発熱する電子繊維で兵士が快適になる?米大学と陸軍研究機関が開発中
Credit: U.S. Army Natick Soldier Research, Development and Engineering Center (NSRDEC)
北極圏に近い極寒冷地で活動する兵士にとって、体温を維持することは非常に重要である。適切な衣類を着用することはもちろんのこと、衣服内の汗や湿度を適切に保つことも大切である。
驚くべきことに、米陸軍で支給している寒冷地装備のほとんどが30年以上前に採用されたものである。そのため兵士たちは、官給品よりも優れた民生品を自腹で購入しているのが実情である。
Energized fabrics could keep soldiers warm and battle - ready in frigid climates
このような問題を解決するため、スタンフォード大学と陸軍の研究機関は共同で新しい繊維の開発に取り組んでいる。その繊維は、簡単に言うと「エネルギーが供給されると、発熱して、汗を蒸発させ簡単に乾燥させることができる繊維」である。
すでに試作品が完成しており、軍規格で作られた細かい銀のナノワイヤにポリエステルやコットン/ナイロンを編みこんだものは、1インチ四方に3ボルトの電圧をかけると、1分間で56度まで発熱するそうである。最終的には、繰り返し洗濯することができて、電圧をダイアル調節することで、任意に温度が設定できるようにすることである。
研究はさらに進んで、バッテリーを使わない代替電源も研究されている。ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)やN-イソプロピルアクリルアミド(N-isopropylacrylamide)などを構成するヒドロゲル粒子(hydrogel particles)は汗を吸収して湿度を抑える可能性がある。最終的には、衣類をハンガーなどにかけるだけで蒸発させることができるかもしれないという。
軍での実用化が実現すればすぐに民間へ技術が移動して、我々も技術の恩恵を受けることができるかもしれない。
Text: 友清仁 - FM201709
関連記事