米軍再編発表=中東・アフガンからアジア、サイバー戦争を重視へ
米国は自国の国益を追求すべく、2010年に打ち立てたQDR(Quadrennial Defense Review :4年に一度の国防計画見直し)における国防軍事戦略の方針見直しを発表した。今回発表された米国の国家軍事戦略においては、これからの新たな時代に適応するため、米国の軍事指導的立場を再定義することを強調している。
レポートでは、世界の人口動向において、人口増加が加速化し、都市部での集中について言及をおこなっており、世界的規模でみた場合に、2025年までに都市部で新たに10億人以上の居住者が生まれるとしている。人口増加が著しい発展途上国を尻目に、ヨーロッパとアジアの一部においては、長期的に人口の減少が予測されている。また、中東やアフリカ、中央アジアの南部については、人口の増加や都市化が進む中で、水不足に対する問題解決や、地域の統治について米国の干渉を示唆している。
そして米国自身の繁栄と安全保障についての項目では、米国は経済的にも軍事的にも更なるパワーをみせつけることを述べ、近い将来における国家安全保障に対する重大なリスクの担保とすることを述べている。
尖閣諸島での中国による暴挙や、ならずもの国家の北朝鮮の動向など、急速に不穏な動きが活発化し、日本にとっても気になるアジア情勢について同報告書では、アジアが世界の富をシェアする割合が更に増えるだろうとしており、この地域における米国の軍事的プレゼンス(存在意義)を強調したい意向が読み取れる。
中でも中国の数十年にわたる経済成長については、中国が継続的に軍事力の近代化を図ってきたことで、その地政学的な領域を超えて、利益の拡大を容易にすることが述べられている。中国のみならずアジア全体での安全保障に関しては、各国の防衛費が圧迫される中でも依然としてNATO(北大西洋条約機構)がその強力な軍事同盟基盤として存続を図ることになるとしている。
また、米国によるグローバルな視点での軍事展開を見据えた場合、世界の共有スペースである宇宙やサイバー空間での活動を重視することを明言していることが特徴的である。
中でもインターネット・セキュリティーの項目が単独で軍事戦略として掲げられ、「サイバー戦争」の本格的突入を意味しているとし、世界各国でも大きく取り上げられている。こうした米国のサイバー戦略への大きなシフトは、とりわけアフリカや中東などの地域における、非国家体(非対称)での新たな軍事的脅威の高まりとして懸念していることがあらわれている。
今回米国防総省が新たに発表したこの「国家軍事戦略」のレポートでは、米国が引き続きテロとの戦いをおこない、米国やその同盟国に対する如何なる武力侵略も許さないとする一方で、従来の軍事的な重要地域であったイラクなどの中東地域や、アフガニスタンといった米国が直接的に軍事侵攻をおこなった地域から、アジア・太平洋地域や宇宙、サイバースペースでの軍事・防衛システムの確立へと、戦争の姿や拠点の移り変わりが明確になったことがこれまでとは異なる大きな変更点となる。
参考記事:
http://www.jcs.mil/content/files/2011-02/020811084800_2011_NMS_-_08_FEB_2011.pdf
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=49193&type=0
関連記事