田村装備開発「CQB 座学・基礎動作特別訓練」取材レポート

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危機管理訓練に興味がある人の中で「田村装備開発」の名を聞いたことがない人はいないだろう。代表の元埼玉県警銃器対策部隊RATS隊員、田村忠嗣氏をはじめとする経験豊富なインストラクター陣が提供する密度の高い訓練で、日本最高峰のスクールとして名を馳せる同社だが、その内容の一端を垣間見ることができる座学イベントが12/2、ジェイ・ライン株式会社(=ミリタリーブログ運営会社)本社ビル内セミナールームで行われた。

※イベント中に使用されたエアソフトガンはすべて事前に安全を確保し、訓練中も繰り返しチェックが行われたものである。

田村装備開発公式ブログ
http://tamura.militaryblog.jp/

「戦術」とは何か
座学は「戦術総論」から始まった。最も重要なのは「やってはいけないことを決めてしまわないこと」であると田村氏は言う。戦術は戦いをするかしないか、するとすればいつどこで、どのように始めるかコントロールすることである。

人質をとった立てこもり事件を例にしてみよう。人質がいる以上は銃器の使用に制限がある。人質の体力や負傷の度合いによっては時間制限もあるだろう。犯人は突入を予期しており、突入が予想される経路にバリケードやワナを仕掛けている可能性もある。

これらに対して「突入」だけがその「解」になるわけではない。建物を壊して突入経路を開けたり、ネゴシエーターによる交渉で時間を稼ぐなどして「地の利」「時の利」「域の利(サポート・補給の優位)」「勢の利(勢い)」「義の利(行動の意義)」をコントロール、相手の決断を崩すのが戦術である。

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    「戦闘にルールは存在しない」
    本来ならばありとあらゆる方法が検討されるべきであるが、実際のところ戦術には様々な足かせが存在している。同社訓練教育部長で元陸自特戦群の長田賢治氏は、その足かせをこのようなレベルに分類した。

    無差別:あらゆる行動に制限のない状態
    国外:いわゆる「国際法」による制限、軍事力によるパワーバランス
    国内:法律、国民性
    武器:ROE、自衛隊法など
    その他のルール:SOP、マナー、自主規制など

    こうしたしがらみを前提とした「戦術」は、それ故に形が決まったものになってしまう。しかし流動的な現実に対し定型的な解決方法は存在しない。ありとあらゆる「ルール」はまた、戦術の足かせとなっている。

    例えばこの位置取りの場合、田村氏は右横の味方ごしに敵を撃たなければならない。

    この時「スイープしてはいけない」というルールを守って、銃口を上下に避けて体を回すと、それだけでコンマ何秒かのロスになる。ルールが存在する理由を理解し、そしてルールを破る理由があれば躊躇しないことが重要であるという。

    戦技とは「仲間を守ってやる」こと
    戦術を実現するのが現場における戦技であるが、こちらでも「ルールを定めない」という黄金律が摘要される。銃の撃ち方一つとっても様々なメソッドが存在するが「ルールが増えるほど弱くなる」ということを常に意識しなければならない。

    アイソサリーズやウィーバーといったスタンスはそれぞれ長短があり、状況によって使い分けなければならない。こちらはスタンダードなドア際でのスタンバイ姿勢だが、状況によっては問題になりうる。

    一方、禁忌とされる「ランボー撃ち」だが場合によっては大きなメリットがある。座学では、いかに普段ルールに縛られた思考をしているかが様々な例を通じて示された。

    田村氏によれば、戦技の基本的なコンセプトは「仲間を守ってやる」ということであるという。

    いわゆる「ツーガン」の状態。的に向く銃口と監視する目を2倍にすることができる。立つ人が座る人をヒザで挟み込みコントロールするのが通常だが、田村装備開発ではその方法の欠点を指摘した上で違う方法を説明していた。銃口については座る人間の前に十分に突き出してスイープを防いでいる。

