防衛省は12月29日、北朝鮮や中国を中心とした緊迫の東アジア情勢における監視強化を行うため、無人偵察機の導入に関する本格的な検討を2011年度より実施する方針を決めたことが明らかになった。
Photo: U.S. Air Force Senior Airman Nichelle Anderson
防衛省のグローバルホーク導入検討に先駆け、2010年9月20日、米軍ではグアムにあるアンダーセン空軍基地で一足先となるグローバル・ホーク RQ-4B-30のお披露目セレモニーが催された。
昨年夏、米軍は膨大に抱える財政赤字の大幅削減を行うべく、軍事費の切り詰め作業の着手を本格的に行っており、ゲイツ国防長官自ら指示を出している。細かい内容までは明らかにされていないものの、国防総省から発表されている内容を確認すると、その方針は明確なものとなっている。昨年夏の時点で米軍のその方針としては、極東アジアにおける常駐する地上戦闘部隊の大幅削減を実施する一方で、空軍戦力をグアム、アラスカ、ハワイへ引き下げるといった内容となる。その一方で米軍は、海軍戦力の半分以上を西太平洋へ送り込む方針が発表されている。
グアムにある米空軍アンダーセン基地には、グローバル・ホーク無人偵察機3機を配備。そしてその他の航空戦力として、戦闘機を48機、空中給油機が12機、爆撃機6機の展開構想が行われていた。
今回アンダーセン基地に1機目のグローバルホークが配備されたのはこうした背景からのものとなる。
60,000ft以上の高高度を30時間以上に渡って飛行し、高い精度で監視の出来るシステムを兼ね揃えているグローバルホークは、米軍が新たに掲げている「エアシー・バトル」構想においても不可欠な存在となっているとされている。核保有国を中心とした近年の軍事戦略においては、中長距離の弾道ミサイルによる新たな脅威の進行が問題となっている。そうした問題を緩衝するに当たっても、ハイレベルな偵察・監視体制の強化を行うこうした空からの情報戦略での支援は、有効なアドバンテージ(優位)となっている。
グローバルホークにはブロック10、20、30といった世代があり、今回グアムに配備されたグローバルホークは現在配備中の中では最新型のASIP(Airborne Signals Intelligence Program)を装備した「ブロック30」と呼ばれるタイプとなる。
なお、開発元のノースロップ・グラマン社は昨年末の発表で、米空軍へ今後RQ-4B「ブロック40」用のMR-RTIP(Multi-Platform Radar Technology Insertion Program)レーダーの納入を行っているとされている。このMR-RTIPについては同社サイトの「RQ-4 Global Hawk Domestic Programs News Clips」というタイトルのpdfに詳細が掲載されており、天候や昼夜、速度といった環境の変化に関係なく複数のターゲットに対して捕捉できるとして紹介されている。
24時間、365日で日本全域の監視体制を想定した場合、最低ユニットとして割り出されたのが3機体制での導入だ。機体本体1機あたり約25億円といわれるグローバルホークも、ゆくゆくの運用ではコスト削減につながると目されている。自衛隊としてもこれだけ大規模な無人機システムの導入は初めてとなるため、今回を機に今後の人件費削減へ繋げかねられない懸念があるのもまた見逃せないところである。
現在のところ日本国内でグローバルホークのような大型無人機の運用を想定した場合、現実的には硫黄島が最適であると目されている。
また、韓国でもグローバルホークを1ユニット(3機または4機)の導入が検討されており、これが実現すれば、東アジアにおける監視体制強化において、米軍のグアム島、自衛隊の硫黄島、韓国軍による朝鮮半島の三角地帯が形成されることになる。米軍主導により日米韓の情報共有ネットワークの構築が進む可能性も秘めている。
無人機の導入により、偵察要員の削減といった現実的な問題を抱える一方で、日本を取り囲む地政学的にも急を要する国防を考慮した上での英断が求められる。
参考記事:
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101229-OYT1T00786.htm
http://www.northropgrumman.com/supportglobalhawk/pdfs/GH_Domestic_NewsClips.pdf
http://www.globalsecurity.org/intell/library/news/2010/intell-100719-northrop-grumman01.htm
http://www.airforce-technology.com/projects/global/
http://www.af.mil/news/story.asp?id=123226160
http://sankei.jp.msn.com/world/america/101006/amr1010062215011-n1.htm