ミンダナオ島マラウィでダーイシュ(IS)掃討作戦をおこなうフィリピン軍特殊部隊の映像

ミリタリーブログサポートチーム

2017年07月07日 15:12

国際報道チャンネルの Vice News がフィリピン軍に同行取材を行い、フィリピン・ミンダナオ島マラウィ市で展開中のダーイシュ(Daesh, IS, Islamic State, ISIS, ISIL)掃討作戦の様子を配信した。動画には、敵スナイパーの狙撃を搔い潜りながら索敵などを行うフィリピン陸軍特殊部隊や、ダーイシュが潜伏する市内に向け迫撃砲攻撃を行うフィリピン海兵隊の様子などが映し出される。

動画冒頭の特殊部隊は、フィリピン陸軍 特殊作戦軍のライトリアクション連隊(レポーターを先導するAirframeヘルメットを装着した隊員の部隊)を中心とした混成部隊と思われるが、個々の身のこなしや連携の取れた動きなどから練度と経験値の高さが伺える。
フィリピン陸軍 特殊作戦司令部(SOCOM, PA / Special Operations Command (Philippines))の指揮下には、三つの特殊部隊が存在する。
●スカウトレンジャー連隊(Scout Ranger Regiment):
米陸軍第 75 レンジャー連隊を手本に 1950 年設立。ジャングル戦、ゲリラ戦を得意とする。

●特殊部隊連隊(Special Forces Regiment (Airborne)):
グリーンベレーを手本に 1962 年設立。グリーンベレーと共同訓練を行う機会が多い。

●ライトリアクション連隊(LRR:Light Reaction Regiment):
「フィリピン軍のデルタフォース」と呼ばれるカウンターテロ専門部隊。2004 年に前身となる LRC(Light Reaction Company)を発足。隊員はスカウトレンジャー連隊と特殊部隊連隊から選抜される。

海軍には「フィリピン軍のネイビーシールズ」と呼ばれる海軍特殊作戦グループ(Naval Special Operations Group :NAVSOG)、海兵隊にはフィリピン海兵隊武装偵察連隊 (フォース・リーコン / Philippine Marine Corps Force Recon Battalion)、空軍には第 710 特殊作戦団(710th Special Operations Wing)、などが編成されており、それぞれが米軍の部隊と深い関りを持ち、実戦経験は豊富にある。

フィリピンは以前より国内の過激派組織や反政府組織と内戦状態にあったが、2017 年になりそれらの組織がダーイシュに呼応する動きを活発化させた。5 月 23 日にイスラム主義組織アブ・サヤフ(Abu Sayyaf Group: ASG)など複数の組織がミンダナオ島マラウィ市を襲撃し、島全域に戒厳令が発令されている。

「3 日で鎮圧する」と宣言したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、地上攻撃だけではなく航空機による空爆も行い攻勢に出たが、海外からの過激派戦闘員の加勢や逃げ遅れた市民らが「人間の盾」にされるなどし、戦況は膠着状態となった。

6 月 9 日の戦闘は激戦となり、海兵隊から多数の死傷者が出すに至っている。6 月 10 日には、フィリピン政府の要請で米軍特殊部隊が支援を行っていることを、在フィリピン米大使館が明かした。この発表に対してフィリピン政府は「戦闘参加ではなく技術的な支援」と説明したが、反アメリカ発言を繰り返す大統領を意識した政治的配慮と思われる。

Text: 弓削島一樹 - FM201707
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