メキシコ麻薬戦争の光と闇、ドキュメンタリー映画『皆殺しのバラッド』(Narco Cultura)
ロバート・キャパ賞受賞の経歴をもつイスラエル出身の報道カメラマン:シャウル・シュワルツ(Shaul Schwarz)が監督・撮影を務めた、メキシコの麻薬戦争を題材にしたドキュメンタリー映画『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』(原題:Narco Cultura)の日本公開が決まった。
映画作品に幾度となく取り上げられてきたメキシコ麻薬戦争であるが、「麻薬カルテル同士の抗争」と「麻薬を取り締まるメキシコ政府と麻薬カルテルの戦い」といった三つ巴の戦いともいえる紛争のことを指している。
ベトナム戦争のころ精神的ストレスを軽減するために、アメリカで麻薬が使われ始め需要が高まった。麻薬消費大国アメリカと麻薬生産国である中南米諸国を結ぶ麻薬ルートの要衝がメキシコであり、需要の高まりと共に麻薬取引が活発となった。
1980年代にメキシコ麻薬カルテルのゴッドファーザーといわれるフェリクス・ガジャルドがバラバラだった薬物取引をまとめ上げ、複数に分割した麻薬組織をつくり警察の取締りを掻い潜ることを始める。しかし、ガジャルドの逮捕を切掛けにそれぞれの組織が独立しはじめ、縄張りを拡大させる目的で各地で抗争が勃発する。
2006年にカルデロン大統領就任を期に、政府は麻薬犯罪と麻薬組織の撲滅を目的に軍隊が投入されることとなる。強固な姿勢で取り組むはずだったが、現実には麻薬組織と警察・軍隊の癒着など腐敗した裏社会の浄化には到ってはいない。また、貧困を理由に麻薬組織に加担する人が後を絶たない現状もある。
政府が軍を投入したことで紛争は激化しており、2006~2012年の麻薬戦争に関連した犠牲者数は約12万人といわれ、アフガニスタンでの同年数の死者が1万3000人であることを比較すると、メキシコではその10倍もの人数が犠牲者となっている。
各カルテルが軍隊同様の装備で武装していることや、麻薬組織の報復を恐れて警察官志望者が減少したり、マスメディア記者が否定的な記事を書くと殺害の対象にされたりなど、深刻な異常事態が続いているのがメキシコの現状である。
また、麻薬カルテルに属するギャングをアウトロー・ヒーローとして受け止められる風潮もあり、「ナルコ・コリード」という音楽ジャンルではギャングを英雄として讃えられている。
シャウル・シュワルツ監督は、「世界で最も危険な街」とされるメキシコのシウダー・フアレスで2008年から2年間に渡り麻薬戦争に関連する様々な事件と現場を撮影してきた。
映画では、ナルコ・コリードの人気歌手とファレスで公務を遂行する捜査官という真逆の立場の二人に焦点をあて、今のメキシコの現状を鋭く映し出している。
渋谷シアター・イメージフォーラムで2015年3月公開。
Narco Cultura official website
Shaul Schwarz official website
Text: 弓削島一樹 - FM201412
映画作品に幾度となく取り上げられてきたメキシコ麻薬戦争であるが、「麻薬カルテル同士の抗争」と「麻薬を取り締まるメキシコ政府と麻薬カルテルの戦い」といった三つ巴の戦いともいえる紛争のことを指している。
ベトナム戦争のころ精神的ストレスを軽減するために、アメリカで麻薬が使われ始め需要が高まった。麻薬消費大国アメリカと麻薬生産国である中南米諸国を結ぶ麻薬ルートの要衝がメキシコであり、需要の高まりと共に麻薬取引が活発となった。
1980年代にメキシコ麻薬カルテルのゴッドファーザーといわれるフェリクス・ガジャルドがバラバラだった薬物取引をまとめ上げ、複数に分割した麻薬組織をつくり警察の取締りを掻い潜ることを始める。しかし、ガジャルドの逮捕を切掛けにそれぞれの組織が独立しはじめ、縄張りを拡大させる目的で各地で抗争が勃発する。
2006年にカルデロン大統領就任を期に、政府は麻薬犯罪と麻薬組織の撲滅を目的に軍隊が投入されることとなる。強固な姿勢で取り組むはずだったが、現実には麻薬組織と警察・軍隊の癒着など腐敗した裏社会の浄化には到ってはいない。また、貧困を理由に麻薬組織に加担する人が後を絶たない現状もある。
政府が軍を投入したことで紛争は激化しており、2006~2012年の麻薬戦争に関連した犠牲者数は約12万人といわれ、アフガニスタンでの同年数の死者が1万3000人であることを比較すると、メキシコではその10倍もの人数が犠牲者となっている。
各カルテルが軍隊同様の装備で武装していることや、麻薬組織の報復を恐れて警察官志望者が減少したり、マスメディア記者が否定的な記事を書くと殺害の対象にされたりなど、深刻な異常事態が続いているのがメキシコの現状である。
また、麻薬カルテルに属するギャングをアウトロー・ヒーローとして受け止められる風潮もあり、「ナルコ・コリード」という音楽ジャンルではギャングを英雄として讃えられている。
シャウル・シュワルツ監督は、「世界で最も危険な街」とされるメキシコのシウダー・フアレスで2008年から2年間に渡り麻薬戦争に関連する様々な事件と現場を撮影してきた。
映画では、ナルコ・コリードの人気歌手とファレスで公務を遂行する捜査官という真逆の立場の二人に焦点をあて、今のメキシコの現状を鋭く映し出している。
渋谷シアター・イメージフォーラムで2015年3月公開。
Narco Cultura official website
Shaul Schwarz official website
Text: 弓削島一樹 - FM201412
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