カナダ軍特殊部隊JTF-2スナイパーが、3,450メートルの狙撃を成功。世界最長距離の公認狙撃記録を大幅更新

ミリタリーブログサポートチーム

2017年06月22日 13:27


Photo from JTF-2, National Defense and the Canadian Armed Forces
カナダ軍の特殊部隊に所属するスナイパーが先月、派兵先のイラクでダーイシュ(Daesh, IS, ISIS, ISIL)戦闘員を相手に、これまでの記録を大きく上回る「3,450メートル」の世界最長距離での公認殺害記録(world record for the longest confirmed kill shot)を打ち立てていたことが分かった。カナダ最大の全国英字紙である「グローブ・アンド・メール」が21日付で報じている。
長距離狙撃の新たな世界記録保持者となるのは、カナダ国防軍最精鋭の対テロ特殊部隊「第2統合任務部隊(JTF-2: Joint Task Force 2)」に所属するスナイパー。身の安全を確保する為にもその素性は明かされていない。


Photo from McMillan Firearms Manufacturing
このJTF2スナイパーは、カナダ軍に「C15」として採用されている「マクミラン(McMillan)TAC-50」スナイパーライフルを使っており、高所からの「撃ち下ろし」であったことが伝えられている。これだけの超長距離ともなると、風速は勿論のこと、気圧や湿度、コリオリの力などの要素も合致しなければならない。

参考資料として、東京スカイツリーを中心に、直線距離で半径3,450メートルの円を描いてみた。西側を見れば、上野動物園がすっぽりとその射程圏内に収めていることが分かる。

米国アリゾナ州フェニックスに本社を置くマックミラン・ファイアアームズ・マニュファクチャリング社(McMillan Firearms Manufacturing, LLC)が手掛けたTAC-50は、強力な12.7x99mm NATO弾を使用するボルトアクション式のスナイパーライフル。その有効射程距離は1,800メートルとされており、今回の戦史を塗り替える大記録は、その2倍近い距離で仕留めたことになる。遥か彼方のターゲット目掛けて放たれた弾は、10秒足らずの飛翔を経て着弾したとのこと。その様子はカメラでも撮影されているようだ。


Screen shot from Naval Sea Systems Command (NAVSEA)
なお、TAC-50は米軍特殊作戦司令部(USSOCOM: United States Special Operations Command)隷下の部隊に「Mk15 Mod 0」として支給されている。イラク、アフガニスタンに派兵されていた海軍EODチームや、海軍特殊部隊SEALチームでの運用が確認されている。

これまでの記録は、英軍スナイパーのクレイグ・ハリソン(Craig Harrison)王室付騎兵隊軍曹(CoH: Corporal of Horse)が持っていた。2009年12月、ハリソン軍曹はアフガニスタン南部のヘルマンド州でタリバン相手に、国産アキュラシ―・インターナショナル(AI: Accuracy International)社製.338 ラプア・マグナム仕様のボルトアクション式狙撃銃(AWM: Arctic Warfare Magnum)「L115A3」を使って2,475メートルの狙撃を成功させている。


Infographic: Longest recorded sniper kills / Military Blog Japan
歴代の公認長距離狙撃記録を振り返ってみると、今回の事例を含め実に世界トップ5の内3つがカナダ軍所属のスナイパーによる実績となっている。上位5名の記録をグラフで見比べると、今回の記録が如何に抜き出た長距離であったかが良く分かる。

このことについてグローブ・アンド・メールは、軍隊組織での規模こそ西側諸国の中では米国や英国に及ばないものの、カナダはこと「スナイパー」においては「質が高い」という評判を裏付けているとして紹介している。


Photo from JTF2
1993年4月1日創設のJTF2は、王立カナダ国家憲兵(RCMP: Royal Canadian Mounted Police)から独立した国防軍隷下にあるカウンターテロ作戦の専門部隊。2001年9月11日に起きた米国同時多発テロ事件を機に、国際的な枠組みの中でおこなわれた特殊作戦にも参加。翌年11月にはJTF2初の海外派兵を完遂している。
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