米軍特殊部隊が強力なサイバーサポートを獲得

ミリタリーブログサポートチーム

2021年07月03日 16:23


Small-unit teams on patrol (For Illustration Purpose Only)

 米軍特殊部隊は戦闘地域でのサイバー攻撃に対して新しい対抗策を導入した。この戦術暗号受信装置(TKL: Tactical Key Loader)は、特殊作戦における重要な司令を安全かつ迅速に伝達し、緊急時の統率を維持するための通信装置である。

 この装置は少人数チームでの作戦を想定して開発されており、安全な通信が最重要視される特殊作戦においてTKLは特殊部隊員に高度に暗号化された秘匿性の高い作戦情報(任務内容・目標など)を送ることができる。

 TKLは米陸軍で使用されてきた簡易暗号通信装置(SKL: Simple Key Loader)をより小さく、より高速な通信ができるように改良したものである。夜間作戦中でも目立たないよう画面の照度が低く設定されており、一般部隊では特に必要とされないような機能が備わっている。従来の無線通信とは異なり、通信の傍受だけでなく軍のデータセンターへの侵入(所謂、サイバー攻撃)にも強いため、秘密裏に作戦を実行する特殊部隊はTKLを用いることで敵に見つかることなく安全に情報交換をすることができる。

 実際にTKLを使用した特殊部隊員は「小規模部隊での作戦に適しており、40時間以上の持続時間をもつバッテリーに加え、一刻を争う事態にも対応可能な高速通信が可能であり、特殊作戦に対応できるように性能が改善されている。」と評価している。


U.S. Army Special Operations Command Headquarters (For Illustration Purpose Only)


 また、TKLそのものはシンプルな構造であり、使用者はボタンを押すか暗号を入力するだけでよいので使いやすい。通信ケーブル等の周辺機器は一切必要ないため、本体機器をそのまま他の装備に装着することが可能である。

 TKLは40種類の戦術暗号と80種類の戦略暗号を導入しており、今後は1万種類以上の暗号を記憶できる次世代中型暗号通信装置(NGLD-M: Next Generation Load Device-Medium)と併用して更に複雑な暗号体系に対応する方針である。
松井の所見:
 情報がより一層高い軍事的価値をもつようになった現代において、サイバー分野における通信の妨害・傍受およびデータの争奪戦が作戦に多大な影響をもたらすこととなった。特に、2018年2月にアフガニスタンで行われた米陸軍特殊部隊による重要目標の保護作戦では、すでに本記事で紹介されたTKLが特殊部隊の迅速な指揮統率に貢献したようである。普段の通信網の他にも強固なネットワークを構築することによって特殊部隊の作戦支援を行うこのような動きは、米軍だけでなく、各国の軍(特に特殊部隊)が既に何らかの形で準備を整えていても全くおかしくないと私は思う。専守防衛を貫く日本の自衛隊はこのような安全かつ高速な次世代の通信網が特に必要なのではないだろうか。

Source: US Special Forces get TKL powerful cyber support device - Army Recognition


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Matsu (@mattsannENG)
原子核工学を専攻し、量子光学まで専門性を発展させる。その後、航空系防衛製品の輸入関連に従事。現在は田村装備開発(株)のミリブロ担当としてNews記事を執筆している。
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