米陸軍、クモの遺伝子を取り入れた「蚕の糸」を使った次世代ボディーアーマーを試験

ミリタリーブログサポートチーム

2016年07月13日 12:44


Photo Credit: Staff Sgt. Kai L. Jensen, 76th Operational Response Command
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米陸軍で兵士の防護関連や個人装備の開発を進めている PM-SPIE (Project Manager Soldier Protection and Individual Equipment) は、クモの DNA を取り入れた蚕の糸を使ったボディーアーマーの開発について、ミシガン州アナーバーのクライグ・バイオクラフト・ラボラトリーズ社 (Kraig Biocraft Laboratories, Inc.) との間で契約を交わした。

今回の契約におけるその額は 1 万ドル (=約 104 万円) に過ぎないが、国内各メディアによれば「もしペンタゴンが気に入るようなことになれば、一気に 100 万ドル (=約 1 億円) 規模の契約に膨らむかもしれない」として報じている。


Photo: via Wikimedia Commons
クモが獲物を捕獲するときや危険を察知して退避するときなどに吐き出す糸は「強く」「伸びる」性質を持ち合わせており、自然界の中で最も強靭な素材の 1 つとして広く知られている。一方、肉食のクモは縄張り意識が強く、共食いする習性があることから大量生産に向いておらず、生産効率を追求した費用対効果の高い「クモファーム」を形成することは極めて困難であるとも考えられている。

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この問題に対処するために、クライグ・バイオクラフト社は、10 年以上に渡ってカイコに遺伝子操作する方法を試みていた。その結果、生産効率が高く、強靭なクモ糸シルク「ドラゴン・シルク (Dragon Silk) 」の生産に成功している。ドラゴン・シルクは外科手術のシーンなど様々な分野で使用。多くの手術で使われる縫合用の糸は、生分解性のカイコ絹 (silkworm silk) で間に合わせているが、強度の増したドラゴン・シルクを、眼や脳といった、慎重な取り扱いが求められる部位での外科手術の際に有効であるとして利用されている。

カイコにクモの DNA を挿入することで、防弾素材として従来使われてきたケブラーよりも遥かに「柔軟」なファブリックを得ることが出来る。その一方で、クレイグ社で COO (Chief Operating Officer, 最高執行責任者) を務めるジョン・ライス (Jon Rice) 氏によると「クモの糸は弾力性 (elasticity) の面では遥かに優位性を持つものの、ケブラーほど強靭では無い。そして、そのために近い将来の中でその製品がリプレイスされるような事態になることも無いだろう」ともしている。
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