タクティカルナイフよもやま話 ストライダーナイフってなに?
こんにちは、ミリブロNewsの今井です。
以前、20代前半のミリタリー好きの方と話をしていたときに「ストライダーナイフ」の話題が出ました。しかし彼からは「たまにストライダーナイフって聞くんですがいったいなんですか?なんでそんなに有名なんですか?」と聞かれて「ああ、そうかこの世代はもうストライダーのこと知らないんだな」としみじみと思いました。
そこで今回は当時一斉を風靡(ふうび)したストライダーナイフについて回顧録的にお話をしたいと思います。
ちなみに筆者今井はストライダーナイフのことが好き好きで未だに追いかけて集めているので、ストライダーナイフに対するツッコミも愛のあるツッコミだと思っていただけると嬉しいです。
2000年代に突如現れたナイフ界の異端児ストライダーナイフ
今でこそ当たり前になり、それなりに簡単に情報が入手できる近接戦闘の技術ですが、当時(日本では)ほとんどわかっておらず、まだインターネットもあまり普及していなかったので入手できる情報は専門の書籍のみでかなり限られた状態でした。
その頃からCQB(Close Quarters Battle)やCQC(Close Quarters Combat)という単語が一般にも浸透し始め、こぞっていろんな方が「このCQBやCQCってなんぞや」と模索していました。
そんな中でストライダーナイフは
・とにかく丈夫
・CQCを制するための最終兵器
・質実剛健、戦闘に特化したこれまでにないナイフ
的な形で紹介され、またたく間にミリタリー愛好家の方たちの中で広まっていったのです。当時は近接戦闘時に自分の銃を掴んできた相手に対しナイフを振りかざすことで制圧するのがイケている言わていたからです(今はどうかしりません) 。
ストライダーナイフの魅力は丈夫かつ一切の装飾がないこと
ストライダーナイフの最大の特徴は「めちゃくちゃ頑丈に作られている」ということで、ナイフと言えば「丁寧に扱う」ことが基本なのに、ご法度とされる「叩く」という行為を前提にして作られている、と言われています。
包丁などは鋼材の厚みはだいたい2〜3mmぐらいなんですが、ストライダーは倍以上の6〜7mmです。分厚い上にナイフ自体に強度を持たせる形をしているのでとにかく頑丈にできています。
今でこそ違いますが、初期のロットはポール・ボスと呼ばれる焼入れの神様みたいな方が焼入れをしていたので(通称BOS焼き)さらに強度があったとされています。
グリップはパラコード巻が基本
今でこそナイフのグリップにパラコードを巻くことは当たり前になりましたが、当時グリップにパラコードを巻くというのはとても斬新で、「めちゃくちゃかっこいい」とこれもまた評判になりました。
汗や水を吸うので滑りにくく、緊急時にはパラコードを解くことでサバイバルツールにもなる・・・
これはもう漢の浪漫をくすぐるしかないデザインコンセプトですよね。
実際のストライダーナイフはどうだったのか
ここまで聞くと完全無欠のストライダーナイフですが、所有するといろいろなことがわかってきました。
1.切れ味があまりよろしくない
これはロットが新しくなるにつれて改善されていきますが、初期の頃のストライダーはお世辞にも「切れる」ナイフではなく、私の所有している一番古い「BT」と呼ばれるモデルは刃の部分が製造ミスで左右不均等になっていて、切れ味が悪いだけでなく研ぎ直しができないという致命的な形になっています。
切れ味をわざと落とすことでハードな扱いにも耐えうる様にしている・・・のではなく本当に切れ味が悪いんです。それ以外も近いものがあります。
2.錆びる
もともと使用される鋼材は丈夫な分、錆びやすいものが使用されていて半日草の汁をつけっぱなしにしていたらもう錆びていた、というのはザラでした。
ナイフはメンテナンスを欠かさず行うものですが、流石にこのサビまわりの早さには閉口しました・・・
3.パラコードの巻き直しが難しい
印象的なパラコード巻きですが、いったんパラコードを巻き直すとなると一苦労です。また、パラコードが水を吸ったり汗を吸ったりしたりしてくれのはいいんですが、それが染み込んでグリップに到達すると大変です。
サビるし、サビを取るにはパラコードを一旦解体しないといけないしと防腐剤を塗布するのにも一苦労です。
4,重い
丈夫にするための形になっている分けっこう重く、これを持って山の中に入る気にはあまりなれません。
5.やっぱり専門の道具には勝てない
地面が掘れる、杭が打てるといわれていたストライダーナイフですがいざ使ってみるとどうしても「スコップの方が地面掘れるな」「杭を打つには金づちだよな」と言うことに気が付きます(当たり前ですが)。
やはり、専門の道具には勝てません。
でも、かっこいい
とまあこういうとちょっと、ですがナイフとしてものすごく魅力があるのも確かです。質実剛健なのも確かですし、丈夫なのも確かです。というかそもそも「ナイフなんだから地面掘らせなくていいし、杭も打たせなくていい」という原点に戻るとただの「めちゃくちゃかっこいいタクティカルナイフ」なんですよね。
