田村装備開発 大阪出張訓練「野戦」2日目(実地学習)レポート
田村装備開発 大阪出張訓練「野戦」1日目は野戦における戦略的視座が立案や実行にどのような影響を与えるかに関する講義であった。2日目はサバイバルゲームフィールド「TRENCH」を使用してエアソフトガンを用いて実際に撃ち合い、実際の戦技、テクニックに関する解説が行われた。
田村装備開発公式ブログ
http://tamura.militaryblog.jp/
1vs1での強さがまずベースとして必要であるという長田教官。相手の1に対して、1vs1の状況をたくさん作り出し、敵の対応能力を飽和させるには、1vs1でのプレッシャーの強さが必要になる。
会場となった「TRENCH」。コンクリートのバリケードが並ぶエリアや、ブッシュが生い茂ったエリアなど、様々な環境がコンパクトに収められたフィールドで今回の訓練にはうってつけであった。
敵の銃が他の味方に向いている内に動く、逆に敵の銃口をこちらに引きつけて味方へのプレッシャーを減じる。これを各人が行うことで1人当たりに銃口が向いている時間は減り、相対的に敵戦力を減じることができる。
まず隠蔽・掩蔽を確実に行って敵の位置を見出し、確実な射撃、素早い運動によってプレッシャーをかけること。前半はこの基礎の反復が行われた。
■隠蔽・掩蔽物の使い方と「ガンロック」への対処
お互いの位置が既に識別され、高台を守る防御側の銃が向いている「ガンロック」の状態から、攻撃側は運動と射撃で防御側を制圧する。
反応速度から逆算すれば、バリケードから顔を出す曝露時間は短くしたい。このため小さく目だけをだす「クイックピーク」が多用される。同じところから顔を出すと待ち伏せされるため、左右・上と銃を振らせる必要がある。
撃ち下ろしではバリケードの高さも掩蔽範囲に影響する。低く入ることで事実上、掩蔽物を大きく使うことができる。この画像ではバリケードからかなり離れていて効果がないように見えるが、上から見ると死角に入っている。
これを利用すれば、バリケードの際まで走り込まなくとも敵の死角に入ることができる。低く動けば短い距離で次のバリケードを使えるため、曝露時間を短くできる。
また、出る時はこのように距離を取ることで助走をつけ、フルスピードで出ていくことも被弾を防ぐテクニックである。
バリケードに対する立ち位置によって、相手からの見え方がどのように変わるかをお互いにチェックする。帽子のツバや体の横に張り出したポーチ類、ヘルメットのNVGマウントなどが外に出ないように注意する必要がある。
0.3秒の間に曝露を納めれば、敵は見えていても撃つことができない。また1人に注意をひけば他への注意が疎かになる。細かく敵の時間を奪い続け、対応能力を削ぎつつ接近すれば、数的優勢を持ったのと同じ状態になる。
■敵配置が不明な状態での各個戦闘
最後に、敵味方とも配置が分からない、より実戦的な形式での訓練が行われた。
敵の位置が分からなくなるだけで味方の行動は大きく制限される。こうした状況では積極的に動けば察知されるが、逆に動かなければ状況を変えることができない。防御側には大きな地の利があり、これを覆すには相当な数的優勢をもつか、あるいはサーマルやUAVといった監視機材を用いる必要がある。
逆に言えば、装備を充実させることで有利・不利は簡単にひっくり返るということでもある。軍関係者が最新の機材の流出にナーバスになるのは、高性能装備がいかに戦闘を有利にするかということの裏返しでもある。
スマホから航空写真を見て地形を把握する参加者。見ず知らずのフィールドでも、こうした機材があれば格差を縮めることができる。
連携を得るには味方どうしが近接しているのがやりやすい一方で、固まっていると察知されやすく、敵の意識を分散させにくいというデメリットもある。かといって声でのコミュニケーションは自分や味方の位置を露わにしてしまう。
結局のところ予め打ち合わせた連携というのは、この距離・戦闘の速度感では難しく、個々人が戦闘の推移を理解し、何が必要かを自分で考えて動くことになる。そうした個々の動きの集まりが敵からは連携に見えるのだという。
他で撃ち合っている間に匍匐で位置を変える参加者。うまくすれば敵からは各個の勝手な動きなのか打ち合わせられた連携なのかは見分けがつかない。各個の感性をフルに活用する必要がある。
勝手に動き回りつつ、味方の動きは把握しておくべきである。こうして一列になってしまうと、正面の敵に対して複数の銃口を向けることができない。
終了後はAAR(After Action Report……行動報告)が行われ、各人から何がどう見えたか、どう考えたかが共有された。
2日目は具体的な射撃戦のテクニックが紹介されたが、実際の野戦では味方の損耗とそれに対する補給、戦闘全体にかかるコストといった経済面での要素も加味する必要がある。例えばある地域を制圧しても、弾丸を使い切っていては守ることができなくなる。
こうしたすべてを考慮しつつ戦うところに野戦の難しさがある。前稿においてレギュレーションの理解の必要性が説明されたが、普段からそうした視座を持つことでやるべきこと、やってよいことを見出す思考の形式が身につく。そのような戦闘に関する感性を磨くことが、もっとも重要なことである。
