砲を製造することとなっている。このように、今までは技術的に劣勢だった国々も最新兵器の開発に大きく関わる時代となっている。これについては空挺戦闘車だけに限らず、自律兵器やミサイルシステムなどでも様々な国々が競争する状況となっている。今後はできる限り様々な国と協力関係を結び、互いに情報交換することが重要となるのはほぼ自明ではないだろうか。しかしながら、他国との情報交換にはスパイや買収などによる情報漏洩のリスクもある。これを防ぐための法整備や意識改革は、今すぐにでも必要なのではないだろうか。

出典:アーミー・レコグニション「Germany launches the development of new airborne tracked armored vehicle」


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Matsu (@mattsannENG)
原子核工学を専攻し、量子光学まで専門性を発展させる。その後、航空系防衛製品の輸入関連に従事。現在は田村装備開発(株)のミリブロ担当としてNews記事を執筆している。
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