「Black Command」リアルPMCコントラクター特別インタビュー~第3回「シェルダン」編

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「Black Command」リアルPMCコントラクター特別インタビュー~第3回「シェルダン」編
民間軍事会社(PMC)を題材として歯ごたえある描写が好評なカプコンのスマホゲーム「Black Command」。我々ミリタリーブログも軍事・兵器考証で制作に協力している。

特集記事3回目の今回、登場するのは「フロストバック」シェルダン氏。自身も高度なメディック(医療技術者)で、かつプロテクティブ・ドライビングのスキルも高い氏だが、PMCには更に様々な人種・スキルの人間が集まるという。その実情をアメリカで活躍する銃器の専門家でありトップシューター、そして特殊部隊経験者にも幅広くネットワークを持つ「SHIN」氏がインタビューを行った。

※インタビュー対象者の中には現在でもコントラクターとして活動している者がいる。彼らの安全とプライバシーを保護するため、当インタビュー記事では時系列、所属企業、配備地域など、個人を特定できる情報の詳細については伏せている。
リアルPMC紹介
シェルダン「フロストバック」


・コントラクター時のコールサイン/ニックネーム
Frostback/フロストバック 以前住んでいた山に現れる、秋から冬にかけて現れるイノシシ。自然にカモフラージュし動いていなければ見つける事は困難だが、激しい動きで突進してくる。

・バックグラウンド
カナダ陸軍砲兵として、そして山岳部隊へ。退役後は法執行関連機構を経て特殊警備の民間人コントラクターへ。この業界には20年以上いる。

・どうしてコントラクターに?
私にとっては自然な成り行きだった。軍人は軍を離れても、軍に近い構造を持つ環境に惹かれるものだ。コントラクターの仕事の環境はローリスク/低驚異からハイリスク/高脅威まで様々だが、PMCに所属すると自分が最も活躍できる環境と期間を選ぶことが出来る。これが魅力だったね。もちろんどんなコントラクトに参加できるかは、それぞれがそれまでどのようなトレーニングを受け、さらにコントラクトに応じたプレデプロイメントトレーニング(コントラクト内容に特化した訓練)と仕事内容に応じた身辺調査をパスしなければならない。

「Black Command」リアルPMCコントラクター特別インタビュー~第3回「シェルダン」編
東ヨーロッパでのPSD /プロテクションディテイル

・コントラクターとしての履歴は?
詳しくは話すことができない。過去20年の間にノースアメリカ、カリブ海周辺、中東周辺、東および西ヨーロッパ周辺でコントラクターとして活動してきた。さらに様々な場所で請け負ったコントラクトに向けた専門知識の訓練、さらに基礎技術の維持の為の訓練を受けている。

・得意分野は?
私は高度な技術を持つメディックであり、そして高脅威環境下での運転が得意だ。さらに、近年のコントラクトは警備チームを構成するためのインストラクター、トレーナーとしての内容も多い。コントラクターは得意分野だけを行うわけにはいかない。コントラクトの内容に合わせて、複数のポジションを兼任する。例えばプロテクションチーム(警備チーム)であればチームリーダー、シフトリーダー、ドライバー、アドバンスドチーム、フォローチームもしくは車両チームが最低でも必要になる。もう少し大きくなると、専門の監視及び対監視チーム、QRF(クイックリアクションフォース/緊急対応部隊)、ディフェンシブマークスマン(対狙撃手)、さらにアセットリカバリーチーム(人質救出を専門とする)が設けられる事もある。コントラクターはこれらの中で自分のスキルに合わせたポジションを与えられる。だが、ドックハンドラー(警備犬)、EOD(爆発物処理)の技術を持つ者は別格で、これらの技術は他のコントラクターが兼任する事はできない。
全員が基本的なメディカルスキルと、通信技術、運転技術を持ち、専門的分野以外の基本的なポジションを兼任できる必要がある。さらに異なる武器及び戦術にも精通していなければならない。コントラクトとして守るべき資産(人や物)は多くの場合動き回るため、チームも環境と状況に合わせて流動的に動けなければならない。なので、全員が他のコントラクターのポジションを受け持つことのできる「基本的な」スキルを持っていなければならない。

「Black Command」リアルPMCコントラクター特別インタビュー~第3回「シェルダン」編
M60は重いがCAT /カウンターアサルトチームの主要武器となる。

