米軍における認識票「ドッグタグ (Dog tag) 」の簡単な歴史

ミリタリーブログサポートチーム

2016年02月04日 13:36


DoD photo by Marvin Lynchard
米退役軍人及び軍事関連の情報を扱ったニュースサイト:Task & Purpose に掲載された記事で、ドッグタグ( Dog tag )の簡単な歴史を紹介している。ドッグタグは、戦争をテーマとした映像作品の出撃シーンや殉死シーンを演出する小道具として登場する機会も多く、軍に所属する兵士の個人識票として広く認知されているが、南北戦争まで遡るその歴史についてはあまり知られていない。


Portrait of Maj. Gen. George G. Meade, officer of the Federal Army
記事には ――

南北戦争のさなか、戦場での死傷者識別が困難だった軍(※南北戦争での不明者扱いは42%に上る)は、その識別方法の必要性に迫られ、1863年バージニア州北部で行われたマイン・ランの戦い( the Battle of Mine Run )で、ジョージ・ミード将軍率いる部隊の兵士に、氏名とユニット名を書き記したペーパータグを衣類に固定するように指示した。その他の一部の兵士は、木片の片側に穴をあけて首から下げられるようにした識別タグを身に着けるようにした。
その後、軍は様々なオプションを試していたがその場しのぎのモノが多かったため、1906年に円形のアルミディスクを導入し、1913年に軍によって着用が義務化された。


Pair of US Army identification tags or "dog tags" from World War I
第一次世界大戦では、氏名・階級・シリアル番号・ユニット・宗教がスタンプされた円形タグが採用され、兵士はそれを二つ着用していた。ひとつは首に、もうひとつは足首や足周りに括り付けていたようだ。


State Dept Image (USDC collections)
第二次世界大戦の頃には、円形タグから現在使用されている楕円形タグに変更され、その形が犬用の鑑札に似ていることから「ドッグタグ」と呼ばれるようになる。この時代の識別タグの片側には長方形の窪み(ノッチ)が有り、その窪み部分について悪い噂が広がったことがある。それは、遺体の気体膨満を防ぐために識別タグを口に咥えさせ、前歯の間に固定する際に用いる窪みであるという噂であった。しかし実際は、刻印機がエンボス加工をする際に必要な固定用の形状であった。尚、現在使用されているタグは、窪みの無いデザインとなっている。(※自衛隊のタグの片端には窪みがあり、後述にもあるが「死者の歯をこじあける場合に使用する」と公式の“認識票に関する達”で記されている)

―― と、米軍需品財団 / US Army Quartermaster Foundation の資料を基にドッグタグの歴史を解説している。

Photo Credit: Daniela Vestal, U.S. Army Human Resources Command
現在米軍で使用されているドッグタグは二枚一組の二枚式(同じ内容の打刻)で、戦死の際に一枚を回収して戦死報告用に使い、もう一方の小径鎖で繋がれたタグは、検視官が見易いようにつま先に括る用となっているようだ。遺体回収から埋葬までの全ての過程で、犠牲者の傍らからタグが引き離されることはない。また、遺体回収時に一枚しか発見されなかった場合は、情報内容が同じタグが複製され、タグが見つからず身元確認が不可能な場合は、“正体不明”と打刻された二枚のタグが作られる。


Image: via Pacific Northwest National Laboratory
現在テストされているタグには、兵士の医療情報(歯科データも含む)を入力したマイクロチップが埋め込まれているようだ。また、最近ではドッグタグから IDタグ(ID tag)へと呼称が変わりつつある。


認識票の制式 / 防衛省・自衛隊
(1) 厚さは0.5ミリメートルとする。
(2) 鎖の長さは65センチメートル及び15センチメートルとする。
(3) 図の※印の箇所は、死者の歯をこじあける場合に使用する。
ドッグタグには世界統一規格が無いため、各国の軍によって形状、素材、情報内容が異なっており、一枚を二つ折りにして二枚に切り離すタイプなども存在する。尚、米軍では陸軍、海軍、空軍、海兵隊によって情報内容のフォーマットが微妙に異なっており、海兵隊のタグには使用するガスマスクのサイズが打刻されている。ちなみに、自衛隊は二枚式のステンレススチール製のタグを採用しておりレーザー刻印が施されている。

Task & Purpose 2016/01/15
Text: 弓削島一樹 - FM201602
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