アメリカ海軍が注目する魚のカモフラージュ術
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「魔法の透明マント」は本当に存在するのか?そんな疑問をアメリカ海軍が解明しようとしている。海軍とテキサス大学オースティン校の研究によると、アジ科の2種類の魚が、うろこに光を反射させる何かを持っていて、光の当たり方により、天敵の目から逃れているらしい。
現在、その魔法のマントを持つと思われている魚は、アカアジとイトヒキアカアジである。海軍は、この研究に資金を投入し、これらの魚がどのように隠れているか、そしてこの原理が海軍で活用できないか考えている。研究は、2種類の魚に絞って行われているものの、この2種類以外にも、白ウルワ、コクチマス・トレバリー、クサヤモロ、ツムブリなども研究対象とされている。
テキサス大学の研究によると、これらのアジ科の魚は、うろこに光の波を偏光させる何かを持っているという。同大学の研究者は、うろこに表面にあるとされるグアニン小板(guanine platelets)の微細な要素を研究している。この研究はまだ始まったばかりであり、同大学のパリッシュ・ブラディ教授によると、「いつ、どのようにこの研究の成果が現れるか、まったく予想もつきません」。
アジ科の魚は、水面下で光を反射させて、サメなどの天敵から逃れているようである。広い海では、サメから身を隠す場所など全くないため、この方法は非常なアドバンテージである。光の中に隠れるということは、常にうまくゆくとはかぎらないが、生存性を高めることができる。つまり、より長く生き、繁殖の機会を増やすことができるのである。これを海軍の艦艇に当てはめれば、艦艇の生存性を高めることになるだろう。
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一方で、レーダーやスパイ衛星に対するカモフラージュ・隠匿技術は、ステルス技術としてかなり進んでいるものの、肉眼による捕捉を阻止する方法は、未だに手がかりすらない。意外に思われるかもしれないが、科学技術が進んで現代であっても、目視による情報ほど、正確なものはない。
例えば、海軍基地のある町にスパイを配置し、毎日、艦艇の数と種類、艦船番号を調べさせる。1つの情報だけでは意味をなさないが、複数個所で長期間にわたって行われて情報が統合されると、艦隊の配備状況やローテーション周期などが判明してしまう。これは、海軍にとって非常に重要な情報でありながら完全に秘匿できない。もし、艦艇を「透明」にできれば、どんなにいいことだろう。
アカアジとイトヒキアジが研究対象に選ばれたのは、うろこが鏡のように銀色で、平坦であるため、色をよく反射し、鋭角で見ると隠れることが容易であるためである。
「この仕組みを解明することができれば、環境に即したカモフラージュ技術が進歩するでしょう」。自然科学大学の統合生物学の教授であるモリー・カミングズは語る。
「我々は、魚を固定してビデオを使って測定しています」。カミングスは語る。魚は、ビデオ撮影されているときに、鏡に対面して固定される。魚を固定しているプラットホームは、旋光計が記録する際に、3分間で1周するようになっている。
頭の先から尾まで1500以上もの角度が測定され、これらの魚のうろこは、環境によって鏡よりもよく反射し、発見されずらいことを解明した。
研究は始まったばかりだが、この技術が完成すれば、究極のステルス艦が誕生することになる。
Science Journal 2015/11/20
Pys.org 2015/11/19
Washington Post 2015/11/19
Text: 友清仁 - FM201512
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