ヘリンボーン (herringbone) 構造を解明、シャコ類の捕脚に倣う次世代アーマーに向けた超強力素材

ミリタリーブログサポートチーム

2016年06月01日 19:10


Photo credit: University of California Riverside (UCR)
カリフォルニア大学リバーサイド校とインディアナ州のパデュー大学の研究チームによる、シャコ類 (mantis shrimp) の「捕脚 (ほきゃく) 」に倣った、軽量で超強力な複合材料を使った次世代アーマー向け素材の開発が進められている。

軽量で硬いシャコ類の捕脚に目を付けた研究については 2012 年 6 月に既報の通り、米空軍の研究部門である AFSOR (Air Force Office of Scientific Research) が、カリフォルニア大学の研究チームに対して 60万ドル (約 4,740万円) の研究開発費用を計上しており、最前線で活躍する兵士が、敵からの攻撃や、IED による爆風から身を防ぐ際の素材として開発を進めたい考えを示している。研究成果は、ヘルメットやハンヴィー、ヘリコプター、ドローン、車載ターレットのシールドなど様々に活用できることが見込まれている。(AFSOR の研究助成金は現在 750 万ドル (=約 8 億 2,500 万円) に拡大している模様)

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浅い海のサンゴ礁や砂底に穴を掘って生息するシャコ類は肉食性の強い獰猛なハンターとしても知られる。獲物を仕留めるに当たって最大の武器となるのが、体の前の方に備わった捕脚と呼ばれる脚。ヒトの肘打ちに似た強烈なパンチを繰り出すことができる。

この捕脚の秘密のカギを握るのが、V 字形や長方形を縦横とし連続して組合せたユニークな「ヘリンボーン構造 (herringbone structure) 」にある。1,000 分の 3 秒とも言われる、目にも止まらぬ超高速のパンチを繰り出することで、硬い殻を持つ貝や他の甲殻類の甲羅ですらも粉砕するほどの威力を持つ。パンチの威力は 60kg と極めて強力で、ヒトに置き換えると 1t のパンチを繰り出しているのに相当すると言われている。


Photo credit: University of California Riverside (UCR)
A prototype helmet inspired by the mantis shrimp dactyl club. The helmet’s interior was inspired by the club’s ‘periodic region,’ while the stiff outer coating is based on the newly-discovered ‘impact region.’
研究の中で、シャコ類の捕脚の外層にはヘリボーン構造を持つことが分かっており、秀逸な耐衝撃構造の特性が確認されている。両大学の研究チームでは、ヘリボーン構造の有用性をテストし、初めてのコンピューターモデルと 3D プリント版モデルを製作。以前の試作モデル以上に物理的ストレスやヒビ割れに対する耐性を持つことが確認され、夢の製品実現にまた一歩前進している。
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