Photo & Text: Chaka (@dna_chaka)
会場となった「TRENCH」。コンクリートのバリケードが並ぶエリアや、ブッシュが生い茂ったエリアなど、様々な環境がコンパクトに収められたフィールドで今回の訓練にはうってつけであった。
敵の銃が他の味方に向いている内に動く、逆に敵の銃口をこちらに引きつけて味方へのプレッシャーを減じる。これを各人が行うことで1人当たりに銃口が向いている時間は減り、相対的に敵戦力を減じることができる。
まず隠蔽・掩蔽を確実に行って敵の位置を見出し、確実な射撃、素早い運動によってプレッシャーをかけること。前半はこの基礎の反復が行われた。
■隠蔽・掩蔽物の使い方と「ガンロック」への対処
お互いの位置が既に識別され、高台を守る防御側の銃が向いている「ガンロック」の状態から、攻撃側は運動と射撃で防御側を制圧する。
反応速度から逆算すれば、バリケードから顔を出す曝露時間は短くしたい。このため小さく目だけをだす「クイックピーク」が多用される。同じところから顔を出すと待ち伏せされるため、左右・上と銃を振らせる必要がある。
撃ち下ろしではバリケードの高さも掩蔽範囲に影響する。低く入ることで事実上、掩蔽物を大きく使うことができる。この画像ではバリケードからかなり離れていて効果がないように見えるが、上から見ると死角に入っている。
これを利用すれば、バリケードの際まで走り込まなくとも敵の死角に入ることができる。低く動けば短い距離で次のバリケードを使えるため、曝露時間を短くできる。
また、出る時はこのように距離を取ることで助走をつけ、フルスピードで出ていくことも被弾を防ぐテクニックである。
バリケードに対する立ち位置によって、相手からの見え方がどのように変わるかをお互いにチェックする。帽子のツバや体の横に張り出したポーチ類、ヘルメットのNVGマウントなどが外に出ないように注意する必要がある。
0.3秒の間に曝露を納めれば、敵は見えていても撃つことができない。また1人に注意をひけば他への注意が疎かになる。細かく敵の時間を奪い続け、対応能力を削ぎつつ接近すれば、数的優勢を持ったのと同じ状態になる。
■敵配置が不明な状態での各個戦闘
最後に、敵味方とも配置が分からない、より実戦的な形式での訓練が行われた。
敵の位置が分からなくなるだけで味方の行動は大きく制限される。こうした状況では積極的に動けば察知されるが、逆に動かなければ状況を変えることができない。防御側には大きな地の利があり、これを覆すには相当な数的優勢をもつか、あるいはサーマルやUAVといった監視機材を用いる必要がある。
逆に言えば、装備を充実させることで有利・不利は簡単にひっくり返るということでもある。軍関係者が最新の機材の流出にナーバスになるのは、高性能装備がいかに戦闘を有利にするかということの裏返しでもある。
スマホから航空写真を見て地形を把握する参加者。見ず知らずのフィールドでも、こうした機材があれば格差を縮めることができる。
連携を得るには味方どうしが近接しているのがやりやすい一方で、固まっていると察知されやすく、敵の意識を分散させにくいというデメリットもある。かといって声でのコミュニケーションは自分や味方の位置を露わにしてしまう。
結局のところ予め打ち合わせた連携というのは、この距離・戦闘の速度感では難しく、個々人が戦闘の推移を理解し、何が必要かを自分で考えて動くことになる。そうした個々の動きの集まりが敵からは連携に見えるのだという。
他で撃ち合っている間に匍匐で位置を変える参加者。うまくすれば敵からは各個の勝手な動きなのか打ち合わせられた連携なのかは見分けがつかない。各個の感性をフルに活用する必要がある。
勝手に動き回りつつ、味方の動きは把握しておくべきである。こうして一列になってしまうと、正面の敵に対して複数の銃口を向けることができない。
終了後はAAR(After Action Report……行動報告)が行われ、各人から何がどう見えたか、どう考えたかが共有された。
2日目は具体的な射撃戦のテクニックが紹介されたが、実際の野戦では味方の損耗とそれに対する補給、戦闘全体にかかるコストといった経済面での要素も加味する必要がある。例えばある地域を制圧しても、弾丸を使い切っていては守ることができなくなる。
こうしたすべてを考慮しつつ戦うところに野戦の難しさがある。前稿においてレギュレーションの理解の必要性が説明されたが、普段からそうした視座を持つことでやるべきこと、やってよいことを見出す思考の形式が身につく。そのような戦闘に関する感性を磨くことが、もっとも重要なことである。
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Photo & Text: Chaka (@dna_chaka)
Chaka (@dna_chaka)
世界の様々な出来事を追いかけるニュースサイト「Daily News Agency」の編集長。
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