リビアでAIドローンによる世界初の殺人が行われていた可能性が浮上

ミリタリーブログサポートチーム

2021年06月23日 11:45


Kargu attack drone (For Illustration Purpose Only)

 昨年(2020年)3月、リビアにて人工知能(AI: Artificial Intelligence)を搭載した自律型ドローンが人間のコントロールを受けずに世界初の殺人を行っていた可能性が浮上した。本件は2021年3月に発表された国際連合の報告によって明らかとなった。

 使用されたドローンはトルコの軍事企業であるSTM社で製造されたKargu-2であるとされている。このドローンは兵士や車列などの目標を追跡し、遠方から接近してきたのとのことである。誰がこれらの殺人ドローンを展開したのかは定かではないが、現場で発見された残骸から殺人ドローンによる攻撃の可能性が明らかとなった。

 テロ対策の専門家は「自律型兵器の概念そのものは特に新しくない。古くから使用されてきた地雷もまたシンプルな自律型兵器である。しかし、現在はそれが飛行する時代となっている。」と述べている。加えて、兵器技術の専門家は「自律型兵器にAIを統合したことが新しいことなのだ。」と補足している。

 今回使用された可能性のあるKargus-2は4つの回転翼によって飛行するクアッドコプターと呼ばれる型である。搭載されたAIは目標を補足した後、最高速度72 km/hの自律飛行によって接近し、徹甲弾頭または対人弾頭を起爆することで目標を殺傷・破壊する。また、人間のオペレーターとの通信が途絶えた後も攻撃を続行するようにプロクラムされているとのことだが、国連の報告にはこの機能が使用されたかどうか明示されていない。


 このような自律型兵器のリスク分析においては、下記の9点が重要な要素とされている。
・どのように攻撃対象を決定しているのか?
・攻撃における人間の役割は何か?
・搭載可能な武装は何か?
・照準には何を使用するのか?
・攻撃に使用される機体の数は?
・どこで使用されるのか?
・試験はどれだけ入念に行われたか?
・攻撃目標をどのように認識させるのか?
・入手難度はどれくらいか?

 専門家によれば、「リスク要素(上記9点)の中でも攻撃に使用する機体数が最も重要であり、今後の自律型兵器は群れ(スウォームと呼ばれる)で攻撃する可能性が高くなっている。殺人が可能な自律型兵器の群れは大量破壊兵器に発展する危険がある。」とのことである。

 これらのことから、リビアで起こった本件はほんの始まりに過ぎず、今後の戦闘で使用実績(所謂、バトルプルーフ)を積み重ねた自律型兵器が世界中に急速に普及してしまう可能性があると考えられている。本件は今後のリスク管理および安全保障において非常に重要な事実である。
松井の所見:
 自律型致死兵器システム(LAWS: Lethal Autonomous Weapons Systems)の脅威が世界中で言及されて久しいが、国連の公式報告で当兵器が使用され、殺人(または作戦目標)を達成した可能性が明記されたことは初めてである。しかし、本当に今回が初めてなのだろうか?本件では残骸の発見によって明らかになったが、これ以前に他国が当兵器を使用して殺人を行った可能性は十分ある。ドローン型だけでなく、戦車型の自律兵器の投入実績も数年前から発表されているため、公式報告以外にもAIまたはロボットによる殺人が行われていてもおかしくはない。“トルコの企業”が製造した兵器が“リビアで”使用された本件だが、もし“厳格かつ徹底的な情報統制が可能な国”が提供した兵器が使用された場合、本件のように報告されるのだろうか?

Source:
AI drone may have 'hunted down' and killed soldiers in Libya with no human input - Live Science
Security Council S/2021/229 - United Nations
What Is Artificial Intelligence? - Live Science


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Matsu (@mattsannENG)
原子核工学を専攻し、量子光学まで専門性を発展させる。その後、航空系防衛製品の輸入関連に従事。現在は田村装備開発(株)のミリブロ担当としてNews記事を執筆している。
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