編集後記
ストライダーナイフは残念ながら2017年に閉鎖され、今は創設者であるミック・ストライダー氏が個人のカスタムナイフメーカーとして一人で切り盛りされています(今は奥様?と二人でされている?)。
ストライダーナイフに関しては当時から価格や用途などを含め賛否両論ありましたが、それも落ち着いて、今は正当な評価をされている様に思います。
実際に手にしてみると、一般的なナイフにはない迫力がありますし「頼りになりそう」と思えるのも確かです。
ストライダーナイフのレギュラー(フィクスドと呼ばれる一本の鋼材から作られたもの)はなかなかアウトドアでも使いにくく、個人的にはあまりおすすめできません。
ですが、フォルーティングと呼ばれる折りたたみモデルに関しては切れ味や携帯性なども考えると「かなり」使えます。
当初はコンベックスグラインドがどうの、フラットグラインドがどうの、使用されている鋼材はベアリングなどの摩耗に強いものが・・・
と書くつもりでしたが、あまりにもマニアックになりすぎたため書くのを中止しました。
以前、20代前半のミリタリー好きの方と話をしていたときに「ストライダーナイフ」の話題が出ました。しかし彼からは「たまにストライダーナイフって聞くんですがいったいなんですか?なんでそんなに有名なんですか?」と聞かれて「ああ、そうかこの世代はもうストライダーのこと知らないんだな」としみじみと思いました。
そこで今回は当時一斉を風靡(ふうび)したストライダーナイフについて回顧録的にお話をしたいと思います。
ちなみに筆者今井はストライダーナイフのことが好き好きで未だに追いかけて集めているので、ストライダーナイフに対するツッコミも愛のあるツッコミだと思っていただけると嬉しいです。
2000年代に突如現れたナイフ界の異端児ストライダーナイフ
今でこそ当たり前になり、それなりに簡単に情報が入手できる近接戦闘の技術ですが、当時(日本では)ほとんどわかっておらず、まだインターネットもあまり普及していなかったので入手できる情報は専門の書籍のみでかなり限られた状態でした。
その頃からCQB(Close Quarters Battle)やCQC(Close Quarters Combat)という単語が一般にも浸透し始め、こぞっていろんな方が「このCQBやCQCってなんぞや」と模索していました。
そんな中でストライダーナイフは
・とにかく丈夫
・CQCを制するための最終兵器
・質実剛健、戦闘に特化したこれまでにないナイフ
的な形で紹介され、またたく間にミリタリー愛好家の方たちの中で広まっていったのです。当時は近接戦闘時に自分の銃を掴んできた相手に対しナイフを振りかざすことで制圧するのがイケている言わていたからです(今はどうかしりません) 。
ストライダーナイフの魅力は丈夫かつ一切の装飾がないこと
焼入れの意味のファイアマークが特徴的
ストライダーナイフの最大の特徴は「めちゃくちゃ頑丈に作られている」ということで、ナイフと言えば「丁寧に扱う」ことが基本なのに、ご法度とされる「叩く」という行為を前提にして作られている、と言われています。
包丁などは鋼材の厚みはだいたい2〜3mmぐらいなんですが、ストライダーは倍以上の6〜7mmです。分厚い上にナイフ自体に強度を持たせる形をしているのでとにかく頑丈にできています。
今でこそ違いますが、初期のロットはポール・ボスと呼ばれる焼入れの神様みたいな方が焼入れをしていたので(通称BOS焼き)さらに強度があったとされています。
グリップはパラコード巻が基本
メンテナンスだけ考えるとG10ハンドル(黒い方)のほうが楽です
今でこそナイフのグリップにパラコードを巻くことは当たり前になりましたが、当時グリップにパラコードを巻くというのはとても斬新で、「めちゃくちゃかっこいい」とこれもまた評判になりました。
汗や水を吸うので滑りにくく、緊急時にはパラコードを解くことでサバイバルツールにもなる・・・
これはもう漢の浪漫をくすぐるしかないデザインコンセプトですよね。
実際のストライダーナイフはどうだったのか
芯を抜いた下巻きのパラコードと芯有りの上巻きのパラコードの二種類で巻かれています
ここまで聞くと完全無欠のストライダーナイフですが、所有するといろいろなことがわかってきました。
1.切れ味があまりよろしくない
これはロットが新しくなるにつれて改善されていきますが、初期の頃のストライダーはお世辞にも「切れる」ナイフではなく、私の所有している一番古い「BT」と呼ばれるモデルは刃の部分が製造ミスで左右不均等になっていて、切れ味が悪いだけでなく研ぎ直しができないという致命的な形になっています。
切れ味をわざと落とすことでハードな扱いにも耐えうる様にしている・・・のではなく本当に切れ味が悪いんです。それ以外も近いものがあります。
2.錆びる
もともと使用される鋼材は丈夫な分、錆びやすいものが使用されていて半日草の汁をつけっぱなしにしていたらもう錆びていた、というのはザラでした。
