「陸軍の次期ピストル・アップグレードの取り組みは「ミスファイア」だ」米有力議員が痛烈に批判
ピストルアップグレードの取り組みにおける陸軍の「不発」は、複雑な要件と共に銃器メーカーに混乱をきたしている。
上院軍事委員会で委員長を務めるジョン・マケイン (John McCain) 議員が、陸軍の次期ピストル「モジュラー・ハンドガン・システム (MHS) 」選定の作業について「実に無駄が多い」とし、痛烈に批判したレポート「America’s Most Wasted: Army’s Costly Misfire」を発出。その中でマケイン議員は「現在の計画を廃止し、既製品の見直しをすべし」と異議を唱えている。
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マケイン議員と言えば、偉大な海軍提督の祖父・父を持ち、自身もベトナム戦争の従軍時に捕虜となり、拷問を受けながらも生還した「米国の英雄」。熱血漢でも知られ、F-35 計画の遅延とコスト増が繰り返された一件について「結局のところ守られたのはロッキード・マーチン社の利益率が 7% だ」と唾棄した共和党の重鎮議員。
しかし、マケイン議員の発言については陸軍も黙っておらず、広報官のジェシー・スタルダー (Jesse Stalder) 中佐がこれに対し、「民間市場に陸軍が求めるような内部安全機構、耐海水性、極端な温度環境下での生存性、防水性の弾薬などは存在し得ない」と反論している。
1985 年、それまで主力だった 45 口径の 1911 ピストルから 9 ミリ口径の M9 へリプレイスがおこなわれた。それから 30 年経ち、MHS における 1 つの大きな取り組みとしては、より強力な弾薬の採用にある。より強力なピストル弾薬の選定がおこなわれた場合、少なくとも 3 億 5,000 万ドル以上のコストが計上される。
また、海軍分析センター (CNA: the Center of Naval Analyses) がおこなった戦場調査によると、回答を寄せた 46% の兵士が M9 ピストルに対して「機能不良」や「手が掛かる」を理由に不満を述べている。25% が銃撃戦の最中に「作動停止」や「ジャム」を経験しているという実態が浮かび上がっている。
マケイン議員曰く「陸軍による新型ハンドガンの購入計画については既に 10 年を費やしているが何も生み出しておらず、単に 350 ページもの膨大な要求資料だけが残ったに過ぎない」。「過剰な事務処理が発生したことにより、1 挺につき 50 ドルものコストが追加されており、1,500 万ドル (約 18 億円) もの予算が無駄になっている」とも指摘している。
陸軍では最終的な RFP の発出を前に、過去 16 ヶ月を掛けて大規模な市場調査と業界からのフィードバックといった情報収集作業をおこなっている。
コンペの勝者には 1 年以内に、フルサイズピストル月産 6,300 挺とコンパクトピストル月産 3,000 挺がもたらされる。また 3 年毎に 280 万ドル分の弾丸、160 万ドル分の特殊目的弾薬 (special purpose ammunition) を一定比率で増やすともしている。なお、単一の事業者からピストル本体と弾丸の供給契約をおこなった場合、契約は 12 億ドルほどの金額となる。フルサイズは 280,000 挺、コンパクト版は 7,000 挺の購入が計画されている他、陸軍以外の軍機関から 212,000 挺の追加発注の可能性もある。
Military.com 2015/10/31
Washington Times 2015/10/28
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