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アメリカ陸軍特殊部隊司令部がCRF(危機即応部隊)廃止を申請

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アメリカ陸軍特殊部隊司令部がCRF(危機即応部隊)廃止を申請
Photo from 10th SFG for Illustration Purpose Only.


アメリカ陸軍特殊部隊司令部USASOCが隷下の特殊作戦群(SFG)に設置しているCRF(Crisis Response Force……危機即応部隊)を廃止し、人員・装備を再配置する旨を国防長官に申請したと一部メディアや特殊部隊コミュニティに属する一部のブロガーが報じている。2020年1月に申請され、現在認可待ちであるという。

CRFは1st、3rd、5th、7th、10thの各特殊作戦群に設置された大隊で、対テロ作戦(CT)、捕虜救出(HR)などをその任務としている。以前はCIF(Commanders In-extremis Force……司令官直轄部隊)と呼ばれていた通り、例えば管轄地域の大使館が襲撃されアメリカ国民が捕虜となるなどの緊急事態の際、即座に出動できるようになっている。

参考記事:
特集:米軍特殊部隊 ― アメリカ陸軍特殊部隊 USASOC編 - ミリブロNews

仮に廃止が事実だとすれば、その理由は何だろうか。

直接的な行動を即座にとれる部隊はCRFに限らずレンジャー連隊や海兵隊、JSCO隷下の部隊など、他にも選択肢がある。2020年1月、アメリカ軍の空爆に対する抗議デモによってイラク大使館が数千人に包囲された。この時派遣されたのもCRFではなく海兵隊であったという。

CRF要員はそれぞれ9週間のSFARTAETC(特殊部隊応用偵察目標分析・発見技術コース)課程、SFSC(特殊部隊狙撃手コース)課程を修了しなければならない。他に選択肢があるならば、こうした高コストな部隊を投入する意味は薄れてくる。
また、CRF自体の必要性がそもそも薄れつつあるという事情がある。

設置の端緒は1983年のベイルートにおけるアメリカ海兵隊兵舎爆破事件がきっかけで、こうしたテロに対処するには、CTの専門家を含む即応部隊が必要であると結論されたためである。当時、デルタフォースは発足したばかりで人員不足であること、他にも様々な政治的事情がありドイツ駐留の第10特殊部隊群にCIFが設置された。

しかし、即応をうたいつつも実際に出動することは少なかったという。独自の空輸能力を持たないため、ある作戦では独自の航空部隊を持つデルタのほうが先に現地に到着してしまったこともあるという。

中東での紛争でもほとんど展開せず、もっぱらタスクフォースの一員として高価値目標の誘拐・殺害任務を行ったり、友好国の軍の訓練要員としても用いられたようだ。特殊部隊の本分を果たせず、またCRFの存在意義であるCT、HRにも投入されないとなれば、アセットの無駄遣いであるばかりか部隊の士気にも関わってくる。

そもそも最近では、国防総省、ひいてはアメリカ政府が、従来の対テロ戦争からロシア・中国といった勢力の近しい仮想敵国との紛争を視野に入れ始めている。今回のCRF廃止は、直接打撃(DA)作戦よりも非正規戦(UW)、海外内的防衛(FID)を強化したいと考えていることの表れであり「グリーンベレー」として本来の任務を行わせよう、という意図が感じられる。

Source: Exclusive: Army and Special Forces leadership throw decorated operator under the bus | SOFREP

Special Forces CIF companies disbanded and the future of Green Berets

Text: Chaka (@dna_chaka)
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。


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