    下の人の立たせ方、リロードの仕方など様々なパターンが展示されたが、何をどう用いるかは状況次第である。ツーガンの姿勢では立たせる時に弱い瞬間ができてしまうが、このように既に立っている人間が先に前に出ることで、弱い瞬間を短くすることもできる。

    固まってしまった戦術、戦技はすでに旧式化しているということは先に書いた。例えばCQB黎明期において考案された「ルームエントリー」などはその典型例である。列を組んだ隊員が順序を決めて部屋に流れ込んでいく、という訓練を目にしたことがある人がいるだろう。

    しかし1番員が突入した目の前に敵がいた場合、この「台本」の前提は崩れてしまう。無限に台本を用意し暗記することができるならともかく、定まった方法は変化する環境に弱い。

    現実には、1番員がどのルートをどのスピードで通りたくなるかは、その日その場になってみないと分からない。この連続写真では1番員が開口部を素早く通り過ぎるため、向かって右に見えるドアの前を速度を上げて通過している。

    2番員は1番員の死角となる背後に素早く入ってカバーしている。


    1番員が右のドアを気にして時間をかけてクリアリングしたくなるかもしれない。そうした場合は2番員が手前ドアをカバーすることになる。当然スピード感は状況によって大きな変化がある。2番員が1番員を守るには室内の死角を素早く読み取る力とサポートに入る力、そして互いの認識の一致が必要になる。

    ローライト環境……戦場の特性を利用すること。
    戦場・戦闘には様々な特性がある。基本的な戦術に加え、こうした特性を学ぶことで、様々な環境に適応することができる。こうした特性が最も顕著なものが、光のない野戦である。少数で行動する部隊にとって、自らの姿を隠すことができる闇夜はメリットが大きい。田村装備開発でも詳しいカリキュラムが組まれている分野である。
    Low Light Battle 低照明下戦闘 田村装備開発 特殊作戦技能講習 - YouTube

    こうした環境で行動するにはフラッシュライトやナイトビジョンといった装備が必要である。暗視装備の性質を知ることが、ローライト戦闘の第一歩である。実際に様々な明るさのフラッシュライトを使用し、どのように見えるかのデモが行われた。

    NVGは夜戦での定番装備だが性質を理解して使用しなければならない。まず肉眼同様にフラッシュライトに弱い。夜間に相手がフラッシュライトを照射してきた場合に問題となる。

    戦闘においては視野角の狭さも問題になりうる。田村氏の左手は本人の視界からは見えていない状態にある。このことからも、敵味方とも近くにいるCQB環境下ではことのほか注意が必要である。

    使用する環境に最適なフラッシュライトを選ぶには、作りそのものもよく調べるべきという。使用している部品によって性質や電池の持ちが大きく変化するためである。

    フラッシュライトはその強烈な光量で相手の視力を奪う一方、自分の位置を明快に示してしまう装備であることに留意しなければならない。こちらは「ハリステクニック」と呼ばれる持ち方で、銃口の方向に光を向けることができる。

    こちらは「ネックインデックス」という持ち方。視線の方向に光を向けるのに便利である。こうして自分の近くにライトを保持する場合、視力を奪われた相手はライトを目印に攻撃してくるため危険なことがある。

    「FBIテクニック」で自分の体から離して持つことでこうした危険を避けることができる。こうした様々なテクニックを使い分けることが重要である。

    終わりに
    本邦の警察官・自衛官は有形無形のルールに縛られている。田村装備開発の講座は、そうした組織に在籍していたインストラクターがどのように束縛を外してきたかを自らの体験を元に語る、刺激的なものとなっている。初学者はもちろんのことだが、ある程度経験を積んだ人にとっても検討すべき課題を多く持ち帰ることができるだろう。訓練を通じて「自分はいかにルールの中で戦っていたか」を体験してみてほしい。

    田村装備開発公式ブログ
    http://tamura.militaryblog.jp/

    Photo & Text: Chaka (@dna_chaka)
    Chaka (@dna_chaka)
    世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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