新型コロナ 中東・北アフリカ情勢に大きな影響を与える
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新型コロナウィルスの感染拡大で、政治・経済に大きな影響が出ているが、もとから政情が不安定な地域では紛争の展開や外交に大きな影響が与えている。特に現在、様々な国家の代理戦争の舞台となっている中東・北アフリカの国々では情勢がかなり不安定になっているようだ。
シリア
シリアで争うアサド政権・ロシア、そしてトルコの2大勢力は3月6日から停戦に入った。シリア人権監視団(SyrianObservatoryforHumanRights)によると、2020年3月の民間人の死亡数は、2011年に紛争が勃発して以来最低の101人であったが、今度はコロナウィルス感染の拡大による死者増が懸念される。
アサド政権は支配地域であるダマスカス県で、感染者が出たいくつかの街を既に封鎖したとされるが、その他様々な自治勢力とどのように連携していくかは未知数である。この状況をどのようにコントロールするかによって、また新たな火種が生まれかねない状況だ。
イエメン
イエメン内戦は2015年にサウジアラビアが介入し、親イラン武装勢力フーシとの激しい戦闘が続いた結果、数万人の死者が出ている。戦闘地帯ということもあり、外国からの新型コロナウィルス感染者の入国の可能性は低い。しかし医療施設や上下水道といったインフラの大半が破壊されており、2016年のコレラ流行などの事例からも、医療は大きな問題を抱えている。現在は国連の停戦呼びかけに両派が応じており、コロナ対策もやや前進しはじめているが、伝染がスタートした場合は大きな被害が出るものと思われる。
リビア
リビアは独裁政権崩壊後、東西に別れた勢力で内戦状態である。昨年4月以降、西部暫定政府が拠点を置く首都トリポリ周辺で、東部勢力との戦闘が続いている。陸路・空路とも閉鎖されているため、感染の拡大は未だ見られていない。
しかしイエメン同様、医療インフラは破壊されており、物資も欠乏していることから感染爆発の危険は少なくない。国連がコロナ対策のための停戦を呼びかけ、両派とも応じているが完全な戦闘停止には至っていないようだ。
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