ドイツ警察のSIG MCX用弾薬に有害な「鉛化合物ガス」が基準を超えて発生。射撃訓練を見合わせの事態に

ミリタリーブログサポートチーム

2018年10月22日 13:50


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凶悪テロ事案への対策のために手配した新装備の運用が進むドイツ警察。しかしながらその出だしは前途多難な幕開けとなっている。

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日刊紙「ベルリーナー・ツァイトゥング」による、警察労働組合(GdP: Gewerkschaft der Polizei)が「シグ・サワー(SIG Sauer)製MCXライフルで使用する弾薬に、基準値を超える「鉛複素環化合物」を含んだ有毒ガスが発生している」と発表し、射撃訓練を見合わす事態となっている。

Image from Ruag Swiss
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問題となっているのは、スイスのRuag Ammotec AG(ルアグ・アモテック社)製「5.56x45 Styx Action弾」。16ある連邦州のひとつ、バーデン=ヴュルテンベルク州の「環境保護研究所(LUBW: Landesanstalt für Umwelt Baden-Württemberg)」と地方警察がGdPに提出した資料によると、「密閉された室内で数発射撃した後の気体を計測したところ、基準となる0.1ミリグラム/立方センチメートルを超えており、10立方メートルの空間(=約2.15メートルの正六面体の中)で1日に1発しか射撃できない計算にあった」という。鉛化合物を吸い込むと、癌や記憶障害を引き起こすとされる。今のところ症状を訴える隊員は報告されていない。

これまでのところ、この弾薬を使った射撃訓練は「野外のみ」で、連邦軍と同じくクロスター・レーニンの射撃レンジでおこなわれているとのこと。地方警察特別出動コマンド(SEK: Spezialeinsatzkommandos)メンバーをはじめとした隊員がここで鍛錬に励んでおり、GdPは早急に改良弾薬の提供を要求している。

GdPによると、SEKはSIG MCXを3月に配備しており、「ボリュームディスカウント無しでのユニットプライスは2,299ユーロ(=約30万円)だった」「暴動鎮圧の専門部隊×3でそれぞれ100挺のMCXを受領している」と明かしている。

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ドイツ警察では、2016年12月19日にベルリン中心部のブライトシャイト広場(Breitscheidplatz)において大型トラックが突入した事件以降、凶悪・重武装のテロリストへの対策が急務にあるとの意識が高まり、アンドレアス・ゲイセル(Andreas Geisel)内務大臣の号令下、防弾ベストやヘルメット、新制式拳銃「SFP9」など、4,500万ユーロ(=約58億5,000万円)におよぶ新装備の調達を進めている。

Source: Neue Waffen-Posse Diesmal ist es die Munition
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