なぜ特殊部隊員たちはチームを去ってしまうのか……モチベーションの維持に悩む米軍

ミリタリーブログサポートチーム

2020年02月20日 21:55


Photo by U.S. Navy


特殊部隊員になるにはずば抜けた能力と運をもって厳しいセレクションを突破しなければならない。時には合格までに何年もかかることがある。そこまでして特殊部隊員になった彼らはなぜ部隊を去ってしまうのだろうか。
 
例えば海軍特殊部隊は、6か月の実戦配備に対し1年半の準備訓練を行う。その内容は戦闘だけではなく派遣地域の文化や言語を含む、様々な知識・技能を習得することになり、当然勤務時間も不規則なものになる。時にはアメリカ全土の訓練施設を点々とし、隊員によっては、1年以上家族と会えないことも珍しくないという。
 
問題は訓練を終えた後の任務である。本人の希望だけでなく、適正やチーム編成の兼ね合いもあって、ここには大きな偏りが存在する。4年間に3度もアフガン/イラクで特殊作戦に派遣される兵士もいれば、10年近くヨーロッパの大使館付きの隊員もいる。
 
過酷な訓練を経た後、退屈過ぎる任務を与えられたら、あるいは逆に仲間を失うほどのハードな作戦に投入されたら……特殊部隊員達は献身的で、自身の向上に意欲的な者が多い。そんな意識の高い彼らが、こうした理不尽な扱いをどう受け取るかは想像に難くないだろう。
また、多くの特殊部隊員は学士号を取得していることも問題を複雑にする。一般的な特殊部隊員の給与は、下士官で7万ドル(約750万円)だという。アメリカでは大卒技術職の平均年収が10万ドル(約1100万円)となっており、これも自分のキャリアを見つめ直す理由となる。

米軍特殊作戦コマンド(SOCOM)でもこの事態を深刻に考えており、オプテンポの見直しや派遣任務の再検討、危険手当の大幅な増額や、契約期間の延長に対する多額のボーナスなどの施策で、隊員たちをつなぎとめようとしている。
 
参考記事:
米国防総省が陸軍の募集難をクリアすべく選抜試験突破者に2,700万円のボーナスを支給する案を検討中 - ミリブロNews
https://news.militaryblog.jp/web/US-DoD-is-offering-big-bonus/for-Army-recruitment-exam-passers.html

特殊部隊は現代アメリカの軍事戦略に欠かせない存在であるが、その高度な能力を維持するには多大なコストがかかる。元々高いモチベーションを持つ彼らに、さらに献身を求めるのは容易なことではないようだ。

Source: WHERE DID EVERYONE GO? THE MASS EXODUS OF SPECIAL OPERATORS

Text: 友清仁 - FM202002

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