米軍、潜水艦の中で「菜園」作りを計画。生鮮野菜の提供で乗組員の士気向上を狙う
一度の出航で長期間に渡り陸地と隔離された生活を余儀なくされる潜水艦クルー。その間、長期保存の利かないレタスやトマトに代表されるフレッシュな野菜や果物を口にすることは珍しくなり、缶詰や冷凍、乾燥製品に頼らざるを得ない。攻撃型潜水艦を例とした場合、最低でも 90 日分の食料を積み込むとされ、出航後 1 週間もすれば保存の難しい生鮮野菜が品薄となる。
Photo: via U.S. Navy
Image is for illustration purposes only.
こうした状況を改善すべく、米軍では艦内の限られたスペースと照明を使って、フレッシュ野菜の自給自足を目指す「菜園」作りの実現に向けた計画を進めている。AP 通信によると、「米軍はボストン近郊に設置した 40 フィート (=約 12 メートル) の輸送用コンテナを使って、土壌栽培に代わっておこなう水耕栽培、養液耕の確立を模索している」という。
陸軍のナティック兵士研究開発技術センター (NSRDEC: Natick Soldier Research, Development and Engineering Center) がプロジェクトに係る資金 100,000 ドル (=約 1,000 万円) を拠出している。(昨夏に既報の通り、陸軍ナティックの研究所では、最前線の兵士に新鮮な食べ物を届けるべく、ナノテクノロジーを応用した食品包装技術の開発に着手している)
U.S. Army photo by Michael Stepien
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⇒米陸軍 Natick によるナノテクノロジーを応用した食品包装技術の開発
食事には身体を動かす為のエネルギー確保や生命維持活動における必要な栄養素を体内に取り込む役割だけでなく、食事に係る時間を楽しみ、味わうことで精神の安定化やリフレッシュ、士気向上を図る効果がある。その為に食事は、艦内の閉鎖された空間の中で長期に渡る任務をこなす乗組員にとって、陸地以上に重要な役割を持つ。
ロードアイランド州ニューポートの海軍対潜戦センター (NUWC:Naval Undersea Warfare Center) で生まれたこのアイデアについては、現在その試験が第二フェーズにあるという。既に 83 種類の野菜や果物が試されており、潜水艦の艦内という特異な状況下において、その栽培に適した品種の見極めをおこなっている。
これまでにおこなわれた研究の中で、葉野菜やネギ、根野菜は実現に向けて良好な結果を残している一方で、イチゴやダイオウ、トマトなどは生育自体に問題が無いものの、可食部を確保するには至らなかったようだ。また蔓科の植物や光合成の為に大きな葉を持つ植物については、スペースや照明の都合上、栽培自体が難しい結果がみえている。
研究を担当する技術者は、9 月にも海軍にその成果について判断を仰ぐ為のレポートを提出予定としている。
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