・好みの武器は?
M4カービン、できればバレルの短いモデルが車両からの乗り降りに適していて好みだ。だがAKもM4と同じぐらい効果的に扱える。AKスタイルのウェポンシステムは遠距離ではM4に比べ精度の面で劣るが、AK 47シリーズの使用する30口径弾は、薄い鉄板や障害物に対しての貫通力が高く、また貧しい第三国であっても銃と弾の入手が安易だ。確実に撃て、狙った場所に当たる事が重要であって銃の命中精度はシューターの基礎技術に比例する。もちろん、一種類のウェポンシステムを習熟する事は重要であり、この面から私の好みはM4だが、同時に多くの異なる武器の訓練も怠ってはいない。
多くの国でライセンス生産、もしくはブラックマーケットで生産される事のあるAKには品質に大きな幅がある。最も信頼性が高いのがロシア製、中国製のAKだ。次にルーマニア製AK、これはチャウシェスク政権崩壊時に大量にブラックマーケットに流入し、今でも新品が手に入る。同等にブルガリアなどの東ヨーロッパ製も良い。最悪なのがエジプト製、北朝鮮製でこれらはアフリカでよく見かける。銃の他にも弾やマガジンにも様々なクオリティのものが混じっている。パキスタンの穴倉で拾ってきた薬莢に黒色火薬を詰めたような弾は最悪だし、ロシア製の缶詰めに入った正規品を手に入れられたら最高だ。AKといってもピンキリなので、手に入れたらマガジン、弾全てを試射する必要がある。
プレデプロイメントトレーニングでは、コントラクトに合わせて使用が予想される様々な武器での検定が行われる。多くの場合、実際に現地に着くまで何を支給されるのかわからないことが多い。多くの場合様々なコンディションのAKであり、時にはMP5だったりもする。ピストルはブローニングハイパワーやグロック、シグが多く見られる。私の好みのピストルは耐久性からグロック17か19。グロックはスプリングが破損した状態でも単発で撃つことが出来る。9mm弾はどこでも入手が可能だ。ピストルは最も一般的な武器であるが、敵が使用してくるライフルなどに比べればはるかに威力は弱い。携帯性と隠匿性に優れるため、訓練次第で効果的な武器となる。また緊急時には応戦する為に必要なより大きな武器を手に入れるために役立ってくれる。

・ギアセレクション
ギアセレクションはタスクによる。ロープロファイルかハイビジビリティか? 低驚異か高驚異か? 国外における敵支配地域か安全な地域か? タスクに合わせてできる限り自分のギアをコントラクトに合わせて持ち込むようにしている。だが、多くの場合与えられた最低限のギアをガムテープやパラコード等で使えるように加工しなければならいことも多い。
コントラクトの際に持ち込むギアは、プレートキャリアー、ホルスター、バトルベルト、コミニケーションギア(イアプロテクション)、バリスティックヘルメット、アイプロテクション、グローブ、ブーツだ。多くのギアは移り変わりが早い為気に入った物は複数買うようにしている。コントラクト中の破損も多いが、状況が変化し装備を捨てて国から離脱する事も多いからだ。

・コントラクトとコントラクトの間のダウンタイムには何を?
ダイビングが趣味で、最近は沈没船探索を行っている。水中は平和で重力を感じないところが好きだね。ダイビングの他には鍛冶を始めた。家族が持っている農場では70年前まで鍛治屋をしていた施設が残っていて、そこに残された道具や施設をつかってナイフや刀、アートピースを作ったりしているよ。

・コントラクターとして最も印象に残っている経験は?
もちろん、コントラクトの全てが予定通りに行き、誰も怪我せずに帰ってきて、約束通りの支払いが行われたというのが最も印象に残るはずなのだけど、そんなことは一度も無い。コントラクトの多くには様々な国からコントラクターが集まる。6カ国の異なる言語を話すコントラクターが集まったオプが一度あった。その時は英語を母国語とするコントラクターの方が少数であり、6ヶ国語を混ぜ合わせたコミュニケーションを行う特別な方法を作り上げ、SOP(スタンダードオペレーションプロシージャー)を構築した。我々のチームの無線を聞いている者にとっては、最低でも3〜5ヶ国語が一つのセンテンスに混ざる我々独自の交信を聞いて混乱しただろう。チームに所属していたコントラクターの全員が、数ヶ月間の間にお互いの言語を少しずつ使って会話を成立させ、意思を伝える方法を取得していた。現在でもこの中の数人とは仕事をしており、彼らはその柔軟さ、新しい事を学び、状況に即して行動する事に長けた信頼できる仲間となっている。
「Black Command」リアルPMCコントラクター特別インタビュー~第3回「シェルダン」編


「Black Command」リアルPMCコントラクター特別インタビュー~第3回「シェルダン」編

ライター紹介:SHIN
在米の銃器専門家として、銃器の専門家であるガンスミスとしての学位を持ち、ファイアーアームズテクニカルライターとして日本ではアームズマガジン、ガンプロフェッショナル誌、米国では人気銃器雑誌リコイル誌に寄稿している。
シュアファイア社ローライトインストラクターでもあり、マグプルダイナミクス、タクティカルレスポンス、ケンハッカーソン、ラリービッカーズと言った有名インストラクターから200時間を越えるタクティカルトレーニングを受講。自身もインストラクターとして民間及び米国法執行機関に対し、プラクティカルマークスマンシップ(実践的射撃術)のクラスを提供している。
サブジェクトマターエキスパートとして日本の法執行機関および自衛隊に専門的助言を提供。台湾のコンサルタント機関TTRDA社を通じて台湾の法執行技術の近代化に関わっており、幅広いコネクションから最新のタクティクスに関する情報を提供している。
日本人として唯一、USPSA(米国実践射撃協会)最高位グランドマスターを2つの部門で達成。全米トップ20位に位置するシューターでもあり、多くの優勝経験を持つ。
自身の活動を、フェイスブックページ「Gunbaka/ガンバカ」として発信している。
https://www.facebook.com/gunbaka.shin

国籍から軍歴、職能までありとあらゆる種類・レベルの人間が集まるPMC。作戦を無事に遂行するには、彼らのスキルを正確に読み取り、チームとして機能するように組み合わせなければならない。「BlackCommand」でもチームやスキル、火器の編成はゲーム進行における重要な部分だ。


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