ナイフはメンテナンスを欠かさず行うものですが、流石にこのサビまわりの早さには閉口しました・・・
3.パラコードの巻き直しが難しい
印象的なパラコード巻きですが、いったんパラコードを巻き直すとなると一苦労です。また、パラコードが水を吸ったり汗を吸ったりしたりしてくれのはいいんですが、それが染み込んでグリップに到達すると大変です。
サビるし、サビを取るにはパラコードを一旦解体しないといけないしと防腐剤を塗布するのにも一苦労です。
4,重い
丈夫にするための形になっている分けっこう重く、これを持って山の中に入る気にはあまりなれません。
5.やっぱり専門の道具には勝てない
地面が掘れる、杭が打てるといわれていたストライダーナイフですがいざ使ってみるとどうしても「スコップの方が地面掘れるな」「杭を打つには金づちだよな」と言うことに気が付きます(当たり前ですが)。
やはり、専門の道具には勝てません。
でも、かっこいい
とまあこういうとちょっと、ですがナイフとしてものすごく魅力があるのも確かです。質実剛健なのも確かですし、丈夫なのも確かです。というかそもそも「ナイフなんだから地面掘らせなくていいし、杭も打たせなくていい」という原点に戻るとただの「めちゃくちゃかっこいいタクティカルナイフ」なんですよね。
編集後記
ストライダーナイフは残念ながら2017年に閉鎖され、今は創設者であるミック・ストライダー氏が個人のカスタムナイフメーカーとして一人で切り盛りされています(今は奥様?と二人でされている?)。
ストライダーナイフに関しては当時から価格や用途などを含め賛否両論ありましたが、それも落ち着いて、今は正当な評価をされている様に思います。
実際に手にしてみると、一般的なナイフにはない迫力がありますし「頼りになりそう」と思えるのも確かです。
ストライダーナイフのレギュラー(フィクスドと呼ばれる一本の鋼材から作られたもの)はなかなかアウトドアでも使いにくく、個人的にはあまりおすすめできません。
ですが、フォルーティングと呼ばれる折りたたみモデルに関しては切れ味や携帯性なども考えると「かなり」使えます。
当初はコンベックスグラインドがどうの、フラットグラインドがどうの、使用されている鋼材はベアリングなどの摩耗に強いものが・・・
と書くつもりでしたが、あまりにもマニアックになりすぎたため書くのを中止しました。
【この記事を書いた人】
今井浩介(いまい こうすけ)
1984年生まれ
・徳島大学大学院 先端技術科学教育部卒業
紫外線を使った医療用殺菌機器の光学研究開発と3Dの設計開発に携わる。
現在は独立してドローンを使った映像撮影・調査を行うスカイアイジャパン代表
その他経歴など
・田村装備開発株式会社 ミリブロNews、ドローン担当
・グリーンフロント研究所株式会社 UAV新技術開発室長
・株式会社アイディアミックス 英会話・英文法 関連書籍の執筆アシスタント
・DJI スペシャリスト
今井浩介(いまい こうすけ)
1984年生まれ
・徳島大学大学院 先端技術科学教育部卒業
紫外線を使った医療用殺菌機器の光学研究開発と3Dの設計開発に携わる。
現在は独立してドローンを使った映像撮影・調査を行うスカイアイジャパン代表
その他経歴など
・田村装備開発株式会社 ミリブロNews、ドローン担当
・グリーンフロント研究所株式会社 UAV新技術開発室長
・株式会社アイディアミックス 英会話・英文法 関連書籍の執筆アシスタント
・DJI スペシャリスト
元自衛官・警察官・PSCのYoutubeチャンネル『ガチタマTV』
提供:田村装備開発株式会社
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ストライダーナイフ自体は高く評価してますけどね。パラコードラップは当時の業界に墓石くらいありそうなでっかい一石をぶち込んだし。G-10のパネルを取りはずしてパラコードに巻き直したMANTRACKIIが今でも手元に残っております。グリップがひと回り大きくなって、そのぶん手だまりがよくなっていい感じです。
ナイフの性能としては色々つっこみもあるんだろうけどSEAL2001のデザインはやっぱり好きで、今も大事に持っています。
グリップのパラコードは結構ガチガチに巻かれていたけど、握り心地を考慮するとほんの少し緩めに巻いた方が良さそうだなと個人的には思います。
ことの是非はともあれ、人気なぞ無視してひたすら濃ゆい記事を掲載していただけると嬉しいです。
私は軽いと思ってますが。
ストライダーは初期の頃に使用目的がちゃんと明示されてるのに、キャンプ場のキャンプごっこで使うから不満が出るんですよ。
丈夫で折れないというのが目的だったはずで、私は実際に滑落しそうな斜面に突き刺して体重が掛かるような場面でも折れなかったので、謳い文句に嘘偽りはないですよ。
ストライダーが世に出て20年以上経ってるってのに、よくもまぁ。
執念深いもんだ。
まぁ良ぇ商売してはりましたな~
鉄板を10万円で売りつける物凄い錬金術を見せてもらったな