特集:H&K M27 IAR(歩兵自動ライフル)

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Photo from USMC
2009年、アメリカ海兵隊は新たな分隊支援火器M27 IARとして、H&K社の候補を採用した。他の兵士の持つ小銃と見た目がほとんど変わらず、弾数よりも精度の高い射撃で制圧を行うという、従来と違ったコンセプトのこの分隊支援火器は何を目的とし、なぜこの形態をとったのだろうか。

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    「テロとの戦い」における分隊支援火器
    高い火力によって敵の頭を押さえ、他の兵士の前進を助けつつ、自らも同じスピードで移動する……というのが分隊支援火器の仕事である。

    アメリカでは第二次世界大戦中のBAR(ブローニング自動ライフル)、バイポッド付きのM14小銃、M60汎用機関銃、そして1985年に採用されたM249軽機関銃がその役割を担ってきた。

    しかし「9.11」に端を発する「テロとの戦い」は、それまで想定されていた戦闘環境とまったく違うものであった。

    アフガニスタンにおける「テロとの戦い」では山岳地を移動した後、村落での市街地戦に突入するなど戦場がめまぐるしく変化する。また正規軍同士の衝突と違い、民間人と戦闘員が同じエリアに存在することが多い。こうした用途では軽機関銃は重量過多・火力過多とされ、むしろ弾薬の補給に負担がかかることが分かった。

    M27 IARで室内戦闘の訓練を行う兵士。重たい分隊支援火器で他の歩兵と突入するのは困難であると考えられ、軽量な銃が求められた。

    Photo from USMC

    また中東の暑さと砂は銃の動作・部品の耐久性に問題が出た。ドイツ軍のG36小銃は過熱で弾着が変化し、M4小銃も故障が続出していた。既存の分隊支援火器は時代遅れになったのである。

    新たな分隊支援火器への道
    こうした状況を鑑み、海兵隊は第1海兵師団第7連隊第2大隊を次世代の分隊支援火器に関する研究にあてた。この結果を元に1999年、海兵隊は新型分隊支援火器を配備する要求を提出した。なお「M27」は、この試験にあたった大隊の番号「2-7」にちなんだものであるという説がある。

    海兵隊が求めていたのは以下の条件を満たす分隊支援火器である。

    ・(軽量化によって)すべての人員の機動性を同一水準に揃えられること
    ・弾薬と弾倉、訓練の共通化
    ・対紛争作戦(Counter Insurgency)における民間人の「巻き添え被害」を防止しつつ火力を発揮できること
    ・緊急の際は、従来の分隊支援火器と同等の火力を発揮できること

    実際にIAR採用プログラムが動き出したのは2005年になってからである。そして2007年にRFI(提案依頼書)が提出されるとFN、コルト・ディフェンス、LWRC、パトリオット・オードナンス、ゼネラル・ダイナミクスそして勝者となったH&Kなどが参加した。

    H&K 416の登場
    話は2000年6月に戻る。H&K社のジム・シャッツ(Jim Schatz)とエルンスト・マウシュ(Ernst Mauch)は、M4自動小銃を独自に改良した「HKM4」を作り上げた。当時の米軍特殊部隊で中東におけるM4のトラブルが頻発していたからである。特に10.5インチ銃身のMk. 18 CQBRのような短いバージョンにおいて不調が頻発していたのが問題となっていた。

    当時まだデルタフォースの隊員であったラリー・ヴィッカースが、特殊部隊向けハンドガン開発のアドバイザーとしてH&Kを訪れた際、このHKM4の存在を知った。シャッツ、マウシュ、そしてH&K軍部門のマネージャーであったブルース・ダビッドソン(Bruce Davidson)とトム・キブルハン(Tom Kivlehan)と共にHKM4、後のHK416の開発に参加することになる。

    M4自動小銃のトラブルはダイレクト・インピンジメント(DI)方式のシステムに由来する。DI式では発射時の火薬ガスがアッパーレシーバー内のボルトに直接吹き付けるため、内部に熱が溜まり放熱が難しい。またガスルートの汚れが動作性に直結するという問題もあった。

    この問題を解決すべく、HK416ではショートストローク・ピストン方式を採用した。発射ガスがバレル上部から導かれるところまでは同じだが、発射ガスはバレル上部のピストンを一瞬キックした後すぐ排出される。ボルトは慣性で動くピストンに戻されるため、ガスはレシーバーの中に入る。

    DI式とショートストローク・ピストン方式を比較するアニメーション動画
    direct impingement vs. short-stroke system - YouTube

    ピストンが増えることで重量が増加すること、またピストンの前後動によって射撃の精度は落ちるという欠点はあるものの、HK416の整備性、放熱性能はその欠点を上回るメリットと考えられた。

