「『パララックスフリー』は存在しない」元デルタのインストラクターが各社ドットサイト調査レポートを公開
元デルタのインストラクター、エリック・ドレンブッシュ(Eric Dorenbush)が、自身の主宰するトレーニングクラスでAimpoint T-1の使用を禁じた件について、その後各社ドットサイトに関する詳細な調査報告書が公開され、あらためて「パララックスフリーなサイトは存在しない」という事実が確認された。
Photo from Aimpoint Web Page
関連記事:
⇒「Aimpoint T-1は捨てたほうがいい」元デルタのインストラクターが講座での使用を禁止
ドットサイトはレンズに光点を投影して照準に用いるが、この時斜めにサイトを覗き込むとターゲット面と見かけの投影面の距離の差から光点のズレ、つまり「パララックス(Parallax)」が発生する。様々なメーカーが「パララックスフリー」を謳っているが、原理上これをゼロにすることはできない。
ドレンブッシュ氏が問題としたのは、そのズレの出方が製品の個体によって違うという点であった。当初は「ドットサイトのチューブから見えるフロントサイトの位置を常に一定にしながら射撃すること」など対症療法的なテクニックを教えていたが、生徒の学習に悪影響が出るということで禁止に至った。
その後、ドレンブッシュ氏は今回の件をきっかけとして各社ドットサイトの光点がどの程度、どのようにズレるのかという調査を行うと発表。今回80ページのレポートとして公開された。
■実験の方法
25ヤード、50ヤード、100ヤードに設置したターゲットに向けドットサイトを設置。その際中心から覗いた光点がターゲットに乗るように調整する。その後、ドットサイトの後ろで、光点が見えなくなるギリギリまで左右方向から覗き込み、光点の軌跡を記録する。上下でも同じように行う。
複数人のテスターが複数回、用意されたドットサイトを用いて複数回測定を行い、ズレ量の平均と標準偏差を算出した。外部の有志によって行われた実験のデータは別に集計されている。
■実験の結果
結果は以下のようになった。レポートでは各距離、各移動方向、個体ごとのデータなど詳細に分類されているが、こちらはそれらすべてを総合したメーカー・モデルごとの移動量の平均・標準偏差である。Data Pointsはのべ計測回数を表す。大まかにいって「AVG A」がズレ量の平均、「AVG SD」がその標準偏差、つまり製品の個体差の大きさを表している。
ぱっと見て分かるのは、レーザーホログラム方式のEoTech社製品とその他の通常のドットサイトとの差である。明らかにEoTech社製品はパララックスが小さく、そして個体差も小さい。なお、パララックスフリーを記録したのは、100ヤードにおけるEoTech EXPS 3.0だけであったが、実験回数は1回のみである。
その他製品については性能差もあるが、いずれも同程度にバラツキがある。T-1のうち一台は、パララックス補正のためにAimpoint社に再調整を依頼したものだ。この個体については僅かながら良好な実験結果が出たものの「フリー」とはいえない程度であった。なおレポートによれば、レンズ周辺部と中心部でのドットの動きの違いやレティクルの見えやすさなど、数字にしにくい部分での違いは大きいようだ。
レポートからは、テスターとドットサイトとの距離、テスターの移動方向・量をどう決めているかが読み取れない。こちらはテスターごとの実験データを集計したものだが、テスターの個人差はかなり大きく、また個体やモデルとの「相性」もあることが分かる。ドレンブッシュ氏は以前「Trijicon MROは(T-1よりもズレのバラつきが少なく)クラスでの使用可」としたが、これはレポートの内容と合っていない。
こうした差を吸収し本当に精密にズレ量を測定しようとするなら実験の条件を厳密に揃えるべきだ。例えばカメラをレールに載せ決められた量だけ動かして撮影するなど、ヒューマンエラーを最小にする工夫が必要だ。湿度・空気密度・外光等の光学性能に影響のある要素も同様に揃えなければならないだろう。
したがってこのレポートの内容はあくまでも参考に留めるべきであるが、それでも「パララックスフリー」というのは厳密には間違いであること、そして「デファクトスタンダード」とされている製品でも個体差はかなりあることが分かる。ごく当たり前の結論ではあるが、こうした実験が行われ、その結果が公開される意義は大きいのではないだろうか。
関連記事:
⇒Trijicon MRO vs Aimpoint T1 マイクロドットサイト徹底比較
Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201707
ドレンブッシュ氏が問題としたのは、そのズレの出方が製品の個体によって違うという点であった。当初は「ドットサイトのチューブから見えるフロントサイトの位置を常に一定にしながら射撃すること」など対症療法的なテクニックを教えていたが、生徒の学習に悪影響が出るということで禁止に至った。
その後、ドレンブッシュ氏は今回の件をきっかけとして各社ドットサイトの光点がどの程度、どのようにズレるのかという調査を行うと発表。今回80ページのレポートとして公開された。
■実験の方法
25ヤード、50ヤード、100ヤードに設置したターゲットに向けドットサイトを設置。その際中心から覗いた光点がターゲットに乗るように調整する。その後、ドットサイトの後ろで、光点が見えなくなるギリギリまで左右方向から覗き込み、光点の軌跡を記録する。上下でも同じように行う。
Photo from Eric Dorenbush's Report
複数人のテスターが複数回、用意されたドットサイトを用いて複数回測定を行い、ズレ量の平均と標準偏差を算出した。外部の有志によって行われた実験のデータは別に集計されている。
■実験の結果
結果は以下のようになった。レポートでは各距離、各移動方向、個体ごとのデータなど詳細に分類されているが、こちらはそれらすべてを総合したメーカー・モデルごとの移動量の平均・標準偏差である。Data Pointsはのべ計測回数を表す。大まかにいって「AVG A」がズレ量の平均、「AVG SD」がその標準偏差、つまり製品の個体差の大きさを表している。
Table: Soted by Vertical Deviation Averages / Eric Dorenbush's Report
ぱっと見て分かるのは、レーザーホログラム方式のEoTech社製品とその他の通常のドットサイトとの差である。明らかにEoTech社製品はパララックスが小さく、そして個体差も小さい。なお、パララックスフリーを記録したのは、100ヤードにおけるEoTech EXPS 3.0だけであったが、実験回数は1回のみである。
その他製品については性能差もあるが、いずれも同程度にバラツキがある。T-1のうち一台は、パララックス補正のためにAimpoint社に再調整を依頼したものだ。この個体については僅かながら良好な実験結果が出たものの「フリー」とはいえない程度であった。なおレポートによれば、レンズ周辺部と中心部でのドットの動きの違いやレティクルの見えやすさなど、数字にしにくい部分での違いは大きいようだ。
レポートからは、テスターとドットサイトとの距離、テスターの移動方向・量をどう決めているかが読み取れない。こちらはテスターごとの実験データを集計したものだが、テスターの個人差はかなり大きく、また個体やモデルとの「相性」もあることが分かる。ドレンブッシュ氏は以前「Trijicon MROは(T-1よりもズレのバラつきが少なく)クラスでの使用可」としたが、これはレポートの内容と合っていない。
Table: Tester Total Deviation / Eric Dorenbush's Report
こうした差を吸収し本当に精密にズレ量を測定しようとするなら実験の条件を厳密に揃えるべきだ。例えばカメラをレールに載せ決められた量だけ動かして撮影するなど、ヒューマンエラーを最小にする工夫が必要だ。湿度・空気密度・外光等の光学性能に影響のある要素も同様に揃えなければならないだろう。
したがってこのレポートの内容はあくまでも参考に留めるべきであるが、それでも「パララックスフリー」というのは厳密には間違いであること、そして「デファクトスタンダード」とされている製品でも個体差はかなりあることが分かる。ごく当たり前の結論ではあるが、こうした実験が行われ、その結果が公開される意義は大きいのではないだろうか。
関連記事:
⇒Trijicon MRO vs Aimpoint T1 マイクロドットサイト徹底比較
Text: Chaka (@dna_chaka) - FM201707
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。
タグ :パララックスAimpoint T-1Red Dot Sight光学照準器オプティクスドットサイトエリック・ドレンブッシュEric DorenbushGreen Eye Tacticalデルタフォース
★この記事へのコメント
コメントを投稿する
★この記事をブックマーク/共有する
★新着情報をメールでチェック!
★Facebookでのコメント