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アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か

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こんにちは、ミリブロNewsの今井です。
ウクライナとロシア、非常に気になる状況ですね。早く収束してくれればと願うばかりです。
さて、今回は少しばかりミリタリーUAV(Unmanned Aerial Vehicle、無人航空機)に踏み込んだニュースをご紹介します。


アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か
EDR ON-LINEより抜粋


タイトル通りで、アメリカがウクライナにAero Vironment社のスイッチブレード300(Switch Blade300)と呼ばれる折りたたみ式の携帯性の攻撃型UAVを供給する・・・
というニュースがありました。いわゆる「キラードローン」と呼ばれるものです・・・が、実際には使い捨て方式なのでドローンというよりは誘導ミサイルという方が正確ですし、アメリカ陸軍の規定でもスイッチブレード300はドローンではなく、ミサイルに分類されているとのことです。
私自身も調べてみましたが、理解するほどにこれはドローンではなくて誘導式迫撃砲だな・・・
と思いました。


スイッチブレード300の飛行性能

アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か
Aero Vironment社のHPより抜粋


 さて、このスイッチブレード300ですがどのような性能なんでしょうか?
スイッチブレード300を開発したAeroVironment社によると、

・全長:610mm
・重量:2.7kg(キャリングケース含む)
・最大飛行距離:10km
・最大飛行時間:10-15分
・速度:クルーズ時 101km/h 加速時160km/h



アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か
AeroVironment社のインスタグラムより抜粋


となっています。構造的には迫撃砲に近く、筒のようなものに入れておいて筒から射出されると折りたたまれていた羽がバネの反動で展開し(スイッチブレード)、飛行する・・・
というものです。たしかに画像を見る限りVの字になった羽が2組ついていて、折りたたまれる様になっていることがわかります。




スイッチブレード300の攻撃力

アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か



 M203グレネードランチャーなどに使用される40mmグレネード相当の弾頭が装備されているとのことで、このことから危害半径は15m程度と予測できます。
ただし、スイッチブレード300はもともと「広範囲を攻撃する」というより「ピンポイントで攻撃する」という使用を念頭においているため爆風や破片を広範囲に散らすのではなく、一点集中型になっているのでもう少し危険範囲は狭い・・・のかもしれません。
また、攻撃時には空中で爆破させるのか、衝突時に爆破させるのか4秒ほどオペレーターに判断する猶予が与えられているとのこと。


スイッチブレード300の運用方法

アメリカがウクライナに10Km先のターゲットを狙えるUAVを供給か
偵察用UAVにより目標を識別し、攻撃対象を判断する


 リュックサックに入れて携帯可能で(一般的なリュックサックに3機収納可能)、「現地で展開し安全圏から攻撃する」という想定のもとに使用される「操縦できる迫撃砲」という感じでの運用が想定されています。
形からも想像できますが、空中静止(ホバリング)ができず我々が想像する「ドローンよる偵察」ということには不向きで、完全に一方通行型です。

また、同社の偵察型UAS(Unmanned Aircraft System)であるWasp、Raven、Pumaとリンクさせ、攻撃目標を特定し、その後そこに向けてスイッチブレード300を射出する・・・
という形で運用されるとされています。


なぜウクライナでスイッチブレード300なのか

 戦場となっているウクライナは敵味方が近距離で入り乱れる様な狭い市街地戦であり部隊が広がりにくい、周りに建物がある、殆どが民間施設・民間人という状況が大半だと聞いています。
こういった場所に対して「ピンポイント」な攻撃が武器は大きなメリットです。
また、ウクライナはロシア軍に対しゲリラ的な攻撃で足止めなどの効果を挙げているということからも、この様な戦術に特化したスイッチブレード300は有効なのでしょう。


編集後記

 最初、スイッチブレード300がウクライナに供給されると聞いて「あれって確か使い捨ての個人用だったよなぁ・・・運用できるのかな・・・」と思っていました。
というのも、ドローンを扱う私としては「飛行時間が15分、戻ってこれない」というのは「相当扱いが難しい」と判断するからです。
もともとドローンなどの小型航空機に搭載されるカメラは広範囲を見るために「広角」に設定されています。そのため、個人の識別がものすごく難しいんですね。つまり詳細がわからない。
とりわけ、スイッチブレード300の様な機体が空中で静止できないものの場合、オペレーターに届く映像は流れ続けるため(機体が止まらないので映像も止まらない)さらに詳細の識別が難しくなります。おまけに滞空時間が15分程度というものならなおさらです。
友軍への誤爆もあり得るけどそのあたりどうなんだろう、と思って調べ直してみたところきちんと専用の偵察機があって、その元で運用されるとわかりやっぱりよく考えられてるなぁと思いました。
ただ、ここから読み取れることは明らかに「専門性が高い」ということです。現地で好きなところで展開して攻撃できる手軽な個人兵器という様なイメージがありましたが、実際はかなり「高度な」運用が必要となってきます。
ということは、アメリカはスイッチブレード300を送るだけでなく、使用方法を教える専門家も送っているはずです。ただ単にライフルや弾薬を送って後は好きにしてねとはちょっと違います。
なので、ロシアはアメリカは今戦争に介入しない・・・という風には判断しないかもな・・・とも思いました。


参考文献 URL
https://www.edrmagazine.eu/switchblade-300-the-combat-proven-munition
https://theaviationist.com/2022/03/17/russia-loitering-munitions-in-ukraine/



【この記事を書いた人】

今井浩介(いまい こうすけ)
1984年生まれ

・徳島大学大学院 先端技術科学教育部卒業
紫外線を使った医療用殺菌機器の光学研究開発と3Dの設計開発に携わる。
現在は独立してドローンを使った映像撮影・調査を行うスカイアイジャパン代表

その他経歴など
・田村装備開発株式会社 ミリブロNews、ドローン担当
・グリーンフロント研究所株式会社 UAV新技術開発室長
・株式会社アイディアミックス 英会話・英文法 関連書籍の執筆アシスタント
・DJI スペシャリスト



元自衛官・警察官・PSCのYoutubeチャンネル『ガチタマTV』

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