    M27 IARの誕生
    HK416の整備性、放熱性能は分隊支援火器にうってつけのものであった。IAR採用プログラムに向けてH&Kが提出した候補は、このHK416の銃身長を16.5インチのヘビーバレルに変更し、ハンドガードを11インチに延長、着剣ラグを取り付けたものだった。H&Kはプレスリリースで「M27 IARは納税者のお金をまったく使わず開発された」と喧伝していたが、事実、M27 IARの最初のバージョンの刻印は「HK416D」であり、既存のパーツを組み合わせて完成したものである。民間バージョンのMR556A1は、M27 IARとほぼ同じ構成である。

    M27 IARのカタログ。HK416、MR556A1は銃身長違いのバリエーションとして表現されており、構成が非常に近いことが分かる。


    Photo from H&K

    しかしながらH&Kの候補は高い耐久性を示した。特に銃身命数ではM4に大きな差をつけた。

    M4小銃の銃身は4150スチールにボタンでライフリングが切られ、ロックウェル硬度で28~36まで熱処理されたものである。しかしM27ではクロームモリブデンバナジウム鋼から冷間鍛造され、ロックウェル硬度で41まで熱処理されたあとクロームメッキが施された銃身が採用された。これで銃身命数はM4の1.5倍ほどになり、他の候補にも大きな差をつけることになった。

    関連記事:
    M27 IARの耐久テストの内容が情報公開法によって明らかに - ミリブロNews

    当初のHK416のガスシステムは元々短銃身での動作を前提としたものだ。バレルが長くなる場合は設定を変えなければ、弾丸が銃口を通過する前にアクションが開くことになり、ボルトの寿命を縮めてしまうことになる。実際、初期のM27 IARのボルト寿命はM4のそれよりも短かったという。民間バージョンといえるMR556A1ではタングステン粉末で重量を増した専用のバッファーを使用して、後退タイミングを変更しているようだ。

    物量よりも精度によって制圧を行うのが目的である以上、命中精度は重視される。M27 IARはフリーフローティングバレルを採用しM4やM16A2よりも小さな集弾を実現した。また同時に支給されるバイポッドやグリップポッド、そしてM249用としても使用されていたトリジコン社の光学照準SDOといったアクセサリは、有効射程を伸ばすのに貢献している。

    その他にもこれらのアクセサリと共に納入される。

    KAC製600mBUIS
    Blue Force GearスリングマウントとVCASスリング
    AIM MANTAレイルカバー
    ハリス・Larue バイポッドまたはGRIP POD
    ブランクファイアアダプタ
    マニュアル
    クリーニングキット
    STANAGマガジン(H&K製はオプション)
    トリジコンSDO
    銃剣

    高い命中精度は敵味方・民間人が入り交じった市街地戦で周辺の被害を抑えることにもつながる。銃身の交換機能はないが基本的にはセミオート射撃で制圧を行うため過熱は大きな問題にならない。撃った後直後に分解してもボルトに手で触れることができるほど熱には強い。

    もちろんいざという時はM249に匹敵する速度のフルオート射撃が可能である。ベルトリンクではなく一般的な30連弾倉から給弾することで制圧力が不足することを心配する声もあるが、弾倉の交換にそれほど時間がかからないことなどから大きな問題ではないと判断されたようだ。

    なおテストは軍支給の弾倉で行われたが、非公式なテストでは市販の様々な弾倉が使用されたという。最近はM855A1弾を使用するためにMagpul社のPMAGが採用された。

    関連記事:
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    そして何より軽量なこと、他の自動小銃と同じような見た目であることが実際の戦地では重要であった。フル装備状態でM249軽機関銃の半分以下という軽快さによって、M27 IARの射手は部隊の移動スピードを下げることなく共に行動し、制圧射撃を行える。また敵の狙撃手から分隊支援火器を持っていることが分かりにくく、狙われにくいことが射手に安心感を与えている。

    DVIDS - Video - Lima Company IAR Live Fire Exercise

    M27 IARは元となったHK416と同様、高性能であることに疑いの余地はなく、海兵隊が全歩兵の標準装備として導入しようとしているのも頷ける。

    関連記事:
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    しかしあくまでもゼロ年代の要求仕様と技術で作られたものであることも間違いない。M27 IARが生まれたのは戦場のあり方が大きく変化したからだが、M27 IAR自身もまた、時代の変化という試練にさらされている。ベストセラーとなるか、過渡的な採用で終わるのか、海兵隊、ひいてはアメリカ軍の判断が気になるところである。

    Text: Chaka (@dna_chaka)
    Chaka (@dna_chaka)
    世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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